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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
482/688

10

「大和大佐!美姫様を突き落とすなんて、どういうことですか!?」

「鍛錬の一環だが、問題でもあるのか?」

「大有りです。怪我をしたらどうするつもりだったんですか!?」

「その台詞は本日2回目だな。」

「大和大佐が言わせているんです!」


 花梨中佐の激しい剣幕に対しても大和大佐は何食わぬ顔だ。


「花梨中佐と士紋中佐が助けるのだから怪我するはずないだろう?それに、花梨中佐の時も俺が助けて無事だったではないか。ガッハッハッ。」

「そういう話ではありません!魔導翼で浮くこともできない2人はここでの練習ですらまだ早いのに、突き落とすなんてことをされたら何もできないではないですか?私の時は魔導翼で浮くことは出来ていましたから、前提が違います。」


(花梨中佐も大和大佐に突き落とされたことがあったのね。)

(だから『やっぱり』って言ってたのか。分かってたらなら大和大佐を止めてほしかった。。。)

(花梨中佐が『やっぱり』って言ったのは、ここで魔導翼を使う練習をすることであって、大和大佐に突き落とされたことじゃないんじゃない?流石に分かっていたら止めただろうし。)

(確かに。)


「花梨中佐の時には魔法軍としての正規の鍛錬で十分な時間がとれたからそうしたが、美姫少尉と樹准尉の場合は週1回しか鍛錬の時間がないから、俺なりに効率を上げようとした結果だ。何事も実戦で得られる経験値は大きいからな。」

「そうかもしれませんが、段階を踏むことも重要です。」

「美姫少尉と樹准尉は優秀なのだろう?それなら一足飛びの鍛錬でも大丈夫だろう。先程も美姫少尉は悲鳴をあげながらも体勢を立て直そうともがいていたしな。花梨中佐がすぐに助けなけければ、火事場のくそ力で魔導翼を使えていたかもしれないぞ。ガッハッハッ。」


「それは暴論です。」

「そうか?俺は美姫少尉と樹准尉に期待をしているから2人にならやれると思っているが、花梨中佐は違うのか?」

「私も気持ちは同じです。」

「ならば良いだろう。さぁ、鍛錬を続けよう。」


 そう言って、大和大佐は浮き上がり始め、


「はぁ、、、分かりました。ただし、私たちが助けに入ることは許可して頂きます。」

「助けるのを地面に衝突する直前にするのであれば許可しよう。」


 最上階から落下する鍛錬を続けることが決定した。


(僕たちの意向は聞いてくれないっぽい。)

(基本的に鍛錬の方針は大和大佐に任せられているし、軍では上官の命令に従わないといけないからね。)

(美姫はエレナ様がいるから花梨中佐が助けに来るのが遅れても何とかしてくれるだろうし、僕もグレンさんについて来てもらったら良かった。。。)


(エレナ様はシィルさんに天界に連れていかれたから、今日はおられないよ。代わりにギレナがいるの。)

(美姫の安全はワレが保証するから心配ないのジャ。)

(そうだったんだ。だから、静かだったのか。エレナ様にしては大和大佐の暴挙に何も言わないからおかしいと思っていたんだ。)

(ふふふ。エレナ様には怒られるかもしれないけれど、たまにはこういうのもいいね。)



 時間短縮のために、僕たちは花梨中佐と士紋中佐に抱えられて最上階に戻った。


「ここから飛び降りるのか、、、」


 改めて外階段の淵に立って下を覗くと、先程まで立っていた場所が小さく見える。


「うわぁ、めっちゃ高い。」


 逃げ腰になって一旦下がろうとしたとき、


「もう一回、行け。」


 ドンッ!


「えっ!?」


 大和大佐に再び背中を押され、


「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」


 地面に向かって落ちていくなか、


「魔力注入!」


 大和大佐の大声で我に返り、必死で体勢を立て直して魔導翼に魔力を注入しようとするが時すでにお寿司。


 フワッ


 士紋中佐に抱きかかえらて地面に着地した。


「ありがとうございました。」

「どういたしまして。それで、魔力注入はできたかい?」

「否定。魔導翼への魔力注入に慣れていないと、咄嗟にやれと言われても難しいことが分かりました。」

「それが正論なんだが、大和大佐は感覚派だからね。本能的に危機を感じた時に感覚が研ぎ澄まされるのを利用しようとしているんだろうけれど、小官たちに同じことを求められても無理なことを分かってくれないようだ。」

「地道に魔導翼への魔力注入の鍛錬を続けるしかないのでしょうか?」

「そうだね。でも、その前に、落下することの恐怖を克服することから始めようか。」

「了解です。」


 その後も暗くなるまで最上階からの落下を繰り返させられた。

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