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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
478/688

06

 食事を終えた後、会談が行われる部屋に先に行って大和大佐を待つことにした。


「美姫少尉と樹准尉は魔法軍司令長官付なのね。通常、大学に進学する者は参謀総長付の役をもらうのだけれど。」

「はい。私たちに友好的な雄平大将閣下の下の方が安心できるだろう、との計らいと思います。」

「それと、特別な地位を与えることによって僕たちに注目を集めるため、かと。」


「それもあるだろうが、参謀総長である龍野蓮れん中将閣下への牽制と見るのが正解だろう。」

「私もそう思うわ。蓮中将閣下は龍野家内では亜紀様派だから、美姫少尉の上役として覚えめでたくなって将来の魔法軍での発言権が大きくなるのを嫌われたのね。」

「私の上役になったからといって、権力が得られるとは限らないと思います。」

「古今東西、御曹司の覚えめでたくなった上役は出世するものと決まっているんだよ。」

「優秀な人材を上役にあてるから、という理由もあるけれどね。美姫少尉も自分の立場を正確に理解した方が良いわよ。」

「はい。」


(僕たちは魔法軍内部の権力闘争に巻き込まれてしまったのか。。。)

(そういうのって嫌よね。)

(雄平大将閣下はそんなことしそうにない感じだったのに、魔法軍司令長官になって変わってしまったのかも。)

(そうね。お義母様も仰っていたけれど、権力闘争の理由が権力を得ることであってはいけないのよ。その権力で成し遂げたいことがある人がその目的を実現する仲間を集めるようなものでないといけないと私も思うよ。)

(同意。)


「しかし、美姫少尉と樹准尉が魔法軍司令長官付であることに対して、六条紅べに准将からお小言をもらうかもしれないわね。」

「紅准将から、ですか?」

「えぇ。紅准将は今回准将に引き上げられて戦闘師団副師団長兼第一航空戦闘隊部隊長になられたから、今日、大和大佐と一緒に顔見せに来られるかもしれないの。」

「それに、紅准将は雄平大将閣下の娘なんだよ。だから、若くて綺麗な美姫少尉が父親の直属の部下になったのは美姫少尉がその美貌で父親を籠絡したから、と考えている可能性も否定できない。」

「下衆の勘繰りですね。」

「それを紅准将に言ってはいけないわよ。」

「もちろん言いません。」


「それにしても、今回准将に引き上げられたのは、どちらも六条家の方なんですね。」

「あぁ。麻由美元大将閣下の下で続々と”銃剣系”の魔法使いたちが魔法軍上層部まで登ってきたために魔法軍内部の権力的均衡が”銃剣系”の方に傾きつつあったから、その揺り戻しのようなものだよ。」

「六条家の雄平大将閣下としては、権力的均衡を元に戻したいと思っているはずだしね。そう意味では、真綾様の反乱は最悪の時期だったわ。それを奇貨として、麻由美元大将閣下に引き上げられた”銃剣系”の将官の多くが魔法軍外に出されてしまったのだから。」


 花梨中佐が苦々しそうに言ったとき、扉が開き、准将と大佐の階級章をつけた男女が部屋に入ってきた。


(あの2人が紅准将と大和大佐か。)

(そうだと思うよ。花梨中佐の言った通り、紅准将も大和大佐と一緒に来たね。)


 立ち上がって敬礼する。


「あら?早く来ていたのね。」

「だから先乗りしようとするのは無駄だと言ったでしょう。ガッハッハッ。」


(大和大佐は笑い方からして豪快な感じがする。)

(紅准将の方は、何故だか私を睨らんでない?)


「ふん。美姫少尉は花梨中佐と士紋中佐を引きつれてくるとは、いいご身分ね。」

「いえ、小官たちは――――」

「あなたに口を開く許可はしていないわ!」


 紅准将はそう言い放ち、士紋中佐は口をつぐんだ。


「龍野家当主の養女だからって、魔法軍内でその権力を振りかざすのは止めてもらいたいわ。」

「・・・。」

「何か言ったらどうなのかしら?」

「意見してもよろしいでしょうか?」

「ちっ。許可するわ。」

「ありがとうございます。」


(紅准将は美姫が許可なしに口を開たのを叱責しようと待ち構えていたのかも。)

(そうみたい。士紋中佐が先に叱られてくれたお陰で助かったよ。もしかして、士紋中佐は私たちに例を見せるためにわざと怒られてくれたのかな?)

(多分。)


「花梨中佐と士紋中佐は私たちを気遣ってついてきてくださっただけなのです。」

「美姫少尉は大人についてきてもらわないといけないようなお子ちゃまだったのね。そんなお子ちゃまを特例で魔法軍司令長官付にするなんて、お父様は何を考えておられるのかしら。」

「私が未熟であることは自覚していますので、お迷惑をおかけすることも多々あるかと思いますが、精進致しますので今のところはご容赦頂ければ幸いです。」

「ふん。その慇懃な言い方が気に入らないわ。」

「申し訳ありません。」


(じゃぁ、何て言えばよかったのよ。)

(紅准将は美姫に言いがかりをつけたいだけなんだって。)

(それは分かっているけれど、腹はたつのよ。)


「それに、大学に進学するような者に、航空戦闘隊の貴重な戦力を割いて魔導翼の使い方を教えないといけないのも気に入らないわ。通常、大学に進学した者の鍛錬は魔法軍に入隊した者と一緒に行うはずなのに。」

「そのことに関しては私たちの預かり知らぬところで決まったことですので、弁解のしようがありません。」

「白々しいわね。どうせ龍野家が裏で手を回したのでしょうけれど、お父様の顔に泥を塗るようなことをしたら許さないんだから。」

「承知しております。ご迷惑をおかけした分は、将来の戦功でお返しすることをお約束します。」


「ふん。大和大佐、美姫少尉と樹准尉を厳しく鍛えてあげなさい。」

「承知しました。」


 紅准将は大和大佐にそう指示を出して部屋を出て行った。

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