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竜の女王  作者: M.D
2173年春
534/688

26

「ぐっ!」


 ダービルは左腕を押さえて苦悶の表情を浮かべ、


 グゴー!!


 後方から放たれた魔導砲によって、切り飛ばされた左腕が消滅する。


「貴様、よくも余の左腕を消し飛ばしたな。」

「再び繋ぎなおされても困りますから。」


 オリスさんは睨むダービルに対して冷静に答えた。


(あ奴も分かっておるのう。)

(美姫さんも魔導弾を撃とうとしているようでしたが、魔導砲の方が少しばかり早かったですな。)


(これでほぼこっちが勝ったようなものだ。)

(どうかな?ダービルはまだあきらめていないようよ。)


 美姫の指摘通り、ダービルは戦う姿勢を崩さないままジリジリと斜め後方に後ずさる。その先には、、、


「あっ!キュリアさん!」

「今更気がついても、もう遅い。」


 ダービルはキュリアさんに駆け寄り、左腕をもいで切り飛ばされた箇所に押し付けた。


(しまった。キュリアさんの存在を忘れていた。。。)

(あの時、ダービルがキュリアさんを蹴り飛ばしたのは、こうなった時のためだったのかもしれないですね。)

(じゃから、あ奴は一撃で倒さねばならんのじゃ。)

(そうですな。この部屋には他の場所にも食屍鬼が倒れていますから、ダービルにとっては予備の体があちこちに置いてあるのと同じ状況ですしな。)


 さらに、ダービルはキュリアさんの体に手を突き刺した後、引き抜くと、血が槍の形となってダービルの手に収まっていた。


(あれは血赤槍!)

(カリバーンはあれを知っているのか?)

(はい。前回にダービルを打負かしたときも、ずいぶんあの血赤槍に苦労させられました。)


 カリバーンとジョージさんの会話が聞こえる。


(グレン、あの槍は面白い構成をしておると思わんかのう?)

(そうですな。槍を構成している血液に微量の魔石が含まれているようですから、魔力をとおすことによって何らかの効果を発揮させるようになっているのでしょうな。)

(そのとおりじゃ。槍の形を保っておるのもその効果の一つじゃろうのう。)

(しかし、血液中に魔石が含まれている理由が分かりませんな。)

(普通の人間との違いは吸血鬼ウィルスがおるかどうかじゃから、吸血鬼ウィルスは血液中に魔石の結晶を作り出すのかもしれんのう。)

(もしそうだとすると大発見ですな。)

(こうなったら、このの戦いの後にあ奴の血液を持ち帰って研究せねばならんじゃろう。面白くなってきたのじゃ。)


 エレナ様とグレンさんが怪しげな話をしているが、聞かなかったことにした。


「よもや、血赤槍を作らされるとは思ってもみなかったぞ。これは魔力の消費が激しいから、あまり使いたくはなかったのだがな。それに、余は剣よりも槍の方が得意なのだ。」

「人の血を使って槍を作るなど、万死に値する。」

「血赤槍を見た者は皆そのように憤っていたが、死んでいったのは余ではなくその者たちの方だったぞ。」


 ダービルはにんまりとしながら皮肉ったが、


「我が祖先に倒された者が良く言う。」

「貴様、余を侮辱するか!」


 ジョージさんの返しに怒りの表情を浮かべる。


「その剣を手に入れて余と対等に戦えるようになったと思い上がったようだが、それは間違いだ!」


 そう言ってダービルが血赤槍を投擲すると、血赤槍が無数の槍に分かれてジョージさんに襲い掛かった。


(何をするのかと思ったら、槍を分裂させただけか。このくらい打ち払うのは簡単だ。)

(それはなりません。)

(カリバーン、何故だ?)

(あの槍を打ち払うと、更に分裂して襲い掛かってくるのです。)

(小癪な。しかし、それだと防ぐ方法がなくないか?)

(ですから、光の力で打ち”祓う”しかありません。)

(そういうことか。分かった。)


 ジュワッ!ジュワッ!ジュワッ!ジュワッ!


 ジョージさんが輝きを増したカリバーンを振るって無数に分かれた血赤槍を打ち”祓う”と、血煙となって消えていく。


(おぉ!凄い!)

(魔導力のエネルギーでもって血赤槍を蒸発・浄化しているのでしょうな。)


 それを見てダービルは不満そうだ。


「余の血赤槍について知っていたとしても、エクスカリバー以外では対処は不可能なはずだ。本当にその剣はエクスカリバーではないのか?」

「くどい。」

「・・・ならば、それをエクスカリバーに準ずる剣だとして余も対応することにしよう。」


 ダービルは再び血赤槍を作り出して、今度はジョージさんに突進していった。


(これも避けてはなりません。)

(何故だ?)

(血赤槍が折れ曲がって軌道を変えたり、矛先が無数の棘となって襲い掛かってくるのです。)

(どうすればいい?先程のように光の力で打ち祓えば良いのか?)

(いえ、軌道を変えたり棘となる前に矛先を逸らすか、光の力で防ぐ他ありません。)

(分かった。)


 キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!


 ダービルが繰り出した血赤槍の矛先が棘となる前にジョージさんは打ち合いで矛先を逸らすが、


「くそっ!」


 逸らしきれなかった打撃を避けようとしたジョージさんに向かって血赤槍が折れ曲がり、


 ニヤリ


 ダービルは不敵な笑みを浮かべたが、


 ジュワッ!


 ジョージさんは辛うじてカリバーンを引き寄せて棘から体を守った。

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