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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
495/688

23

「アンコール!アンコール!」


 最終曲が終わって上尾愛が舞台の袖に下がると、すぐにアンコールの声が上がる。


(あと数曲で終わりだ。名残惜しい。)

(私も。この楽しい時間が永遠に続けばいいのに、って思ってしまうよね。)

(肯定。でも、そうなるとザグレドはずっとこのままだから、それはそれでウザいけど。)

(ふふふ。そうね。)


(ヤックデカルチャー!再び文化を取り戻すのだ!)


 ザグレドはまだ興奮状態から覚めておらず、意味不明なことを言い続けていた。


(ザグレドがあのような状態になるのじゃ。樹も前に言っておったが、あの女の声に精神エネルギーが含まれていることを魔族が知ったら、永遠に精神エネルギーを搾り取り続けられるじゃろうのう。)

(エレナ様が上島さんの現有能力値を変更して下されば、それは起こりえないので安心ですね。)

(うむ。ザグレドを使った実験も終わって有用なデータも取れたことじゃし、ちゃっちゃとやっておくかのう。)

(お願いします。)


(しかし、あの女の声に精神エネルギーが含まれていることを、ワレら以外が気付いておらんのも不思議じゃのう。気が付いておれば利用しようとするじゃろうから、この会場は野外じゃし拉致するのに絶好の機会じゃろうに。)

(・・・。)

(どうしたのじゃ?)

(言っちった。僕たちが言わないでおこうと思っていたことを、エレナ様が言っちった。)

(そうね。口に出してしまったら、それが現実に起きてしまうような気がするものね。)

(2人は心配性じゃのう。そんなこと起こるわけ、、、)


 そこまで言って、エレナ様が口を噤む。


(エレナ様、どうされましたか?)

(こちらに向かって高速で移動してくる者がおるようじゃ。)


 えっ!?


(2人組の魔法使いのようですな。このままの進路をとるのならこの会場を目指している、と考えてもよいでしょうな。)

(だとするとやっぱり、、、)

(上島愛を狙ってる?)

(それは分かりませんが注意だけはしておいた方が良いでしょうな。)

(了解。)


 上尾愛が舞台に戻ってきたときに物販に飾られていたパーカーに着替えているのを見て、


「きゃーー!!あいちゃん、似合ってるー!!」


 観客の歓声が会場に響き渡って、会場内の熱気が再び高まるのを感じる。


(あの2人組はまっすぐこちらに向かってきていますから、確実にこの会場を狙っているようですな。)

(しかも1人からは悪魔の気配を感じるのう。)

(それって、かなりまずい状況じゃないですか?)

(同感。上尾愛が狙われているとすると、僕たちで守り切れるでしょうか?)

(彼女を奪われて悪用されるわけにはいきませんから、ワシらも手助けは惜しみませんな。)

(貴重なデータを提供してくれたあの女を守ってやるくらい造作もないことじゃ。)

(そうだ!プロトカルチャーの文化を失うわけにはいかない!)


 相変わらすなザグレドとは対照的に、僕たちは気持ちを引き締めて冷静を保っていた。


(・・・エレナ様がいらないことを言うから、とんでもないことになった。。。)

(うるさいのじゃ!ワレのせいではないのじゃ!)


 少しだけ上尾愛から話があって、アンコール1曲目が開始された直後、


(もう間もなくじゃのう。)

(来ましたね。)


 上を見ると上空から上尾愛目掛けて急降下してくる2人組が確認できた。


(樹君。)

(了解!)


 僕はそれを阻止しようと、魔法の腕輪の役割をしている魔導翼のバックルに命令規則を送って魔導盾を形成する。

 

 ドンッ!


 2人組の1人である男魔法使いの進路は阻止できたが、もう1人の女魔法使いは魔導盾を上手く躱して上尾愛に接近する。


(悪魔入りはこ奴の方のようじゃのう。)

(やらせない!)


 魔導飛行を使って飛び上がった美姫だったが、それも躱した女魔法使いは上尾愛を抱えて飛び去る。


(魔導弾を撃って牽制した方が良かったのでしょうか。。。)

(美姫、そんなこと言っておらずに、あ奴を追いかけるのじゃ。)

(はい!)


(樹君はこのことを魔法軍に知らせに行きましょうか。)

(どこに、、、って、はっ!今日はいつもの場所で大和大佐の第一小隊が耐久鍛錬をしていると言っていましたから、そこに行けばいいんですね。)

(そうですな。情報端末で連絡するより直接知らせに行った方が、正確に情報を伝えられますからな。)

(了解。)


(美姫、気をつけて。)

(樹もね。)


「キャーーー!!」

「何だ?何が起こった!?」


 会場内が騒然とする中、僕たちは別々の方向に飛行を始めた。

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