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竜の女王  作者: M.D
2172年秋
453/688

17

「この変な建物って宗教団体が建てたんだっけ?」

「そうよ。確か、”平和と友愛”という宗教団体だったと思うけれど、それがどうかしたの?」


 ふと呟いた疑問に美姫が答えてくれた。


「昔は平和島って倉庫街だったのに、その”平和と友愛”が倉庫を次々に買い取った後で、この変な建物を建てて自分たちの街を作ったのが、今の状況の遠因になっているじゃないかと思って。」

「そうかも。”平和と友愛”が東京シールド内で破壊行動を起こした結果として国防軍に殲滅されたから、廃墟のようになったここを上海が外国人街としようとしていたみたいだし。」

「破壊行為を企てるなんて、どこが”平和と友愛”なんだって話だ。」

「彼らが言うには、破壊行為の被害者は”友愛されて”この酷い世界から天国にいけたのだから幸福、なんだって。」

「意味不明。」


「その”平和と友愛”を後ろから上海が支援をしていた、という情報もあります。」


 宗則さんが僕たちの会話を聞いて、話しかけてきた。


「東京に工作員を送り込む際に”平和と友愛”を隠れ蓑にしよう、と考えたのかもしれませんね。」

「美姫様のお考えのとおりでしょう。”平和と友愛”の幹部には上海からの帰化人がいたそうですから。」

「純一先生から『魔法連合国が秘密裏に魔法使いを誘拐したり、魔法の腕輪の製造方法を手に入れたりするための手段として反魔連を使っている』と聞きましたが、宗教団体まで使っていたなんて。」

「上海を含む魔法連合国にとっては、どんな手を使ってでも”楯系”魔法使いや都市防衛装置がほしいのですよ。」


 建物の反対側に着くと、


 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!


 即座に上海の兵が魔導力を纏わせた弾丸を撃ってくる。


「こちら側の攻撃は緩いようです。」

「樹君の策が功を奏したのね。」

「まだ向こう側に我々がいると思っているうちに、ここを突破しましょう。」


(僕の策、というより、グレンさんの策だけど。)

(しかし、ワシの策をいれて実行したのは樹君なのですな。)

(そうよ。樹はそんなに自分のことを卑下する必要はないよ。)


(どれ、ワレも樹に策を授けるとするかのう。)

(禄でもない策かもしれませんが、一応聞いておきます。)

(何じゃと!?そんなこと言うやつには教えてやらんのじゃ。)


(私は是非ともエレナ様の策を聞いてみたいです。)

(そうですな。ワシもエレナ様の素晴らしい策を教えてもらいたいのですな。)

(2人がそこまで言うのであれば仕方ないのう。教えてやるのじゃ。樹、グレンに手助けをしてもらって、弾丸をそのまま撃ち手の方に反射させるのじゃ。さすれば、守りつつ攻めることも出来て一石二鳥なのじゃ。)


(・・・エレナ様にしてはまともな策だ。)

(何じゃと!?樹はワレに素直に感謝できんのかのう。)

(多分、樹はエレナ様が好きだから素直になれないんですよ。)

(そうじゃったのか。愛い奴じゃのう。)

(否定。。。)


 エレナ様の怒りを抑えるためとはいえ、美姫の言は酷すぎる。。。


(樹君、エレナ様の策を使いますかな?)

(肯定。グレンさん、手助けをお願いできますか?)

(承知しましたな。)


 建物の陰から飛び出す前に高速思考で会話したとおり、弾丸を撃ち手の方に反射させるように魔導盾を展開し、


 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

 キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!


 反射させてた弾丸で撃ち手の悉くを沈黙させた。


「へぇ、樹君、上手いじゃない。」

「それを最初からやってくれてれいれば、尚良かったのだが。」

「最初は守りに集中していたから思いもつきませんでした。今は戦況も把握でき、雰囲気にも慣れて頭がまわるようになってきたので、やってみようと思えるようになったのです。」

「そうです。樹も一生懸命にやってくれています。」

「美姫ちゃんの言うとおりね。樹君は戦力として十分な活躍をしてくれていたのだから、それ以上を求めるのは酷というものよ。」

「そうでした。樹君が優秀なので、つい過剰な期待をしてしまいました。樹君、申し訳ない。」


 ガッ!ガッ!パンッ!パンッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

 キンッ!キンッ!バンッ!パンッ!キンッ!バンッ!キンッ!パンッ!


 それからも、僕が魔導盾で弾丸を反射させたり、美姫や宗則さんが魔導弾を撃って進路を作ったりして、魔法軍の進撃に合わせて僅かずつ進む。


「それにしても、上海の兵は弾丸に魔導力を纏わせる専用銃を使える兵だけのようですね。」

「今のところ魔法を使っているのは東京の魔法使いだけですから、上海からは魔法使いを連れてきていないのかもしれません。」

「それって、自分たちの虎の子の魔法使いを投入せずに東京の魔法使いに同士討ちをさせることで、上海は労せずに東京の戦力を割こうとしている、ということでしょうか?」

「そうでしょうね。」


「しかも、上海の兵の中にはかなりの割合で日本人が含まれているようです。」

「もしかして、”平和と友愛”の残党でしょうか?」

「そこまでは分かりません。国防軍が”平和と友愛”を壊滅させた際に、生き残った者たちが地下に潜った、と言われているため、上海の兵に”平和と友愛”の残党が参加している可能性は十分にあります。」


「どうしてそこまで上海に肩入れするのでしょうか?」

「その方が利益があるように感じている、もしくは感じさせられているからよ。大病を患って近代医療では治療方法が見つからないときに、僅かな望みに掛けて民間医療に縋るのと同じね。」

「他人から見たら非合理でも、本人は合理的だと思っているのですね。」

「そういうことよ。」

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