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竜の女王  作者: M.D
2173年冬
477/688

05

 コンコンコン


「士紋中佐であります。美姫少尉と樹准尉を迎えに来ました。」

「入ってくれ。」

「はっ。」


 士紋中佐が司令長官室に入ってくると、雄平大将が声を掛けた。


「中佐自らが出迎えとはな。部下に任せても良かったのではないか?」

「2人の知り合いの小官の方が迎えに来た方が緊張しなくて良いだろうと思いまして。」

「本音としては、いきなり航空戦闘隊の小隊長になったから部下の魔法使いに気兼ねして、だろうが、貴官も今の階級に慣れないといけないぞ。」

「肝に銘じておきます。」


「それでは、美姫少尉と樹准尉は士紋中佐について行ってくれ。」

「「はい。」」


 士紋中佐とともに司令長官室を出て、


「食堂の使い方を教えるから、少し早いけれど、昼食にしてしまおう。」

「士紋中佐も一緒にですか?左官以上が使える別の食堂があると聞きましたが?」

「小官を除け者にしないでくれ。それに、今まで通いなれた一般兵用の食堂の方が落ち着くんだよ。」


 ということで、和香も加えて一般兵用の食堂に向かう。


「しかし、士紋中佐が2階級特進して航空戦闘隊の副部隊長になられたのには驚きました。」

「小官が一番驚いているよ。死んでないのに2階級特進なんてどういうことなんだよ。それに、配属されるとしても都市防衛隊だと思っていたから、まさか航空戦闘隊の小隊を率いることになるとはね。。。」

「士紋中佐は『東京に4人しかいない魔導翼を使える貴重な”楯系”魔法使い』なのですから、航空戦闘隊は適任だと思います。」

「絶対に花梨中佐の差し金だよね。」

「同意。」


 食堂に着くと、まだ昼前だということもあってガラガラだ。


「ここでの食事は常識の範囲内だったら食べ放題・飲み放題だ。」

「凄いですね。」

「給料から一定の食事代は引かれているから無料ではないけれど、食事は兵士の数少ない楽しみの一つだし、他の場所で食事中に話をして軍事機密を漏らされるのは困るだろう?」

「肯定。」

「ただし、食べきれない量をとって残すと罰則があるし、一度とったものを戻すのはご法度だから気を付けてくれ。」

「了解であります!」


(樹は何にする?)

(いろいろあって目移りする。)


 迷った挙句、無難に日替わり定食にした。


「そう言えば、どうして士紋中佐が出迎えなのでしょうか?」

「美姫少尉と樹准尉は航空戦闘隊の大和大佐から魔導翼の使い方を教えてもらうんだろう?だったらと、同じ航空戦闘隊の小官が立候補したんだよ。」

「雄平大将閣下ではないですけれど、部下の人でも良かったのではないでしょうか?」


「士紋中佐は2人が心配だったのよね?」


 美姫の質問に答えたのは、食事を持ってやってきた花梨中佐だった。


 !?


 立ち上がって敬礼しようとしたが、


「気にしなくていいわ。」


 花梨中佐は手を振って、それを制した。


「花梨中佐はどうしてこちらに?」

「士紋中佐と同じく2人が心配だったから、かしら。」

「花梨中佐は大和大佐の愛弟子でしたから、これから2人がどんな目にあうのかご存じなのですね。」

「えぇ。」


「えーっと、午後は会談だけなんですよね?」

「・・・。」

「・・・。」

「やっぱり、違うのですね。。。」

「大丈夫。2人が不利になりそうな時には小官たちが加勢するから、心配しないでいい。」

「そうよ。死にはしないから。」


(2人はああ言っているけど、ものすごく不安だ。。。)

(私も。『死にはしない』けれど、その直前まではいく可能性を花梨中佐は示唆しているもの。)


「それにしても、小官を航空戦闘隊にねじ込むなんて、花梨中佐は酷いです。」

「私はそんなことしていないわ。大和大佐から『花梨が抜けた穴が埋められないから、どこかに優秀な飛行魔法使いがいないか?』と聞かれたから、士紋中佐を推薦しただけよ。」

「そういう茶番は本当にいらないんです。」

「都市防衛隊ではなくて残念だったわね。でも、麻由美元大将閣下が突然いなくなられたことによって、魔法軍内は混乱の極みよ。だから、優秀な魔法使いを遊ばせておく余裕は今の魔法軍にはないの。」

「それは分かっていますが、2階級特進はやりすぎではないでしょうか?」

「大尉でずっと留まっている間の士紋中佐の功績が加算された結果だと聞いているわ。」

「こんなことになるのなら、以前昇進を打診されたときに素直に頷いていれば良かった。。。」

「そうね。これからはそうしなさい。」


 そう言って、花梨中佐が軽く士紋中佐の背中を叩いた。


「花梨中佐の方は階級が上がっただけで、第一強襲戦闘隊副部隊長兼第二小隊隊長、というのは変わらないんですね。」

「私は今の地位について間もないから。それに、六条蘇芳すおう准将には戦闘の面でも指揮の面でもまだまだ適わないわ。」

「蘇芳准将って、今回准将に引き上げられた戦闘師団副師団長兼第一強襲戦闘隊部隊長で、アマゾネスみたいな人ですよね?」

「えぇ。でも、麻由美元大将閣下の下で鍛えられて、”ダダーン ボヨヨン ボヨヨン”みたいな感じなのに部隊の指揮は抜群だから、見た目に騙される人は多いわね。」


(ぷぷぷ。)

(樹、どうしたの?)

(花梨中佐のいう蘇芳准将の姿を想像したら、ちょっと面白かった。)

(そうなんだ。花梨中佐も私たちの気持ちをほぐそうとしてくれているのかもね。)

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