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竜の女王  作者: M.D
2173年春
532/688

24

(グレン、先程からオリスとやらは何もしていないことに気が付いたかのう。)

(はい。後方の安全なところでただ戦況を見守っているだけのようにも見えますが、左目が青くなっているのを鑑みると、未来視の魔眼を使って何やらしているようですな。)

(そうじゃ。ワレも慎重に観察しておったが、オリスとリリーナ、ジョージの間には精神的な繋がりができているようじゃ。)


 僕たちが必死で防戦している側で、エレナ様はオリスさんを注視していたようだ。


(何のための繋がりか、ですが、普通に考えると、予知した未来を共有するため、でしょうな。)

(そうじゃ。)

(それが未来視の魔眼が持つ未来を予知する以外の機能でしょうか?)

(美姫、そうではないのじゃ。リリーナとジョージの動きをよく見てみるのじゃ。)


 エレナ様に言われて、余裕のないところから無理やり時間をひねり出してリリーナさんとジョージさんの動きを伺う。


(何も変なところはありませんが、、、)

(樹の目は節穴じゃのう。)

(ときどき、リリーナさんとジョージさんの動きがぎこちなくなりますね。)

(その時には意志とは別な方に動かされているように見えませんかな?)

(そう言われるとそんな感じもします。)

(おそらく、未来視の魔眼は未来を予測し、それをなぞるように動けるよう予測を共有した者に補助を行うのじゃろう。)

(それで2人の動きは速くて洗練されていたのですか。)

(そして、予測とは別の動きをしようとしたときには補助が切れるから、動きがぎこちなくなるのですね。)

(意志とは別な方に動かされているように見えるのは、予測に従うように動きが引き戻されるからでしょうな。)


 リリーナさんとジョージさんの動きが鋭い理由は分かったが、


(そうなのじゃが、ワレが感じる違和感はまだ払拭できていないのじゃ。)

(未来視の魔眼にはまだ別の機能があるのでしょうか?)

(それは分からんが、良い予感はせんのう。)


 エレナ様にはまだ懸念していることがあるようだ。


(それでも未来視の魔眼の機能は素晴らしいから、僕たちにも使わせてほしい。)

(それが出来るのならオリスさんが提案してくるんじゃない?そうでないところからすると出来ないのよ。)

(契約か何かが必要なのかもしれませんな。)

(グレンの言うとおりじゃろうのう。)


(残念。予知した未来を共有してもらえたら、形勢を好転させられるかもしれなかったのに。)

(このままだと悪くなるばかりで良くなりそうにありません。)

(仕方ないのう。ワレも手助けをしてやるとしようかのう。)


 エレナ様がそう言った時だった。 


「ぐはっ!」


 変則的に動いたダービルの手刀から危ういところで逃れたジョージさんだったが、纏っていた魔導力に当てられ尻もちをつく。


(ジョージさんにダービルの手刀が纏う魔導力のことを言っておくべきだった!)


「終わりだ。」


 ダービルはジョージさんが避けようのない方向から再び手刀を繰り出した。


「くそっ!こんなところで終われるか!」


 ジョージさんは自身の前にありったけの魔導力を集めた魔導盾を発動してダービルの攻撃を防ごうとするが、


「そんなものでは余は止められないぞ。」


 発動された魔導盾などお構いなしに、ジョージさんの胸に向かっていくダービルの手刀。


(間に合わない!)


 僕と美姫へ牽制として放たれた魔導槍を防いだために、ジョージさんの前に魔導盾を発動するのが送れる。


 ビシッ!


 ダービルの手刀とぶつかった魔導盾に罅が入ると、そのまま貫いて手刀がジョージさんに迫る。


(時間がやけに遅く感じる。俺はここでダービルの手刀に心臓を貫かれて死ぬのか?いや、こんなところで吸血鬼に殺されるわけにはいかない!誰でもいい、助けてくれ!)


 何故かジョージさんの心の叫びが聞こえ、


(来たようじゃのう。)


 エレナ様がそう呟いたのと同時に、ジョージさんとダービルの間に眩い光が満ち、


 キンッ!


 その中に現れた何かによってジョージさんの胸を貫こうとしていたダービルの手刀は打ち払われた。


「何っ!?」


 突然の出来事に、ダービルは不測の事態に備えてジョージさんから距離をとる。


(何が起きた!?)

(分からないけれど、ジョージさんは助かったみたいね。)


 僕たちも現状を図りかねていたが、光が収まると、そこには1本の美しい剣が宙に浮かんでいた。


「剣・・・?」


 不可思議な光景に思考が停止しているのか、ジョージさんの前に現れたそれが剣の形をしていることしか分からない。


「・・・。」


 ジョージさんも声が出ないのは混乱しているからではなく、目前の剣の綺麗さに言葉を失っているからのようだ。


「「・・・。」」


 皆も沈黙する中、


(・・・問おう。あなたが、私のマスターか?)


 凛とした声が頭の中に響いた。

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