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竜の女王  作者: M.D
2170年春
54/688

03

 修礼が終わるとすぐに元繁が僕の席のところまできた。


「班を取り換えてくれないか?」

「ん?」

「いつも樹は美姫さんと一緒にいるだろう。修学旅行の班くらいは僕に譲ってくれてもいいと思うんだが。」

「何を言っているんだお前は?」


 僕よりも先に聡が反応した。


「関係のないやつは黙っていてくれ。僕は樹と話をしているんだ。」

「はぁ?だから、何故樹がお前と班を交換しないといけないんだ?」

「だってそうだろ。美姫さんと樹が一緒の班にいるよりも僕といた方がいいに決まってる。」

「言っている意味が分からん。」

「聡は意味が分からなくてもいい。樹は僕と班を取り換えてくれるよな?」

「拒否。」

「樹も聡と同じ意見か。ならば、模擬戦で決めよう。」


「元繁、ふざけているのか?樹は魔法使いになってまだ間がないんだぞ。模擬戦でお前に勝てるわけないじゃないか?」

「樹は高校から魔法科へ編入してきたんだから、魔法の才能はあるはずだが。」

「才能はあるのかもしれないが、樹がまだ魔法をうまく扱えないのは授業でお前も見ているだろう。」

「実は才能を隠し持っていて、授業では実力を発揮できないが、実戦では発揮できるタイプかもしれないぞ。」

「何を言っているんだお前は?」

「いいじゃないか。僕は先生に魔法の腕輪と第2鍛錬場を貸してもらえるうよう頼みに行くから、30分後に第2鍛錬場まで来てくれ。」

「ちょ、待てよ。」


 元繁は言いたいことだけを言って、教室を出て行った。


「はぁ、、、面倒なことになった。」

「最悪だな、あいつ。」

「いつもあんな調子だからみんな迷惑しているのは分かっていたけど、いざ自分が巻き込まれるとつらい。」

「あぁ、元繁は魔法の腕輪への適正も高いし、家は金持ちだからな。今までたいていのことは自分の思い通りになってきたから、あんな性格になったんだろうな。」


「魔法の腕輪への適正も高いんだったら、青山という名字の生徒が元繁だけっておかしくないか?」

「魔法使いの家系的な意味で?」

「肯定。」

「元繁のところはちょっと特殊なんだよ。祖父は普通の人なんだけど、魔法使い相手の商売で成功して、借金のかたに滝川から妾さんをもらったんだよ。それで、父親の代から魔法使いの仲間入りをしたんだが、相性が良かったのか元繁の父親は魔法の腕輪への適正が高かったそうだ。」

「そんなことってあるのか。」

「滅多にないことなんだが、それに気を良くした元繁の祖父は息子の結婚相手として同じ滝川から嫁を貰ったそうなんだ。」

「成程。」


「元繁の父親は商売の才能もあったらしくて、家業を継いで拡大させたから元繁も父親を尊敬していて、『自分も滝川から嫁を迎えたい』みたいなことを前から言っていたんだよ。」

「それで、美姫さんと仲良くしようとしているのか。」

「青山家は魔法使いの習わしを無視しているから、没落して貧乏になったところからしか嫁に来てくれないんだ。美姫さんは龍野教授も行方不明になって1人だろう?自分の家が金持ちだってことをアピールすればいけるんじゃないか、と思っているのかもしれん。」

「自分勝手な考え方だ。」

「そうだな。美姫さんの気持ちも考えろ、って話だ。」


「で、模擬戦の話は元繁が勝手に言っていただけだから、無視でいいかな?」

「無視はやめたほうがいい。あいつは先生たちの前では優等生で評価が高いから、あいつの言い分がとおってしまうかもしれなし。」

「やっぱり行かないといけないのか。気が重いなぁ。」

「乗り掛かった舟だから、俺もついて行ってやるよ。」

「ありがとう。」


 聡と教室を出ると、美姫さんが待っていた。


「私も一緒に行く。」

「美姫さんも?」

「元繁君はなんなの?樹君に突っかかって。私は修学旅行で元繁君と一緒の班になんてなりたくないのに。」


 美姫さんもお怒りのようだ。


「そうだな。美姫さんにも一緒に来てもらったほうがいいかもしれん。美姫さんから強く拒否してもらったら、元繁もあきられめるかもしれなし。」

「了解。僕も覚悟を決めていくことにするよ。」

「じゃぁ、行きましょう。」


(しかし、元繁とやらも面倒な奴じゃのう。)

(エレナ様が精神エネルギーが歪んでるって言ってたのは正解でしたね。性格が悪い。)

(それなんじゃが、奴の態度とワレが感じた精神エネルギーの歪みはなんか違う気がするのじゃ。)

(違うんですか?)

(どう違うと問われても分からんのじゃが、さっきの奴の態度程度の精神エネルギーの歪みじゃったらたいていの人間が持っておるから、ワレも特別な感じは受けんはずなのじゃ。)

(そうなんですか?)

(そのうちに分かるじゃろう。なんにせよ、奴のことはワレに任せておくのじゃ。美姫の楽しみを奪おうとする奴にはお仕置きをせんといかんからのう。)


(そうですよ。元繁君は私と仲良くなんてなりたいと思ってないくせに、修学旅行で一緒の班になりたいだなんて、何を考えているのかしら?)

(元繁が何を考えているのか、僕にも分からない。自分が金持ちだってことをアピールして、美姫さんの気を引きたいんじゃないか、って聡が言っていたけど、美姫さんの言っていることと矛盾するし。)

(そうなの?好きでもない相手と結婚しようだなんて、女性を魔法使いを子供を生む機械だとでも思っているのかしら。)

(もしそうなら、最低なやつだ。)


(でも、危なくなったら逃げてね。私は樹君に怪我してほしくないの。)

(了解。元繁と模擬戦をするつもりはないから大丈夫だとは思うけど、気を付けておく。)

(私も模擬戦はしないほうがいいと思う。でも、どうしようもなくなったら、エレナ様、樹君を助けてくれませんか?)

(うむ、任せておくのじゃ。)


(できれば話し合いで解決したいと思う。)

(元繁君の真意がわかれば、なんとかなるかもしれないのよね。)

(それが分からないから困ってる。)

(どうせ、しょうもないことじゃろう。)

(そうだといいんですが。)

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