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「余の封印を解いた者について聞きたいことは、もうないか?」
「・・・はい。」
「では、死合うとしようか。」
ダービルはそう言うなり姿を消し、
パリンッ!
自動発動した魔導盾を砕いて迫ってくる手刀を、これまた自動発動した思考加速のおかげで間一髪躱す。
「くっ!」
「いい反応だ。」
躱せたと思っていたが、肩に焼けるような痛みが走る。
(当たらなかったのに!?)
(ダービルは手刀に魔導力を纏わせておりましたから、その魔導力に当たったのでしょうな。)
(ギリギリで躱せてもダメ、ってことですね。)
バシュッ!バシュッ!
ダービルはそのまま美姫に太い魔導矢を撃つと、美姫の魔導盾などなかったかのように威力が落ちない。
(これはもう矢じゃないよ。槍ね。)
(あ奴の魔導力の前では美姫の魔導盾は全く意味をなさないようじゃのう。これからは避けることに全力を注ぐのじゃ。)
(はい。)
パリンッ!パリンッ!
畳み掛けるように放たれたダービルの魔導槍を魔導盾を砕かれながらも受け流すと、美姫が魔導矢で反撃しようとしたが、
(速い!)
バシュッ!バシュッ!
さらに放たれたダービルの魔導槍を避ける動作に切り替えるしかなかった。
「良い判断だ。」
ダービルは嬉しそうな声を出しながら、雨のように魔導槍を放ってくる。
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!
それを耐え忍んで、美姫が魔導矢を撃つ時間を作った。
(今なら!)
ビシュッ!ビシュッ!
美姫の魔導矢はダービルの魔法防壁を撃ち抜いたが、ダービルはそれを予想していたかのような動きで避ける。
「余の魔法防壁を超えてくるとは、やるではないか。少しは警戒せねばならいな。」
(全然そんなことを思っていないくせに。)
(余裕綽々だものね。)
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!
ダービルが容赦なく浴びせてくる魔導槍と時節混ぜてくる手刀での攻撃に翻弄され、僕たちは防戦一方だ。
(徐々に追い詰められていっているように感じない?)
(肯定。まるで将棋の棋譜をなぞるかのように、常に王手をかけながら僕たちを”詰め”に向かって動かしているみたいだ。)
(彼我の戦力差は明らかじゃから、あ奴にとってこの戦いは勝ちが決まったゲームを楽しんでいるようなものなのじゃろう。)
(ダービルの攻撃も防御も計算ずくで行われているようですからな。)
(それって、私たちではダービルに勝てない、ってことですよね?)
(いや、工夫次第では勝つことは可能なのじゃ。)
(そうは思えないのですが、、、)
(エレナ様は『美姫と樹だけでもいい勝負になるとワレは見ておるのじゃ』と言っておられましたから、やりようはあるのですな。)
(でも、今すぐには思いつきません。。。)
(であれば、ここはあ奴の手を狂わすべくワレらが手助けしてやるべきじゃ、とグレンは思わんかのう?)
(そうですな。)
エレナ様とグレンさんの悪巧みによって、僕から少しだけザグレドの精神エネルギーが漏れ出す。
「む!?」
ダービルがそれを感じて気を散らした瞬間、
ビシュッ!ビシュッ!
美姫が撃った魔導矢がダービルの左胸を捉えたと思もわれたが、ダービルは咄嗟に身をひねって肩を貫かれるに止めた。
(当たったと思ったのに。。。)
(美姫の魔導矢の威力は申し分なかったが、速度が遅かったようじゃのう。次に生かせばよいのじゃ。)
(はい。)
「余の”詰めろ”をこのように破ってくるとは、思いもしなかったぞ。面白い趣向だ。しかし、今度はしかと君から悪魔の精神エネルギーを感じたぞ。」
「でも、僕は融合者ではありません。」
「ふむ、、、君も嘘は言っていないようだな、、、ならば、気が付かないうちに悪魔に取り付かれたか、、、いや、それにしては精神が安定しすぎている、、、」
(ダービルは僕の状態について考え事をしているみたいだ。)
(絶好の機会に見えるけど、油断なくこちらの方もうかがっているから、今仕掛けても防がれてしまうよね。)
「・・・まぁ、君を吸収してしまえば、余の疑問も解決するか。よし、そうするとしよう。」
ダービルが出した結論は物騒なものだった。




