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竜の女王  作者: M.D
2173年春
524/688

16

 結局、それ以後は食屍鬼と遭遇することなく血液センター内を順調に進むと、


「こっちよ!」


 保管庫に近づいたところで、僕たちに向かってリリーナさんが手を振っているのが見え、


 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!


 戦闘音が無くなり、突撃銃型補助具で魔導弾を撃つ音だけが響いていることに気が付いた。


「保管庫の隣の部屋から魔導弾の音が聴こえますね。」

「ダービルをそこに追い込んだ後、牽制して出られないようにしているのよ。」


 リリーナさんが美姫の疑問に答える。


(そんなことをしても無駄なのにのう。)

(そうですな。真祖の吸血鬼ならばペンドラゴン家の魔法使いによる囲みを突破することなど容易いですからな。)

(そうしないのは、いつものように樹の精神エネルギーを餌として撒いておいたから、奴はワレらが来るのを待っておるからなのじゃろう。)


 エレナ様がさらっと酷いことを口にする。


(毎度のことながら、エレナ様、あんまりです。。。)

(そうです。樹を囮にするのなら、事前に私たちに相談してからにして下さい。)

(美姫、相談するまでもなく僕を囮にするのは良くないと思う。)

(何を言ってもエレナ様だったら実行するんだから、せめて事前に教えてくれたら心の準備とかできるじゃない?)

(それはそうだけど、、、)


 美姫まで僕の扱いがぞんざいになっている気がした。


「美姫たちは、ここに来るまでに食屍鬼に襲われた?」

「はい。でも、1回だけです。」

「そう。良かったわ。全部の部屋を調べられていないから、討ち漏らしがあるのよね。」


「こちらの状況はどうですか?」

「思わしくないわね。」

「距離を取って突撃銃型補助具で魔導弾を連続的に浴びせているのだが、ダービルの魔法防壁に全て阻まれてしまっている。」


 リリーナさんとジョージさんが現状を説明してくれる。


「悪いことに、ペンドラゴン家の精鋭部隊の1つが攻撃を仕掛けて、逆に隊長のキュリアがダービルに吸血鬼にされた上に隷属化させらてしまったのよ。」

「最悪だ。」

「あぁ。『東京の魔法使いには任せられない』と言って、俺たちの制止を振り切って突っ込んでいってしまったんだ。」

「『ペンドラゴン家の問題はペンドラゴン家の魔法使いで解決する』とも言っていたわ。」

「それでダービルに隷属化されてしまっては元も子もないですね。」

「そのとおりよ。止められなかった私たちにも責任はあるけれど。」


 リリーナさんは悔しそうだ。


「吸血鬼にされた隊長のキュリアさん以外の隊員はどうなったのですか?」

「食屍鬼にされてしまったけれど、それは打倒したわ。」

「では、相手はダービルとキュリアさんの2人ですね。」

「手間をかけさせてすまない。」


 ジョージさんが僕たちに謝罪する。


「オリスさんはまだ来ていないのでしょうか?」

「えぇ、もうすぐ来ると思うけれど、オリスが来るまで待つ?」


(エレナ様とグレンさんはどうしたら良いと思われますか?)

(まずは美姫と樹の意見を聞こうかのう。)

(そうですね、、、オリスさんの未来視の魔眼が、ダービルとの戦いでどの程度使えるかによると思います。)

(オリスさんが未来視の魔眼を使って、上手くダービルを牽制してくれたら僕たちも動きやすくなるか。)

(そうじゃなくて、オリスさんの未来視の魔眼は単に未来を予知するだけじゃないと思うの。)


 美姫が心懸かりを言葉にし、


(美姫がそう思う理由は?)

(未来を予知できるだけで、高校1年生から魔闘会本選に出場できると樹は思う?)

(・・・僕たちが1年生の時に同級生が2年生と魔闘会予選を戦うのを見ていたけど、実力が全然違ったから、オリスさんに余程の実力がないと難しそうだ。)

(でしょ。そして、封印の部屋で見たオリスさんは、そんなに強そうには見えなかったもの。)

(実力を隠している、という訳でもないとすると、、、)

(未来視の魔眼には未来を予知する以外の機能があるはずよ。)

(成程。)


 その根拠は頷けるものだった。


(そうじゃ。美姫も気付けたようじゃのう。)

(ワシもそれを言わないようにしておりましたが、未来予測というありふれた能力だけでは”神話級”の魔法具とは呼ばれんでしょうから、美姫さんや樹君なら気が付くと思っておりましたな。)

(では、オリスさんの未来視の魔眼が当てにできるようなので、オリスさんを待ってからにします。)

(いや、ワレらだけで勝負に挑むのじゃ。)


 えっ!?


(エレナ様も待った方が良いと言われると思いました。)

(まだ、オリスとやらが味方じゃと決まったわけではないからのう。)

(封印の部屋でも協力的な感じでしたし、それはないんじゃいですか?)

(樹君、人の心は読めませんから、他人を信頼しても信用してはならないのですな。)

(世知辛い話ですね。)

(現実とはそういうものなのですな。)

 

(しかし、私たちだけで勝てるでしょうか?)

(同感。ダービルは真祖の吸血鬼で下級悪魔と同等の強さを持っているのなら、僕たちだけ、というのは荷が重すぎる気がします。)

(奴は封印が解けて復活したばかりじゃ。今であれば、血の補給は十分じゃろうが精神エネルギーはそうではないじゃろう。油断はできんが、美姫と樹だけでもいい勝負になるとワレは見ておるのじゃ。)

(ワシらもおります故、2人とも大船に乗った気持ちで挑めば良いのですな。)

(しかし、あまりワレらに頼りすぎるのも良くないから、できるだけ直接手助けはしないようにするが、随時助言はしてやるのじゃ。)

(ありがとうございます。)

(さぁ、楽しくなってきたのう。)


 エレナ様はいつものようにお気楽な気勢を上げた。

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