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竜の女王  作者: M.D
2172年秋
441/688

05

 猛勉強のかいあって東大に合格して後は卒業を残すだけになり、


(魔法使い枠ではなかったら、樹はギリギリじゃったらしいのう。)

(えっ!?そうなのですか?というか、そのことを何故エレナ様が知っているのですか?)

(純一先生が校長先生と話しているのをエレナ様が盗み聞きしたのよ。)

(美姫、言い方が悪いのじゃ。盗み聞きではなく、漏れてくる声を拾っただけなのじゃ。)

(校長室って声が漏れないようになっていた気が、、、)

(そうなの。でも、校長室のすぐ側にいればエレナ様には聞こえるんだって。)

(音を完全に遮断することなどできんからのう。)


 思考伝達で話をしながら授業を聞いていると、


「美姫様、至急、お屋敷にいらして下さい。」


 和香が授業中の教室に駆けこんできた。


「今から?」

「はい。亜紀様が美姫様をお呼びするように、と。」

「分かった。すぐ行く。」

「私は車の中でお待ちしています。」


(何やら面白くなりそうな予感がするのう。東大入試では波乱もなかったし、ワレが復帰してから初めての事件が起きていそうじゃから楽しみじゃ。)

(不謹慎なこと言わないで下さい。)

(同意。辛い目にあうのは僕たちなんですから。)

(そう言うでないのじゃ。いつものようにワレが実況生中継してやるから、樹はここで待っているがよいのじゃ。)

(それじゃ、行ってくるね。)


 美姫も急いで支度をして教室を出て行った。


 ザワザワ


 突然のことに教室内も騒然としている。


「何事だ?」

「不明。でも、厄介事に巻き込まれそうなことは分かる。」

「美姫さんが亜紀様に呼び出された、ということは、龍野家で何か起こったのかしら?」

「そうじゃないか。亜紀様の養女になってから龍野家に関する仕事もしないといけなくなって、美姫さんも忙しそうだな。」

「同感。こうやって授業中でも呼び出されたら行かないといけないし。」

「こんなことって滅多にないわよ。でも、そう考えると、その滅多なことが起こっているってことよね。」

「そうだな。」


 僕も聡や美沙と喋っていたが、


「静かに!授業を再開する!」


 先生の言葉で話すのを止めた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「美姫ちゃん、早かったわね。」


 美姫が亜紀様のお屋敷に着くと、いつものように応接室にとおされたようだ。


「至急、とのことでしたので。それで、何があったのでしょうか?」

「それは雄平さんが来てから話すわ。」

「雄平大将も来られるということは、魔法軍がらみ、、、ヒューストンから麻由美さんのことで急ぎ確認しなければならない新たな発見があったと連絡があったのでしょうか?」

「そうじゃないの。詳しくは雄平さんが来てから説明するから、それまで美姫ちゃんとお話ししたいわ。」

「はい。」


 麻由美さんの後任として、雄平中将が大将に昇格し魔法軍司令長官に就任している。


「美姫ちゃんも樹君も、もうすぐ高校卒業ね。早いものだわ。」


 亜紀様が紅茶を一口飲んで、感慨深そうに言った。


「お義母様が良くして下さったお陰です。」

「そんなことないわ。私はしたいことをしただけだし、圭一がいなくなった美姫ちゃんを放っておけるはずないもの。」

「・・・父の所在は不明なままなのでしょうか?」

「そうよ。魔法軍の隠れ家にいる、というのは麻由美が私たちを騙すためについた嘘だったのよ。隠れ家にいたのも偽物だったし。そのことは雄平さんも認めているわ。」

「雄平大将も麻由美さんの協力者だったのですか?」

「そうではないみたいよ。圭一の本当の居場所が露見すると危険だからと、口裏を合わせてほしいと頼まれただけだそうなの。」

「そうですか。」


「ヒューストン大学の資料庫に麻由美と一緒に現れた人物は圭一の若い頃にそっくりだったそうだけれど、美姫ちゃんは話をしたのよね?」

「はい。父を名乗っていましたが、別人だと看破したら認めました。」

「その場にいた百合子准尉やロジャー教授も同じことを言っていたけれど、結局何者か分からなかったのは残念だったわね。」

「はい。すみません。」

「美姫ちゃんが謝ることではないわ。その人物も麻由美が起こした騒動に紛れて立ち去り、その後は行方知れずになっているし、謎だけが残った事件だったわね。麻由美は圭一のことが好きだったから、圭一に似た人物に拐かされてしまったのかしらね。」


「お義母様は麻由美さんが父を好きだったことをご存じだったのですね。」

「偽装結婚をしていたことも知っているわ。」

「では、2人のお子さんのことも?」

「えぇ、圭一との間に出来た子供だということも、あの事件の後、魔法軍から脱走して姿を消したということも知っているわ。」

「えっ!?脱走?」

「そうよ。でも、2人の所在は龍野家の方で把握できているし、美姫ちゃんも近日中に望ましくない形で会うことになると思うわ。」

「どういうこと――――」


 コンコンコン


「左衛門、何事かしら?」

「六条雄平大将閣下がおこしになられました。」


 美姫が亜紀様に質問しようとしたところで、左衛門さんが雄平大将の来訪を告げた。

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