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竜の女王  作者: M.D
2172年夏
429/688

36

 クィッ


 直撃かと思われたが、何者かが戦士型竜人の体を引き、魔導弾は喉を掠めるだけにとどまった。


「新手の竜人!?」

「(今はあなた達と対立する気はありませんから、そのように身構える必要はありませんよ。)」


 戦士型竜人を連れて一瞬で距離をとった竜人が落ち着いた口調で言った。


「・・・。」

「(と言っても、信用してもらえそうにありませんか。どうしたものでしょう?)」


 そう言って、竜人はドラゴン(ヴァロ様)の方をチラ見する。


「お前は俺様に何をしてほしいというのだ?」

「(王竜様には私共の変わらぬ忠誠に対する見返りとして、彼らに反目する気がないことを説明して頂きたいのです。)」

「忠誠心などないくせに、よく言う。だが、この場所に来てからの一部始終を見ていながら手を出さなかったことを評価して、今のお前に敵対心がないことは認めてやろう。」

「(有難き幸せ。)」


「・・・一部始終を見ていた?」

「なのに手を出さなかった?」


 モナルクとクルシフの問いに対し、


「(はい。この者を捕まえるための手続きに手間取りまして。こちらに来た時には王竜様があなた達を応援しておられたので、戦闘が終了する直前まで待っていました。)」


 竜人は冷静に答える。


「待っていた理由は何だ?」

「何故、戦士型竜人を助けるの?」

「(この者は私共の法を犯した犯罪者です。ですので、私共の手で処断したいのですが、戦闘の途中で割って入ると戦闘を楽しまれている王竜様の不幸を買うと思い、静観しておりました。)」

「そいつが犯罪者?」

「あなたは何者ですか?」

「(この者は禁止されている上層で牛蛙を飼っていました。私は法の番人といったところでしょうか。申し遅れましたが、私はエンドレマルカペーと申します。気軽にエンドとお呼び下さい。)」


「一応、筋は通っているな。」

「えぇ。竜人、、、エンドさんはヴァロ様が私たちの味方だと知って、私たちと敵対するつもりはないようね。」

「美姫と樹はどう考える?」

「そうですね、、、」


(エレナ様とヴァロ様はエンドさんのことに気が付いておられたのですか?)

(無論じゃ。あ奴は気配を消すのが上手いようじゃから、誰一人として気が付いておらんようじゃったがのう。)

(美姫が物理弾頭を持つ魔導弾を撃った時には戦闘に介入しようとしたようだが、俺様を見て最終局面まで静観することを決めたようだったぞ。)

(エンドさんのことは信用してよいのでしょうか?)

(あ奴は隠していることがあるようじゃから、全面的には信用せん方が良いじゃろう。)

(そうだな。しかし、今の美姫と樹ではエンドに太刀打ちできないから、ここは素直にエンドの言い分を聞いておいた方が良いだろう。)


(えっ!?エンドさんはそんなに強いんですか?)

(樹がそう思うのは、あ奴がワレらと対立する気がないことを示すための演技に惑わされておるからじゃ。)

(エンドさんは私たちに気配を悟られずに魔導弾から戦士型竜人を助けられるくらいですから、今の私たちでは勝ち目は無いと私も思います。)

(俺様がいなければ4人は瞬殺されていただろうよ。樹が今生きていられるのは俺様のおかげ、ということだ。クッハッハッー。)


 考えがまとまったところで美姫が答える。


「私はエンドさんに戦士型竜人を渡してしまった方が良いと思います。」

「その理由は?」

「私たちではエンドさんに勝てません。」

「・・・それは本当?」

「はい。ヴァロ様がいなければ、今、私たちは生きてはいないでしょう。」

「そう。。。美姫がそこまで言うのなら私は何も言うことはないわ。」


 クルシフは自分を納得させるように言った。


「(では、この者の処断は私共に任せて頂けますでしょうか?)」

「えぇ、こちらに異存はありません。」

「(ありがとうございます。この者を引き渡して頂く代わりと言っては何ですが、私があなた達を宝玉が置いてある部屋までお連れしましょう。)」


 !?


「何故俺たちの目的を知っている!?」

「(ここ数百年、ここに来たエルフは皆、あなた達が宝玉と呼ぶ物が置いてある部屋に向かっていたようですから、今回もそうではないかと考えたのです。)」

「・・・ならば、俺たちをその部屋まで連れて行く理由は何だ?」

「(私共としてはあなた達に早く帰って頂きたいのです。)」

「そのために宝玉を渡す、と?」

「(はい。あれは私共にとっては重要な物ではありませんから。)」

「・・・。」


「・・・モナルク、どうする?」

「エンドに付いて行けば、門番である岩石巨人や部屋の中にいる守護者と戦う必要はないだろうから願ってもない提案に思えるが、裏がありそうな気がする。」

「えぇ、そうね。宝玉が置いてある部屋の位置は分かっているから別の部屋に連れていかれるようなことはないと思うけれど、部屋の中に多数の竜人を待ち伏せさせているとか。」


「(そんな事は致しません。先程も申しましたように、私共にとっては重要でない宝玉をお渡しして、あなた達に早く帰って頂きたいのです。)」


 クルシフとモナルクの相談を聞いて、エンドさんは”疑われるなんて心外だ”という表情をした。


「(それに王竜様がおられるのです。あなた達に危害を加えるようなことはしないと誓いましょう。)」

「・・・確かに、ヴァロ様がいて下さるので、私たちの安全は保証されていると考えてよさそうですね。」

「うむ。お前たちが害されたときには俺様が迷宮にいる全竜人に鉄槌を下してやろう。クッハッハッー。」

「ありがとございます。」


「(決まりで宜しいですか?)」

「えぇ。」

「(では、参りましょう。)」


 そう言って、エンドさんは戦士型竜人を引きずりながら歩き始めた。

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