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キラッ!
建物の陰から建物の陰へ移動していると、奥の建物の窓から眩しい光が見えた。
(樹君!)
(見えてます!)
思考加速が自動発動して、引き伸ばされた感覚の中で魔導盾を発動し、
キンッ!
奥の建物から飛んできた弾丸を弾き飛ばすと同時に、
バシュッー!
徹甲魔導弾を狙撃手に向けて撃った。
(やったか?)
(・・・仕留められたようですな。)
(良かった。。。)
「樹君!狙撃されたのか!?」
「肯定。しかし、逆襲してやりました。」
「ハハハ。。。これが本当の樹君の実力というやつか。凄い、としか言いようがないな。」
弾丸を防ぎつつ魔導弾を撃った僕に、宗則さんが乾いた笑いを浮かべながら言った。
「いえ、これが樹の本当の実力だと思ってもらっては困ります。」
「そうですか。。。美姫様も樹君も高校生にして魔法軍の魔法使いの中でも上位の者と肩を並べる程とは、驚きしかありません。」
「宗リンも知ってのとおり、2人とも悪魔との戦いから生還したんだから、並みの魔法使いと比べちゃダメよ。」
「そうでした。。。樹君、これからもよろしく頼む。」
「了解。」
(私も徹甲魔導弾を撃てたら良かったのですけれど。)
(美姫は爆裂魔導弾と跳躍魔導弾の命令規則を魔法の腕輪にいれておるからのう。徹甲魔導弾や"桜吹雪"は容量不足で無理なのじゃ。)
(それだと今みたいに樹に負担がかかるので、もっと工夫して命令規則を短縮するか、現代のジャネット・ハーデスさんが発見した命令圧縮を使えるようにならないといけませんね。)
(己の技術を向上させようとするのは良い心がけじゃ。爆裂魔導弾と跳躍魔導弾の命令規則は複雑じゃから、命令圧縮の圧縮効率は大きそうじゃのう。)
(そうですね。東大に進学したら資料室で水準3の資料を調べることにします。)
(徹甲魔導弾もこういう時にしか使えないので、あまり活躍の場がない気がします。)
(今回も1発しか撃っていませんからな。乱戦では魔導砲よりも使いづらい魔法なのですから仕方ないとはいえ、改善すべき項目ではありますな。)
(乱戦で徹甲魔導弾を使おうとすると、、、美姫の"桜吹雪"を真似て、弾頭を散弾のように出来ると良いかもしれません。)
(おぉ!良い案ですな。形成する弾頭の数を少なくしておけば、美姫さんの"桜吹雪"よりも威力をあげられそうですし、この戦いが終わったら早速開発に入りましょう。)
(了解。)
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
パシッ!パシッ!ゴー!バンッ!パンッ!
奥に進むにつれ敵軍が少ない場所を見つけられなくなり、押され気味になっている魔法軍を秘かに手助けすることも多くなっていく。
「危なかった。誰か分からんが、助かった。」
「撃ったのは魔導弾だったから”銃剣系”魔法使いみたいだし、上から通達のあった特務部隊じゃない?」
「そうだったわ。”銃剣系”魔法使いは後詰と特別任務を任せられているのだったわね。」
「俺たちが前線で戦っているというのに、安全な後詰と特別任務とは、いいご身分だ。」
「それでも、援護してくれるだけでも有難いと思わないと。」
「違いないけれど、後ろから撃たれた人もいるから気を付けないといけないわよ。」
「そうだぞ。今回は腕に白い腕章を巻いている”銃剣系”魔法使いであっても、信用するのは避けた方がいい。」
「そうね。でも、”大砲系”や”楯系”にも裏切り者はいるみたいよ。」
「味方を信用できないなんて、やりにくいわ。」
魔法軍の魔法使いたちはそんな風に僕たちのことを口にしていた。
「魔法軍の中に姉上の手先が紛れ込んでいるのも、進撃速度を落としている原因ね。」
「はい。後ろを気にしながら前進するのは難しいですから。」
ガッ!ガッ!パンッ!パンッ!ガッ!ガッ!パンッ!パンッ!
パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!ゴー!ゴー!
「ぐはっ!」
真綾様がいると言われる建物の前まで来た時、魔法軍に怪我人が出て魔法軍の火線に穴が出来るところを目撃したので、
キンッ!バンッ!パンッ!
即座に僕たちは魔法軍に加勢して穴を埋める。
「大丈夫ですか?」
「助かりました。感謝致します。」
「状況はどうなっているのかしら?」
「亜紀様!?どうしてこのような場所に!?」
「特殊任務よ。」
「・・・亜紀様が上から通達のあった”銃剣系”魔法使いの特務部隊だったのですか。。。状況としては亜紀様が奥の建物に侵入する進路を切り開く準備は整っておりますので、いつでも行けます。」
亜紀様の存在に驚きながらも、魔法軍の魔法使いは状況を的確に伝えていた。
「そう。なら、早速実行してもらおうかしら。」
「承知しました。5分後に我々が奥の建物に突入に致しますので、それに合わせて亜紀様も建物に侵入して下さい。」
「分かったわ。」




