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竜の女王  作者: M.D
2173年春
538/688

30

 次の日、僕が目を覚ましたのは昼過ぎだった。


「陽菜さん、樹が起きましたよ。」

「それでは、支度して出かけましょうか。」

「出かける、ってどこに?」


 起き抜けの急な展開に頭が回わらず、


「ペンドラゴン家の邸宅よ。」

「リリーナさんとジョージさんが2人に話したいことがあるから来てほしい、って美姫さんの情報端末に電文が届いていたのよ。」

「ダービルが復活したとか!?」


 すわ鎌倉か、と焦ったが、


「そうじゃないみたい。パブで昼食を食べてから行くから、樹も支度をして。」


 美姫の答えを聞いて安心した。


「疲れているでしょうから、急がなくてもいいわよ。」

「了解。」


 少し体が重かったので陽菜さんの言に甘え、のそのそと起きだしてゆっくりと支度をし、


「ここのパブは平日でもサンデーローストを提供していて、美味しいと有名なのよ。」

「これ何ですか?」

「それはヨークシャープディングと言われるシュークリームの皮のようなパイよ。ヨークシャーの貧しい家庭では、このヨークシャープディングを食べてお腹を膨らませてから貴重なお肉を食べていたらしいわ。」

「そうだったんですか。」

「ローストビーフもグレービーソースとの相性もばっちりで美味しいです。」


 パブで昼食を取った後、ペンドラゴン家の邸宅へ向かった。



「どうぞお入り下さい。」


 邸宅の門には昨日とは別の門番が立っていて、押し問答もなくすんなり通してくれ、


「美姫、樹、疲れているところを来てもらってすまないな。」


 侍女に案内されて昨日と同じ部屋に入るとリリーナさんとジョージさんが待っていた。


「いえ、疲れているのはリリーナさんとジョージさんも同じでしょう?」

「私たちは当事者だからね。疲れたなんて言ってられないわ。」

「それに、 美姫と樹は俺たちよりも長く戦っていたわけだから、俺たちより負荷がかかっているはずだ。」

「そうですね。確かに、最終戦はジョージさんが主に戦闘をされていましたが、実質3連戦のような感じでしたし。」

「同感。キュリアさんはともかく、ダービルは難敵でした。食屍鬼を使って身体を再生するなんて反則級です。」


(今思い返すと、ダービルによく勝てたと思うよね。)

(同意。封印から復活したばかりでも危なかったから、万全な状態だったらどうなっているか分からない。)


「キュリアを含むペンドラゴン家の精鋭部隊が突出したことについては本当に申し訳なく思うわ。」

「そうだな。俺たちの実力が及ばず精鋭部隊の忠誠を獲得できていなかったことは反省しないといけない。」

「しかし、ジョージさんはエクスカリバーの使い手となったのですから、これからは見方も変わるのではないでしょうか?」

「同意。ダービルを打負かして実力を示したのですから、もう無下には扱われないと思います。」

「ふふふ。そうなの。昨日はまだジョージのことを余所者のように扱っていたペンドラゴン家の魔法使いたちの様子が今日は全然違うのよ。おかしいったらありゃしないわ。」

「あぁ。いきなりの手のひら返しだったから、俺たちの方が困惑したくらいだ。」

「そのくらいエクスカリバーという”神話級”の魔法具はペンドラゴン家にとって重要な剣だからなのでしょうね。」

「あの一撃の威力を見たら、さもありなん、って感じだけど。」


「今日来てもらったのは、他でもないそのエクスカリバーについてなんだ。」


 本題を切り出したジョージさんに対して、


「そうなの。ジョージは『心の中でエクスカリバーと話が出来る』なんて言うのよ。私にはエクスカリバーの声が聞こえないのだけれど、美姫とだったら話ができるから話がしたい、とエクスカリバーが言っているらしくて、それを確かめるために来てもらったわけなのよ。」


 リリーナさんは呆れたような物言いだった。


(エクスカリバーの方から僕たちに話がしたいと言ってくるなんて意外。)

(そうね。エレナ様から聞こうかと思っていたことを本人?から話してくれるんだから。)

(それは、ワレがリーに言伝しておいたからじゃ。)

(リー?)

(それについては追々分かることじゃが、お主たちがエクスカリバーと呼ぶ妖精剣の中身じゃと考えておけばよいじゃろう。)

(分かりました。つまり、今、僕たちがここにいるのはエレナ様の差し金というわけですね?)

(そのとおりじゃ。樹だったらワレからの話じゃと怪しむかもしれんからのう。それなら本人から話を聞いた方が良いと考えたのじゃ。)

(否定。そんなに頻繁にはエレナ様のことを疑ってないと思います。)

(樹君は日頃の行いを振り返るべきですな。)

(そうよ。でも、そのおかげでエクスカリバーと直接話ができるようになったのだけれど。)


「エクスカリバーが美姫とは話ができる理由を聞いたら、”相性”ですって。それって、ジョージと美姫の方が相性が良い、と言っているようなものじゃない?」

「俺と美姫じゃなくて、エクスカリバーと美姫だ。」

「同じことよ。結局、エクスカリバーを介してジョージと美姫が繋がっているのだから。」

「・・・先程までも同じ話を散々繰り返したし、ここではよそう。」

「いいわよ。でも、エクスカリバーと美姫との話が終わったら、その内容を加味してもう一度話し合いましょう。本当に話ができたら、だけれど。」

「分かった。。。」


(リリーナさんはエクスカリバーと私が会話できるのが不満みたい。)

(除け者にされているように感じているから、とか?)

(そうかもね。でも、私の中にエレナ様がいるなって言えないから、相性、とかぼやかした言い方になったのが、余計に火に油を注ぐ形になってしまったのよ。)

(でも、『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』って言うし、放っておこう。)

(そうね。柊さんと真人さんはどうなの?2人は仲がいいから、夫婦喧嘩もほとんどしないんじゃない?)

(肯定。たまに喧嘩らしきものをしているけど、直ぐに父さんが引いて終わってる気がする。)

(ふふふ。私は少しの期間しか接していないけれど、真人さんは柊さんと喧嘩しても勝てないと思っているんでしょうね。)

(同意。父さんが母さんに勝てるわけない。)

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