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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
489/688

17

「あの、本題に入ってもらって良いですか?」

「えぇ。そのために2人について来てもらったのだったものね。」


 そこから上島さんは少し声をおとした。


「龍野さんの言うとおり、私が上尾愛よ。」

「やっぱりそうだったんですか。先程は思い出せたことが嬉しくて、配慮が疎かになってしまって申し訳ありませんでした。身バレすると大変なことに真っ先に気が付くべきでした。」

「分かってくれればいいのよ。さもなければ、暗室に閉じ込めた上で私の曲を大音量で繰り返しずっと聴かせ、思考が鈍ったところで私の命令に従順な下僕になるよう洗脳してしまおうかと考えていたけれど、無駄になったわね。」

「ははは。。。」


(上島さんと上尾愛が同一人物だなんて、僕の中の上尾愛の印象が崩れていく。。。)

(私も。上尾愛の中の人がこんな毒舌だったとは思ってもみなかったよ。)


「それにしても私が上尾愛だと良く分かったわね。上尾愛として活動しているときにはいつも偽顔をつけて変声器を使っているのに。律や紬なんて3年間くらい一緒にいるのに全く気が付く気配すらないのよ。お猿さんでも人の見分けがつくというのに、あの2人は猿人類、いえ、哺乳類以下の爬虫類ね。」

「・・・私が気が付いたのは、なんとなく雰囲気が似ていたからでしょうか。」

「龍野さんもそうなのね。私のことを上尾愛と見抜く人は、たいていそう言うわ。偽顔をつけて変声器を使っても、ちょっとした癖のような仕草は隠せないから、そうところを重箱の隅を楊枝でほじくって見つける勘のいい人がいるのよ。」


 上島さんはゲンナリしたように言った。


(自分で勝手に理由を見つけてくれてよかった。雰囲気ってどんなとこ?って聞かれたらどうしようかと思ったから。)

(その理由だけど、上島さんのことを上尾愛と見抜いた人の中には、声に含まれている精神エネルギーを感じられる人がいて、それを雰囲気が似ていると思った人もいだんじゃない?美姫も多分そうなんだろうし。)

(そうね。純一先生も授業で『魔法使いでなくても、第六感と呼ばれるものを持つ者は、微弱な魔力を使って無意識のうちにこの領域型魔力探知を使用していると考えられるんだ』って言ってたから、領域型魔力探知で声に含まれている精神エネルギーを感じたのかもしれないね。)


「はぁ、、、やっぱり君津くんつさんに乗せられて歌手になんてなるんじゃなかったわ。上島竜胆として上尾愛のことを話すのは、冬空の下を全裸に靴下だけはいて歩く姿を見つめられるくらい恥ずかしいんだから。」

「君津さんって、上尾愛の全ての歌の作曲をしている人ですよね?」

「そうよ。私は作曲なんてできないから、全部君津さんに任せているわ。」

「ということは、君津さんが、上尾愛の書く歌詞に惚れた、って言っていた、と何かで読んだことがあるんですが、それって上尾愛が自作した歌を聞いて旋律メロディーはダメだけど歌詞が良い、って意味だと思われたのは違って、その歌詞ってもしかして、、、」

「えぇ、『小悪魔令嬢と外道魔法使いの非常識な婚約』に出てくる歌詞よ。君津さんが他の人に提供する楽曲の作詞につまったっときに見つけた小説中の歌詞の使用許可を求めてきたことが、知り合うきっかけだったの。」

「そうだったんですか。」


「でも、君津さんに見出してもらったからこそ、歌手として成功できたんですよね?」

「同感。売れっ子作曲家で、曲を提供してほしいと思っている歌手はいっぱいるんじゃないですか?」

「そうかもしれないけれど、あなた達は君津さんに騙されているわ。あいつはミジンコよ。横から見た一面だけを見て愛らしい姿だと思っても、正面から見たら単眼の化け物よ。君津さんも同じ。」

「確かに、君津さんに直接会ったことがないので報じられる一面しか見れていないのは否めなですが、、、」

「そうよ。私が歌手デビューを渋った時に、偽顔をつけて変声器を使ったら絶対にバレないから、とか言ったのに、自らの利益と引き換えに私のことを教えるようなミジンコ以下の単細胞生物なのよ。」

「酷い人ですね。」

「しかも、身バレして恥ずかしがっている私を見ると曲が浮かんでくるとか、路上でコートの前をはだけてチ〇コを見せた相手の恥ずかしがる姿に欲情する変質者と同じよ。有性生殖生物をやめて単性生殖生物になってほしいわ。」


 上島さんの話を聞いていると、美姫は上島さんのことを毒舌だと言ったけど、単に表現が過剰なだけな気がしてきた。


「私が上尾愛だって、ぜっっっったいに他の人には言わないでね。」

「はい。」

「もちろんタダで、とは言わないわ。今度、東京シールド外縁で私の野外ライブがあるから、あなた達にはそのチケットをあげる。最前列正面のプラチナチケットよ。本当は律と紬に直前にあげて驚かせようと思ってとっておいたチケットだけれど、爬虫類に聴かせるより龍野さんに来てもらった方がマシってものよ。森林君はついでね。」

「ありがとうございます!抽選に当たったことがないから、ついででも嬉しいです。」

「私は一度行ったことがあって、凄く良かったからまた行きたいと思っていたんです。ありがとうございます。」

「喜んでくれて良かったわ。それじゃ――――」


 これで終わり、とばかりに立ち上がろうとする上島さんに、


「最後に一つだけいいですか?」


 聞きたかったことを尋ねた。


「何かしら?」

「この前、律さんでしたっけ?に『竜ちゃん』って言われ――――」

「竜ちゃんって言うな!」

「謝罪。。。」

「はぁ、、、そうよ。私の名前の”りんどう”って漢字で書くと”竜胆”なのわけ。私の親がお日様は西から登って東に沈むと思っているくらいバカで、子供の名前を花の名前から響きだけで決めて、しかも出生登録を漢字でしたのよ。響きで決めたのなら登録は”ひらがな”でしろよ!って話よ。」

「それで竜ちゃ――――」

「竜ちゃんって言うな!今度言ったら、トリカブトの花の蜜から作られた蜂蜜を使った飲み物で心停止させて完全犯罪を成し遂げてあげるわ。」

「・・・了解。でも、詭計トリックを公言したら完全犯罪にならないのでは、、、」


(ふふふ。上島さんって面白い人ね。)

(そう?言葉の修飾が無駄に豊かなのは認めるけど、話を聞いていて疲れる。。。)

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