02
次の日の修礼の時間に修学旅行の班分けが行われた。
「班分けのくじ引きを始める。男女別に箱を用意したから、出席番号順に箱からくじを引いていくように。」
みんな神妙な顔をしてくじを引いていく。
「出席番号順でくじを回すことが多いから、俺たちは損だよな。」
「確率は同じだから別に損でもないんじゃない?」
「自分で引いてダメだったらあきらめもつくけど、残り物じゃぁ損をした気分になるんだ。」
「同感。」
くじが回ってくるまで聡と話をしていた。
「俺も美姫さんと一緒の組になりたいなぁ。」
「聡も?男子のほとんどがそう思ってたりする?」
「そりゃそうだろう。せっかく行くんだから、修学旅行を楽しく過ごしたいからな。美姫さん、最近は男子にも気さくに話をしてくれるようになってきたし、みんなこの修学旅行が最後のチャンスだと思っているんだよ。」
「大げさだな。」
「そんなことないぞ。修学旅行中はずっと一緒に行動するわけだから、樹よりも美姫さんと仲良くなるにはここしかない。」
「僕よりも仲良くなったって、美姫さんは”銃剣系”なんだから、それ以外の魔法系統の人は意味ないんじゃない?」
「美姫さんは成人したら分家筋じゃなくなるから、龍野家の縛りからは解放されるんだよ。樹は知らなかったのか?」
「初耳。」
「だから、龍野家の誰かが美姫さんを養女にして龍野家に復帰させたい、と考えなければ、分家筋じゃなくなった美姫さんとの自由恋愛も可能だ。というわけで、誰にでもチャンスはあるってことだ。」
「そのことをみんな知ってたから、”銃剣系”以外の魔法系統の男子も美姫さんと仲良くなろうとしていたのか。ようやく漠然と感じていた違和感が払しょくされたよ。」
「そりゃ、魔法使いの家系についてはみんな敏感だからな。主な家系については、誰がどういう地位にいるかは魔法使いの常識として知っておくべき知識だぞ。」
「そうだったのか。魔法使いの世界って閉塞感のある村社会の雰囲気に少し似ているような気がする。親戚同士のつながりや家系を重視するところなんか特に。」
「おっと、次は樹の番だぜ。」
回ってきたくじを引いた瞬間、グワッと視界が歪んで吐きそうな気分になった。
「どうした?」
「一瞬眩暈がした。」
「大丈夫か?」
「あぁ、もう何ともない。はい、箱。」
聡に箱を渡す。
「俺で最後だからくじは選べないのがつらいところだな。」
「みんなくじは引いたか?同じ番号になったもの同士が班になる。紙を開いて確認してくれ。」
みんながくじを開いて同じ番号の生徒を探し始める。
「8番か。」
「樹は8番だったのか。俺は3番だった。さて、美姫さんは何番かな?」
みんなの視線が美姫さんに集まった。
「私は8番。」
「男子で8番って誰だよ。」
「また樹か。」
「なんで樹ばっかり美姫さんと一緒なんだ。」
「先生、くじのやり直しを希望します。」
「俺もその案に賛成。」
「俺も。」
男子生徒が次々にやり直しを求めたが、
「公平にくじで決めたんだから、やり直しはなしだ。これから名簿に記載するから各自の番号を言っていってくれ。」
純一先生にあっけなく拒否された。
「樹は運がいいな。」
「聡には悪いけど、今回は素直にそう思う。」
「俺も美姫さんと一緒の班になりたかったな。」
(樹君、一緒の班になれてよかったね。エレナ様に感謝しないと。)
(そうじゃ。樹も、ワレに感謝するのじゃ。)
(感謝感激雨霰。)
(なんじゃ、その気持ちのこもっていない感謝は。)
(でも、どうやったんですか?確率操作はできないと言ってましたけど。)
(簡単じゃ。くじに書いてある番号を書き換えればよいのじゃ。)
(もしかしてあの時の眩暈と吐き気は、、、)
(そうじゃ。樹の演算領域を全開で使ってくじに書いてある番号を書き換えたのじゃ。)
(やっぱり。)
(美姫のためじゃ。しかし、演算領域を全開で使って、さらに精神エネルギーも結構使った気がするのじゃが、気絶せずに持ちこたえるとは少しは樹も成長したようじゃのう。)
(樹君も、ちゃんと頑張ってるんですよ。)
(ワレが毎週鍛錬しているおかげでもあるがのう。)
(それにしても、神様の割にはせこい方法ですね。なんかこう、すっきりしないというか。)
(何がせこい方法じゃ。一番手間がかからんで確実な方法ではないか!)
(まぁ、そうですけど。)
(折角丸く収まりそうだったのに、またそうことを言う。一緒の班になれたのはエレナ様のおかげなんだから、ちゃんとお礼を言おう。)
(ありがとうございました。)
(うむ、最初からそう言っておればよいのじゃ。昨日ワレを無能呼ばわりしたことを反省すると良いのじゃ。)
(申し訳ございませんでした。)
(分かればよいのじゃ。)




