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竜の女王  作者: M.D
2173年春
520/688

12

「美姫、何か分かった?」


 リリーナさんが棺桶の中を覗きこむ美姫に聞き、


「棺桶の中の模様が、魔力を押さえつけることによって魔法を行使しにくくするための模様に似ているような気がします。」

「へぇ、ご先祖様は万が一にもダービルに魔導杭を抜かれないように棺桶にも細工していたのね。」

「そうだと思います。」


 それに美姫が応答すると、


「美姫はダービルがどこに行ったか見当はついたのかしら?」


 オリスさんが続けて問う。


「はい。ダービルが封印されていた状況や血を吸われた警備の魔法使いについて考えると、復活したダービルが取りそうな行動から居場所の推定はできます。」

「美姫は――――」

「それはどこなの!?」


 リリーナさんは一刻も早く知りたそうで、食い気味に言った。


「リリーナ、待ちなさい。私も予知が終わったわ。」


 そう言ってリリーナさんを見るオリスさんの目は元に戻っている。


(オリスさんの左目の輝きが消えてる。)

(未来視の魔眼に魔力を流して未来を見ているから、予知が終わったら輝きが消えるのよ。)

(美姫さんの推測は半分正解、というところですな。)

(そうじゃ。あの魔眼には普段も僅かに魔力を流しておるようじゃからのう。)

(どういうことでしょうか?)


「どちらでもいいから、早くダービルの居場所が聞きたいわ。」

「そうね、、、美姫は自信があるようだし、同時に答え合わせといきましょう。美姫もそれでよいかしら?」


 思考伝達で話をしている間に、オリスさんが提案をしてきたため、


(今はオリスとやらに答えることが先決じゃろうから、後で説明してやるのじゃ。)

(分かりました。)


 エレナ様の解説は後回しにして、オリスさんへの返答を優先する。


「・・・はい。」

「美姫、大丈夫?本当にいいの?」

「はい。間違っていても、私の考えが正しくなかったというだけですから。」

「そ、そう。。。」


 リリーナさんが心配な様子を見せる中、


「それじゃ、同時にダービルの居場所を言いましょう。いきますよ。せえの――――」


 オリスさんが掛け声をかけ、


「「血液センター。」」


 オリスさんと美姫の言葉が重なる。


「・・・。」


(美姫とオリスさんの答えが同じで良かった。。。)

(なんじゃ?樹はワレの推理が間違っていてほしかったのかのう?)

(否定。向こうは未来視をしているのですから正しいことは確実なわけですし、こちらが間違っていたたら美姫が恥をかくところだった、と思っただけです。)

(オリスは未来視などしておらんから、いらん心配じゃ。)


 えっ!?


(そうなのですか?)

(ワレでも確実な未来を見通すことなど出来んのに、人間風情や魔法具がそれを出来ると樹は思うのかのう?)

(否定。そう考えると、確かにおかしいですね。)


 エレナ様の指摘は全くもってその通りだ。


(でしたら、オリスさんの未来視の魔眼とはどのようなものなのでしょうか?)

(やっていることはワレの推理とたいして変わらんのじゃ。蓄えた知識、事の経緯、周囲の状況などから起こり得る確率の高い未来を予測しているにすぎんのじゃ。)

(それって、麻由美さんの悪魔の能力と同じですね。)

(未来予測は麻由美と融合していた悪魔の能力の一部でしかなかったように、ありふれた能力ですからな。)


(でも、そのようなことが魔法具に可能なのでしょうか?)

(あの義眼では無理じゃ。)

(ん?でも、『起こり得る確率の高い未来を予想している』と言いませんでしたか?)

(オリスの義眼は単なる端末に過ぎないのですな。)

(そうじゃ。奴を観察しておると、精神エネルギーをどこかに飛ばしているようじゃったからのう。大方、別の場所にある未来視の魔眼本体に情報を送信して、本体で推理した結果を受信しておるだけじゃろう。)

(サーバとクライアントみたいな感じですね。)


(その例えは良く分からんが、奴は普段から義眼に僅かに精神エネルギーを流して未来視の魔眼本体に情報を送信し続けておるのじゃ。そして、本体から結果を受信して確認する時にだけ義眼に大きな精神エネルギーを流せば良いのじゃろう。)

(なので、オリスの瞳は青いのですな。)

(成程。両目の瞳が青いから、普段は義眼に魔力を流し続けていても分からないわけです。)


(上手いこと能力を隠してますね。)

(それから、もしあの義眼が本物の未来視の魔眼であれば、それを見せびらかすことなどしないでしょうな。そのようなことをしていれば、過去に拉致されて魔眼を奪われていてもおかしくないですからな。)

(なのに、オリスさんの家はずっと未来視の魔眼を保有し続けている、と。)

(そう考えると、オリスさんの義眼が単なる端末に過ぎないことが良く分かります。)



 オリスさんと美姫が言ったダービルの居場所が同じであったことに仰天して、しばしの間、皆、黙っていたが、


「美姫さんは鋭い観察眼を持っているようね。」


 マーガレット様がまず口を開き、


「ありがとうございます。」

「オリスと同じ答えを導きだせるなんて、美姫の推理力はたいしたものだわ。」

「ふふふ。美姫には未来視の魔眼は必要ないようね。」

「さすがは美姫、といったところか。美姫を呼んだ俺たちの目に狂いはなかった。」


 他の人も口々に美姫を褒め称えた。

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