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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
546/688

01

 それは百合子さんから届いたこの1通の電文から始まった。


『遺跡探索に同行してもらいたいから、夏休みの予定を開けておいて。』


 電文を見て直ぐ美姫に思考伝達する。


(美姫のところにも百合子さんから電文が届いた?)

(うん。電文で一方的に用件だけ告げてくるなんて、何様のつもりなのかな?)


 美姫も百合子さんからの電文を見て軽く憤慨しているようだ。


(同感。大学生になって初めての夏休みだから遊びまくろうと思っていたのに。)

(・・・樹、私たちは夏休みに魔法軍内の合同演習に参加しないといけないことを忘れてない?)

(ぐっ、そうだった。どうせ大和大佐からしごかれるだけだし、あまりにも気が乗らなくて記憶から滅却してた。。。)

(その気持ちは分かるけれど、忘れても現実は変わらないよ。)

(それでも合同演習直前までは憂鬱な気分から逃れられる。)

(ふふふ。そうすることで樹がストレスを抱えないで済むのなら、いい方法なのかもね。)


(でも、ロジャー教授が行う遺跡探索に同行だなんて、絶対に百合子さんは僕たちを面倒ごとに巻き込もうとしているとしか思えない。)

(そうよね。探索する遺跡がどことも書いてないし、私たちが同行しないといけない理由も分からないし。)

(それに、遺跡って探索するものだっけ?普通は発掘じゃない?)

(私もそう思った。そこからして怪しい雰囲気がプンプンしているよね。)

(同意。魔法の腕輪とか補助具が必要になる危険が潜んでいそうな気がする。)

(そうね。持ち出しは事後報告でいいと言われているけれど、事前に雄平大将にはこのことを報告しておくべきよね。)


 と、美姫が言ったところで情報端末が電文の着信を告げる。


(雄平大将からの出頭要請だ。)

(樹のところにも届いたのね。この時旬だと百合子さんの件でしょう。)

(流石に百合子さんも、今回ばかりは魔法軍本部に根回しはしていたか。)

(遺跡探索の詳細を雄平大将から聞けるかもしれないから、早速行きましょう。)

(了解。)


  ◆ ◇ ◆ ◇


 魔法軍本部に着いて司令長官室に入ると、


「今日来てもらったのは、ロジャー教授の遺跡探索に君たちを派遣してほしい、との要請をヒューストン魔法軍から受けたからだ。」


 着席するなり、雄平大将は早速本題を切り出してきた。


「やはりその件でしたか。小官たちのところにも、百合子少尉から電文が届きました。」

「百合子少尉から電文はどのような内容だったのだ?」

「『ロジャー教授が行う遺跡探索に同行してもらいたいから、夏休みの予定を開けておいて。』とだけでした。」

「そうか。百合子少尉は君たちに何も説明していないのだな。せめて危険性だけでも伝えておくべきだろうに。」


 雄平大将は呆れたようにそう零した。


「どういうことでしょうか?」

「ロジャー教授が探索しようとしている古代遺跡が、エリドゥ遺跡と呼ばれる曰くつきの遺跡だからだ。」


(百合子さんのことだから、そんなところだろうと思った。)

(同感。雄平大将の言葉からは危ない遺跡だとしか聞こえないし。)


「エリドゥ遺跡の曰く、とはどのようなものなのでしょうか?」

「第1次悪魔大戦後に悪魔や魔人の掃討を行っていた部隊が発見した中東にある古代遺跡で、悪魔がその中に入っていったという情報もあり、発見後に何度か上級魔法使いを含む調査団が送られたのだが、誰1人として帰ってくる者がいなかったのだ。」


(それってマジでヤバい遺跡なんじゃない!?)

(そうね。もう、遺跡に悪魔がいることが決定的だもの。)


 雄平大将の説明に僕たちは顔を見合わせた。


「・・・相当危険な遺跡なのですね。」

「あぁ。それにも関わらず、遺跡探索を行いたい、とロジャー教授は以前からヒューストン魔法軍に上級魔法使いの同行を要請をしていたようなのだが、高い危険性から現在では封印されている遺跡のため、認められていなかったのだ。」

「ヒューストン魔法軍も貴重な上級魔法使いをむざむざ失いたくないでしょうから、妥当な判断だと思います。」

「ところが今回、東京魔法軍から美姫大尉と樹中尉を派遣してもらうから遺跡探索の許可だけはほしい、とロジャー教授がヒューストン魔法軍に申し出たそうだ。それならば、と、ヒューストン魔法軍から我々に2人の派遣を要請があり、それと同時に百合子少尉からも同じ内容の連絡があった、というわけだ。」


「それでは、魔法軍上層部は小官たちの派遣を了承されたのでしょうか?」

「いや、今回に限っては2人に拒否権を与えることにした。身の危険を感じて行きたくない、というのであれば、この話を断ってくれても構わない。」


(遺跡探索は私たちに拒否権が与えられるほど危うい任務、ってことよね?)

(肯定。)

(どうする?受ける?)

(拒否の1択――――)

(行くのじゃ。)


 僕の言葉を上書きするようにエレナ様が告げた。


(悪魔がいるのですよ。地雷原と分かっていて突入するようなものじゃないですか。)

(地雷があったとしてもワレが処理してやるから心配するでないのじゃ。)

(そうは言っても――――)

(古代遺跡の探索とは興味深い、と樹は思わんのかのう?)

(全然。全く。これっぽちも。それに、昨年に惑星ヴァロで迷宮探索を行ったでしょう。エレナ様はそれで満足したのではないですか?)

(今度は地球の古代遺跡なのじゃから別腹じゃ。)


 エレナ様は行く気満々で、何を言っても無駄のようだ。


(・・・美姫の考えは?)

(そうね、、、エリドゥ遺跡の詳細が分からないから、ロジャー教授と百合子さんに探索内容を聞いてみてからにしてもいいんじゃない?もしかしたらロジャー教授には危険を回避する策があるのかもしれないし。)

(確かに。百合子さんも承知したのだから、その可能性が高そうだし。)


「・・・決断する前に、ロジャー教授と百合子少尉に相談してみても良いでしょうか?」

「いいだろう。2人の気持ちが固まったら連絡をくれ。」

「承知致しました。」

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