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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
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25

(樹君、飛行速度を落としましょうかな。)

(どうしてですか?そんなことをしたら、撃墜されやすくなってしまいます。)

(ワシらを追ってきている魔法使いも前方の第一小隊の存在に気が付いたようで、このままワシらを追い続けるかどうか思案している様子がうかがえるのですな。)

(成程。ここまで来たら、あの魔法使いに逃げられるよりも大和大佐たちに捕まえてもらった方が良いですね。)

(ですので、飛行速度を落とすことで、樹君が飛び疲れてヘロヘロな美味しい獲物だと思わせるのですな。危険は伴いますが、どうしますかな?)

(虎穴に入らずんば虎子を得ず。危険は承知です。)

(それであれば、この距離からなら第一小隊もワシらが攻撃されれば気が付きますので、ワシらを追ってきている魔法使いも一撃で決めにくるでしょうから、注意をしておくべきですな。)

(了解。)


 グレンさんの指導で飛行速度を落とし、蛇行する際もヨタヨタした感じを演出すると、


(おっ!食いつてきました。)


 ゴー―!


 敵魔法使いは今までとは違う上方から急接近して魔導砲を放ってきたので、


(ここだ!)


 思考加速を発動させ、緩やか時間の流れの中、迫りくる魔導砲を体を捻ってギリギリで躱す。


(ちょっと掠った。。。)

(しかし、樹君はもう思考加速の速度調整も出来るようになって、完璧に使いこなせるようになりましたな。)

(グレンさんに無意識下での思考加速発動の抑制方法を教えてもらった効果です。感謝。)


 魔導砲を外したことを確認した敵魔法使いはイメルマンターンをして逆方向に飛び去ろうとするが、


 パンッ!パンッ!パンッ!

 ビシュッ!


 大和大佐の第一小隊がいる方角から飛んできた魔導弾が敵魔法使いに直撃する。


 ビュンッ!


 その直後、僕の横を高速で何者が通り過ぎ、意識を失って落下を始めた敵魔法使いを拘束した。


「樹少尉はこいつから攻撃されていたようだが、こいつは何者だ?他の者はいるのか?」


 そう言って僕の方に振り返ったのは大和大佐だった。


「えーっと、美姫中尉と上尾愛の野外ライブに――――」

「まずは俺の質問に端的に答えろ。敵の増援が来たら樹少尉からの報告を聞いている暇がなくなる。」

「はっ。何者かは不明ですが、追ってきてたのは1人だけです。」

「そうか。」


 大和大佐に遅れて、第一小隊の隊員が次々と僕の周りに集まってきた。


「大和大佐、敵襲ですか!?」

「いや、そうではないらしい。敵の増援もないようだから、樹少尉、最初から報告を。」

「はっ。上尾愛の野外ライブ中に2人組の魔法使いの襲撃を受け、上尾愛が連れ去られてしまいました。」


「上尾愛が攫われた!?」

「それは一大事ね!」

「樹少尉がそのことを知っているということは、、、野外ライブに参加できたのね。うらやましい!」

「お前たち、うるさいぞ!」


 大和大佐が騒ぎ出した第一小隊の隊員に雷を落とす。


「樹少尉、続けてくれ。」

「はっ。美姫中尉が上尾愛を連れ去った魔法使いを追っており、小官が大和大佐へ報告のためにこちらに飛行してきました。その小官を追ってきたのが2人組の魔法使いの1人であるこの者です。」


 僕がそう言うと、皆、魔法使いの方を見て、


「晋造!?」


 第一小隊の隊員の1人が驚きの声を上げた。


「詩織大尉の知り合いか?」

「はい。同級生です。魔獣との遭遇戦後に行方が分からなくなって戦死扱いになっていたはずです。それに、晋造は魔導翼を使えないため飛行する樹少尉を追ってくるなんてできないはずなのですが、、、」

「そうか。何やらきな臭い感じだな。」

「この後、どうされますか?」


「・・・樹少尉、美姫中尉がもう1人の魔法使いを追っているのだったな?どちらの方角か分かるか?」

「ここからだと西北西の方角かと。」

「だとすると、東京シールドを横断することになるか。・・・よし。俺は美姫中尉の増援に向かう。他の者はこいつを魔法軍本部に連行しろ。」

「「はっ。」」


 大和大佐は敵魔法使いの拘束を第一小隊の隊員に任せて飛行を始めようとする。


「小官も連れて行って頂けないでしょうか?」

「樹少尉は俺よりも飛行速度が遅いだろう?俺について来れるとは、、、いや、樹少尉がいた方が美姫中尉を見つけやすくなるだろうし、良い鍛錬になるかもしれないな。」


 僕の嘆願に大和大佐がニヤリとしながら答えた。


「では、行こうか。」

「えっ!?この体勢に何の意味が、、、」


 今、僕は背中側から大和大佐に羽交い絞めにされている。


「俺が連れて行ってやるのだ。ガッハッハッ。」

「ちょ、まっ、、、うわあぁぁぁ!」


 僕の制止を無視した大和大佐の急加速によって、空気の壁に叩きつけられたような衝撃が体中を駆け巡った。

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