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竜の女王  作者: M.D
2173年春
521/688

13

「お母様、ダービルの居場所が分かったところで、これからどうなさいますの?」


 リリーナさんが落ち着かない様子でマーガレット様に尋ねる。


「そうね、、、ダービルは凶悪な吸血鬼だから魔法軍の上級魔法使いに出動を要請したいところだけれど、現在ロンドンには上級魔法使いが1人しかいなくて、運悪く、魔獣討伐に狩りだされてしまっているのよ。」

「なんてこと、、、」


(魔獣の出現もダービルの封印を解いた者の計画のうちなのかも。)

(同意。用意周到だ。)

(しかし、陽動に上級魔法使いが出なければならない程の魔獣を用意できるとなると、その者は相当の実力者と考えられますな。)

(そうじゃのう。ダービルだけでなく、そ奴にも注意せねばならんのう。)


 次々に懸念事項が増えていく。。。


(上級魔法使いがいないのなら、勿体つけずに特級魔法使いを出せばいいのに。)

(マーガレット様もそのくらいは分かっておられるはずよ。でも、そうされないのは、特級魔法使いがいないからじゃない?)

(でも、ペンドラゴン家はエクスカリバーを持っていて――――)


「しかし、ペンドラゴン家には”神話級”の魔法具があって、それを使用できる特級魔法使いがいらっしゃるのではないですか?」


 オリスさんが僕たちが聞きたかったことを質問してくれたのだが、


「そうね、、、ここで嘘を言っても仕方ないから正直に言うと、今のペンドラゴン家には”神話級”の魔法具であるエクスカリバーを使用できる魔法使いはいないわ。」


 答えるマーガレット様からは歯痒さが感じられた。


(だから、ジョージさんは私たちを『遊ばせておく余裕がペンドラゴン家やロンドン魔法軍にはない』と言ったのね。)

(上級魔法使いも特級魔法使いもいないのなら、僕たちを頼りたくなる気持ちも分かる。)


「・・・やはり、エクスカリバーも使用者が魔法具に認められないといけない、という噂は本当だったのですね。」


 オリスさんは合点がいったようだ。


「えぇ、そうよ。”神話級”の魔法具は皆そうらしいし、オリスさんもそれはご存じなのではなくて?」

「私はリューデリッツの我が家に伝わる”神話級”の魔法具についてしか知りませんでしたので、確認させて頂いた次第です。」

「そうだったの。オリスさんは未来視の魔眼に認められたのね。」

「そうなのですが、未来視の魔眼は初代様と血がつながっている者には、割と誰にでも使用を認めて下さる魔法具なのです。。。」


(未来視の魔眼も”神話級”の魔法具だったのね。)

(起こり得る確率の高い未来を予測するなんて、普通の魔法具に出来るとは思えないから、”神話級”と呼ばれても不思議じゃない。)

(それと同じことが出来るとは流石は名探偵エレナ様!どんな些細なことも見逃さずに解決の糸口を見つけ出す、その観察眼と推理力にザグレド感動!先の第9次聖魔大戦においても――――)


 エレナ様を褒め称えるためにザグレドが出てきたが、エレナ様が推理していた時に出てきてしかるべきじゃなかったか?


「これから魔法理事国の各都市国家に応援を要請しても、その間にダービルに逃げられてしまえば元も子もないし、どこかにダービルと戦えるような魔法使いはいないかしら、、、」


 マーガレット様が美姫と僕の方をチラリと見て、


「分かっています。私たちがダービルの討破に行きます。」

「美姫さん、樹君、ありがとう!でも、2人だけを危険な目に合わせることはしないわ。ペンドラゴン家と魔法軍でダービルを先にできるだけ削っておくから。」


 と、白々しく言った。


(まるで美姫の方から参加を願い出るのを待っていたかのようだ。)

(そうね。私もあれはちょっとどうかと思う。)

(このくらいの腹芸が出来ないと魔法使いを束ねる家の当主は勤まりませんな。)

(じゃが、この貸しは大きいのじゃ。何倍にもして返してもらうとしようかのう。)

(そうですね。)


「俺も出ます。」

「私も。美姫と樹だけに責任を押し付けるわけにはいきません。」


 ジョージさんとリリーナさんも決意を表白する。


「あなた達、、、そう言うと思って関わらせないようにしていたのに。。。」

「お母様、先程も言いましたが、私だってペンドラゴン家の一員です。お家の一大事を黙って見過ごすなどできません。」

「俺も同じ気持ちです。」


 リリーナさんとジョージさんは戦いを前にして高揚しているみたいだ。


「私も微力ながらお手伝いさせて頂きます。」

「オリスさんまで、、、」

「マーガレット様に呼ばれてここにきた時点で覚悟はできています。とは言っても、私は後方支援担当なので美姫さんたちほど危険ではないかもしれませんが。」


 オリスさんは淡々とした様子で参戦を表明した。


「では、私たちは一度、ロンドン駐在事務所に魔法の腕輪を取りに戻ります。」

「同じく私も。」

「皆、悪いけれどお願いね。あなた達が血液センターに集まるまでダービルを逃がさないよう、ペンドラゴン家は魔法使いを先に向かわせておくわ。」

「私たちも準備を始めましょう。」

「あぁ、急ごう。」


 それならばと封印の部屋を出ると、


「ダービルも復活したばかりだし、美姫たちが来る前に私たちが打ち負かしているかもしれないわね。」

「そうなっても文句は言うなよ。」


 リリーナさんとジョージさんが軽口をたたく。


(黒鍔村の時は、封印が解けたばかりで鬼も本来の力をだせていなかったから僕たちでも討伐できたし、今回も何とかなるかもしれない。)

(樹、油断は禁物よ。)

(そうじゃ。あの時は鬼も美姫と樹を侮って油断していたからのう。)

(気を引き締めていくべきですな。)

(了解。)


 僕たちもロンドン駐在事務所に急いだ。


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