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竜の女王  作者: M.D
2173年春
513/688

05

 結婚式当日の朝、僕たちは相応しい服装に着替え、ロンドン駐在武官が迎えに来てくれるまで待っていた。


「樹はモーニングを選んだのね。」

「似合ってないのは分かってるけど、モーニングを着る機会なんて滅多にないだろうと思って。美姫も淡い青色のドレスが似合ってるよ。」

「ありがとう。」

「頭につけてる小さな帽子には何か意味があったりする?」

「正礼装だと帽子は必須なんだって。」

「だから僕もシルクハットを持たされているのか。」

「ロンドンは昔からのしきたりを重んじているからね。それに、結婚式場のウェストミンスター寺院は地上にあった建物をわざわざ地下に移築したものらしいよ。」

「効率としては最悪なんだろけど、伝統を重視するロンドンらしいといえばらしい。」


 その後、迎えに来てくれた車でウェストミンスター寺院まで移動する。


「おぉ!歴史を感じさせる建物だ。」

「それにすごい人の数ね。」

「流石はペンドラゴン家の結婚式、という感じがする。」


 荘厳なウェストミンスター寺院の中へ、綺麗なドレスを身にまとった婦人とビシッとしたスーツを着こんだ紳士が続々と入っていく。


「美姫大尉殿も樹中尉殿もどうぞ中へ。」

「ありがとう。」


 車を降りてウェストミンスター寺院の中へ入ると、礼拝堂に案内された。


「ステンドグラスが美しい。」

「第2次世界大戦の時に、ドイツ軍の爆撃から守るために疎開させていたこともあるんだって。」

「そこまでするか。」


 しばらくして結婚式が始まり、聖歌隊がアンセムを歌う中、リリーナさんが父親とともにゆっくりとジョージさんのところまで歩いていく。


(リリーナさんのウェディングドレス姿は綺麗ね。)

(同感。やっぱりサムシングフォーの慣習にのっとってるのかな?)

(そうよ。ペンドラゴン家に伝わる首飾りが”サムシングオールド”、この日のために作られた純白のウェディングドレスが”サムシングニュー”、王家から借り受けたティアラが”サムシングボロード”、隠れて見えないけれどガーターベルトについている青いリボンが”サムシングブルー”、って昨日リリーナさんが言ってたのを聞いてなかったの?)

(聞いてなかった。。。)

(サムシングフォーはマザーグースの歌が由来らしいけれど、こういうのも伝統なのね。)


 式は形式にのっとって進行し、全員で賛美歌を歌った後、ジョージさんとリリーナさんが結婚の誓いをし、指輪を交換した。


(ここで説教っている?あえて退屈な話をして眠りを誘っているとしか思えない。)

(そんな不謹慎なことを言わない。これも儀礼の1つなんだから、眠くても欠伸とかしちゃだめよ。)

(了解。)


 ロンドン主教の説教が終わると再び聖歌隊がアンセムを歌い、歌が終わった後、ジョージさんとリリーナさんは通路を通って、皆に祝福しながらウェストミンスター寺院を出る。


 ゴーンゴーン


 新郎新婦である2人の新たな門出を祝うかのようにウェストミンスター寺院の鐘が鳴った。



「素晴らしい結婚式だったね。」

「同感。終始、伝統と格式に圧倒されっぱなしだったけど、ジョージさんとリリーナさんが幸せそうで良かった。」

「私も感動したわ。でも、自分の時には略式でいいかな。この規模になると準備も大変だし、費用もかかるから。」


 結婚式後にウェストミンスター寺院で行われたカクテルパーティーには陽菜さんも加わっていた。


「そうですね。大勢の人に祝ってもらうのも嬉しいですが、私も家族だけのこじんまりした結婚式でもいいと思っています。」

「ほっ。」

「樹君、今、あからさま安堵したでしょ?ダメよ、そんなんじゃ。美姫さんはああ言っているけれど、結婚式は女性の憧れなんだから。」

「いいんですよ。樹がこういった儀式的なものが好きでないことを、私は理解していますから。」


 3人で結婚式の感想を言い合っていると、


「君が美姫か?」


 恰幅のいい紳士が美姫に声をかけてきた。


 ??


 見知らぬ人物に美姫が戸惑うのを見て、


「ウィリアム王弟陛下、そのとおりでございます。」

「陽菜か。久しいな。君が一緒にいるからそうではないかと思ったんだ。」


 陽菜さんが返答し、紳士がそれに応じる。


(王弟陛下!?)

(それじゃ、この人がジョージさんの父親なのね。)

(勲章が沢山ついた高そうな服を着ていると思ったけど、まさか王族が美姫に声をかけてくるなんて、、、)

(私もビックリだよ。)


「失礼致しました。」


 慌てて美姫が謝罪すると、


「いや、いいんだ。私は国王の影のような存在なのだが実際に影が薄いと言われているし、私よりも息子のジョージの方が有名なくらいだからな。ハハハ。」


 ウィリアム王弟陛下は力なく笑うが、”はい”とも”いいえ”とも返し難い。


「・・・。」

「おっと、答えにくい言い方をしてしまったね。私が美姫に声をかけたのは、一言お礼を言いたかったからなんだ。息子を救ってくれてありがとう。」

「お気持ち、お受け取りしました。ウィリアム王弟陛下もジョージさんのことを知っておられたのですね。」

「あぁ。私にも隠そうとしたようだったが、護衛から真実を聞きだすことなど容易いことだ。」

「そうでしたか。」

「もう少し話していたいところだが、他にも行かねばならないところがあるから、これで失礼するよ。パーティーを楽しんでくれ。」

「はい。ありがとうございました。」


 ウィリアム王弟陛下が去った後も何人かと話をし、最後にウィリアム王弟陛下がスピーチをしてカクテルパーティーはお開きとなった。

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