表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2173年冬
483/688

11

「今日はこれまでにしよう。」

「「・・・はい。ありがとうございました。」」


(やっと終わった。。。)

(疲れたね。今までは受動的に魔法の腕輪に魔力を吸わせるだけで良かったけれど、能動的に魔力を注入するのがこれ程しんどいとは思わなかったよ。)

(同感。落下することの恐怖もあって上手くいかなかったから、疲れも溜まるばかりだったし。)


 美姫と僕は顔を見合わせて、鍛錬が終了したことに安堵した。


「優秀と言われている美姫少尉と樹准尉でも、1日では魔導翼を使いこなせるようにならなかったようだな。ガッハッハッ。」

「そうですが、美姫少尉は限定的とはいえ揚力を得られていたので、飛行が出来るようになるまでに時間はかからないでしょう。」

「樹准尉も最後の方は少しだけ魔導力を纏えていたので、このまま鍛錬を続ければ魔導翼を使えるようになると思います。」


「2人は褒めて伸ばす型の上官か?」

「大和大佐は自分を基準にして他人を評価するから、褒めなさすぎなんです。」

「そうか。花梨中佐は俺に褒めてもらいたかったのか。それならば――――」

「違います。その他大勢は大和大佐のように簡単に魔導翼を使えるようにはならない、と言いたかったのです。」

「そうか。。。」


 大和大佐は花梨中佐の頭に伸ばかけた手を引っ込めて腕組みをした後、


「ならば、美姫少尉と樹准尉には魔導翼を貸し出すから、ずっと身に着けて常に鍛錬を行うように。」


 などと言い出した。


「出動以外で魔法軍本部の外に魔導翼を持ち出すには、魔法軍司令長官の許可が必要なのですよ。大和大佐の独断で決められないことはご存じですよね?」

「当たり前だ。既に雄平大将閣下から直々に、2人に素質があれば俺の判断で魔導翼を貸し出しても良い、との許可が出ている。」

「・・・つまり、大和大佐も2人のことを認めて下さっているのですね。」

「ふん。俺は2人に早く魔導飛行を習得してもらって、航空戦闘隊の戦力を拡充したいだけだ。ガッハッハッ。」

「もう、素直じゃないんですから。」


(大和大佐はちゃんと私たちのことを見てくれていたのね。)

(でも、その代わりに無茶なことを言いそうな気がそこはかとなくする。。。)


「美姫少尉と樹准尉には魔導翼を貸し出すのだから、1週間後にはさぞかし魔力注入に慣れていることだろう。よって、来週は地上500メートルからの落下鍛錬を行うこととする。」

「えっ!?」

「では、本日はこれで解散!」

「「ありがとうございました。」」


 問答無用で来週の鍛錬内容が決定した。


「花梨中佐は士紋中佐はこれから時間はあるか?久しぶりだし、親睦を深めるために飲み行こう。」

「申し訳ありませんが、この後、書類仕事をしなければならないのです。」

「右に同じく。午後に抜け出してきた分の仕事をこれから片づける必要がありますので、辞退させて頂きます。」

「そんなに書類仕事なんてあったか?俺はほとんどしたことがないぞ。」

「大和大佐の分は、他の小隊長が手分けして行っているのです。」

「ならば大丈夫だ。2人の分も他の小隊長に手伝わせればよいのだ。ガッハッハッ。」

「そういうわけにはいかな――――」


 大和大佐にガッチリ捕まえられたまま魔法軍本部に入っていく花梨中佐と士紋中佐を見て、


(花梨中佐と士紋中佐も僕たちのために無理して来てくれていたのか。)

(そうみたい。2人に恩返しをする意味でも、早く魔導翼を使えるようにならないといけないね。)

(同意。)


 と、決意を新たにしたのだった。



 戦闘服を着替えて魔法軍本部を出ると和香が待機しており、車に乗り込んで部屋に戻る。


「美姫様、樹様、お疲れ様でした。」

「初日から鍛錬だなんて、本当に疲れたよ。」

「そう言われるだろうと思いまして、お風呂を沸かしておきました。夕食も準備は出来ていますので、部屋に戻りましたらお風呂になさいますか?夕食になさいますか?それとも、わ・た・し?」

「・・・。」


 笑顔で回答を待つ和香に、美姫が怪訝そうに目を細める。


(和香は、絶対にあの台詞を言いたかったがためにお風呂と夕食の準備をしていたよね?)

(同感。でも、最後の選択肢を選んだらどうなるんだろう?)

(ちょっと、樹、変な想像しないで。)


「汗をかいたからお風呂を先にすることにするね。」

「そうですか。。。」


 美姫の言葉を聞いた和香は残念そうだった。


「それで、和香は鍛錬が始まってからいなくなったけれど、今まで何をしていたの?」

「美姫様がおられないうちに、と思いまして、部屋の掃除をしてしておりました。」

「私がいないからって、私物には触ってないでしょうね?」

「はい。私も美姫様の侍女ですから、そのくらいはわきまえております。ぐっとこらえて、ぬいぐるみに残った美姫様の香りを嗅ぐに止めておきました。」

「はぁ、、、」


(和香との同居は大変そうだ。)

(本当にそうなんだから。やっては駄目なことを挙げるときりがないから、私からの指示を含めてやってもいいことを決めて、それ以外は禁止しているんだけれど、和香はあり得ない抜け道を見つけてくるのよ。)

(和香は美姫に関することについては無駄に才能を発揮するから。)

(この前だって、朝起きたら和香が添い寝していたのよ。部屋の温度をわざと下げておいて、私が寝ぼけて『寒いから温度を上げて』と言ったのを、和香の体で私の体の温度を上げてほしい、という指示だと曲解したのよ。私は、空調の設定温度を上げてほしい、って意味で言ったつもりだったのに。)

(流石和香。屁理屈極めてる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ