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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
559/688

13

「樹のせいで時間を食ってしまったから、早速出発しましょう。」

「百合子君はそう言うけれど、こういうのが遺跡探索の醍醐味なんよ。いや、樹君は小生を楽しませてくれるんよ。」

「今はクソエロじじぃの意見なんて聞いていないわ。」

「酷い。でも、ゾクゾクするんよ。」


 百合子さんの蔑むような眼差しを受けて、身悶えるロジャー教授。


「・・・行きましょう。」

「了解。」

「ちょっと、護衛が小生を置いていこうとするのはどうかと思うんよ。」


 さっさと歩き出すと、ロジャー教授も焦って歩き出した。


(次はこんなことにならないよう、慎重にね。)

(足元の仕掛けなんてどこにあるか分からないんだかから、回避不可能だと思うけど?)

(だったら、魔導飛行で浮きながら歩くとか?)

(それだと、魔力を使いすぎて敵が現れた時に魔法を使えなくなってしまう。)

(それもそうね。)


 しばらく歩いた後、


「分かれ道からずっとだけれど、この通路、下に向かて傾斜してない?」


 百合子さんがふと呟いた。


「そうみたいですね。私もずっと気になってました。」

「通路も直線ではなくてわずかに湾曲しているから、螺旋状になって下に降りていくようになっているのだと思うんよ。」

「つまり、このエリドゥ遺跡には明確な階層があるわけでない、ということですか?」

「そこまでは分からないけれど、今のところ部屋のような場所が見当たらないから、その可能性はあるんよ。」


 ロジャー教授の言うとおり、エリドゥ遺跡に入ってから僕たちは通路以外を歩いていない。


「通路だけというのは遺跡っぽくないですね。迷路のように部屋と部屋を繋ぐ通路があって、下に降りる階段を探すのだと思っていましたから。」

「樹様はゲームのし過ぎではないでしょうか?」

「そうね。でも、こうやって通路を歩くだけというのも単調だわ。樹、そこら辺の壁を叩いてみて。隠し扉なんかがあって宝箱のある部屋に入れるかもしれないわよ。」

「ちょっと、百合子さんもゲームのし過ぎではないですか?現実世界に宝箱なんてあるわけないじゃないですか。」

「そうなんよ。遺跡に隠し部屋と来たら、棺桶が定番なんよ。」


「そして、その棺桶に一緒に入れられた埋蔵品がお宝ってことですね。」

「そんな物があれば既に盗掘されていてもおかしくないと思います、って、話が逸れていませんか?」

「いいのよ。埋蔵品が古代の遺物なんかだったりしたら、大発見なのだし。」

「良くありません!そんなことより、隠し扉の先に大量の魔物がいたりなんかしたら大変なことになりますよ。」

「それはゲームで言うところの魔物部屋と呼ばれるやつなんよね。それはそれで、ワクワクするんよ。」


 実際に魔物がいるのだから、現実世界に魔物部屋なんてない、とも言い切れない。


「好き好んで魔物との戦闘なんかしたくないので、このまま通路を進むことにします。」

「その方が良いと思います。そのうち、嫌でも魔物との戦闘があるでしょうから。」

「和香さんの言うとおりね。少しずつ壁とか床に戦闘痕が見られるようになってきているから、以前にここで戦闘が行われたのは確かみたいよ。」

「そのようですね。先程から通路わきに瓦礫とともに骨や装備品が散見されますし、これは前に遺跡探索を行った人たちの物なのかもしれません。」

「それに混じって外骨格の欠片らしき物があるらから、ここにいる魔物は虫型なのかもしれないんよ。」


「虫の魔物とか勘弁してほしいです。」

「そうですね。魔物というからには巨大なのでしょうし、私も御免被りたいところです。」

「虫の細部なんか詳細に見たいと思わないのに、巨大さ故にそれを強制的に見せられるのだから、たまったものじゃないわね。」

「私も虫は嫌いですが、向かって来たら戦闘しないといけないのが辛いところです。」

「小生は虫は大丈夫なんよ。」


 魔物の存在を認識して少し歩く速度を落とし、警戒度を上げながら進んでいると、


(樹君、この先に魔物がいるようですな。)

(了解。)


 グレンさんが魔物の気配を察知したので、立ち止まって迎撃態勢をとる。


「樹様、どうされましたか?」

「和香、魔物が現れたのよ。」

「そんなことは――――」


 ガサガサガサガサ


 僕たちに気が付いたのであろう。通路の先から何物かがこちらに近づいてくる音がした。


「この音からして、向かってくるのは複数のようですね。」

「全員戦闘態勢!私は樹と一緒に魔物の相手をするから、和香は運搬機の防御機構を起動してロジャー教授の保護を。」

「承知しました。」

「百合子さんは後詰めをお願いします。」

「分かったわ、美姫大尉殿。」


 美姫の指示に全員が動き出し、美姫も僕の隣で迎撃態勢をとる。


(魔物が姿を見せる前に、遠距離から狙った方が良いでしょうか?)

(魔導弾が通用するかどうか確かめる意味でも、それが良いじゃろう。)

(分かりました。樹、同時に撃つよ。)

(了解。)


 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!


 美姫と僕が魔導弾を撃つと、着弾した魔導弾の光で照らされて暗闇から姿を現したのは巨大な蠍の魔物だった。

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