26
「そう言えば、一番最初に魔法銃に当たった岩石巨人の拳が砕けなかったっけ?」
「そうよ!拳が砕けるのだから、岩石巨人も削れるはずよ。」
一瞬光明が見えたかと思ったが、
「それは無理だ。」
「そうね。モナルクが魔法で強化できるのは魔力を込められる物だけだから、少ない手持ちの魔道具を確実に当てる必要があるわ。」
「しかし、俺が投げても岩石巨人には当たらないだろう。」
ダメなようだった。
「そうですか。。。」
「残念。」
スッ!スッ!スッ!キャッ!
諦め始めていたクルシフは動きも鈍くなり、岩石巨人の拳を避け切れずに掠らせる。
(クルシフとモナルクの動きが悪くなってきたね。)
(同意。早く岩石巨人を倒す方法を見つけないと、、、)
(美姫と樹は焦っているようだぞ。)
(じゃが、ワレらが答えを言ってしまうと2人は成長せんからのう。)
(しかし、このままだと俺様の仕込みが無駄になってしまうではないか、、、)
(『俺様の仕込み』って、、、そうか!)
(樹、良い案を思い付いたの?)
(肯定。徹甲魔導弾は魔導弾が魔導盾で覆われているから、岩石巨人を削れるはず。)
(魔導盾は物理特性と魔法特性を持ち合わせているんだっけ?)
(正解。だから、物理的な武器が効かない精神エネルギー体の悪魔には”効果が薄い”けれど、岩石巨人には効果があるはずなんだ。)
(いけそうね!)
(ヴァロの余計な一言を切っ掛けに樹は解決策を思い付いてしまったようじゃのう。もう少し2人には悩んで欲しかったのじゃが?)
(余計な一言ではなく、俺様からのささやかなヒントだったのだ。そこから解決策に結びつけた樹を褒めてやるべきだろう。)
(そうじゃのう。今回はそういうことにしておいてやるのじゃ。)
(魔法銃で徹甲魔導弾を撃つのは初めてですから試し撃ちをするので、グレンさん、補助をお願いします。)
(承知しましたな。)
グレンさんの補助を受けて徹甲魔導弾を撃つと、
バコッ!
岩石巨人は避けることなく徹甲魔導弾を受け、左肩を削られた。
「「!?」」
それを見てクルシフとモナルクが目を張る。
「樹、今のは!?」
「徹甲魔導弾です。ちゃんと岩石巨人にも効くようですね。」
「おぉ!しかし、そんな魔法があるのならどうして今まで黙っていたんだ?」
「樹も隠していたわけではなく、徹甲魔導弾の弾頭を形成する魔導盾が物理特性と魔法特性を持ち合わせていることを思い出せないでいただけなのです。」
「そうだったのね。これで希望が見えてきたわ!」
「そうですね。岩石巨人はこちらからの攻撃を避けようとはしないので、樹は徹甲魔導弾を当て放題ですし。」
「樹が魔導弾を2連射していたのは、この練習をするためだったのだな?」
「肯定。」
スッ!スッ!スッ!スッ!
勝てる見込みが出てきたことで、クルシフとモナルクの動きも機敏になる。
(このまま徹甲魔導弾で岩石巨人を削って中の魔石を露出させれば、岩石巨人を倒せそうですね。)
(樹、待つのだ。)
(ヴァロ様、この方法に何か問題でもあるのですか?)
(大有りだ。それだと、魔法銃を最適化した俺様の素晴らしさをエレナに見せつけられないではないか。)
(・・・それって必要ですか?)
(当然だ。勝負事は勝つから面白いのであって、負けっぱなしでは俺様の気が済まんのだ。樹もエレナに吠え面をかかせてやりたいと思わないか?)
(思うか思わないか、と言われると、思いますが、、、)
(そうだろう。だったら、どでかい徹甲魔導弾1発で中の魔石もろとも岩石巨人を削ってやろう。)
(・・・了解。)
反論したところで無駄に終わるだけなのが目に見えていたため、諦めてヴァロ様の案でいくことにした。
「樹、どうした?徹甲魔導弾とやらは撃たないのか?」
「否定。作戦を練っていただけで、次の1発で決めます。」
「1発だと!?」
「肯定。美姫、陽動よろしく。」
「分かった。」
パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!
美姫が跳躍魔導弾も使って岩石巨人の気を引いてくれているうちに、グレンさんに”楯系”魔法の補助をお願いして徹甲魔導弾の発動条件を整え、
(準備完了。)
(樹、ぶちかませ!!)
ヴァロ様の掛け声とともに岩石巨人に向かって巨大な徹甲魔導弾を撃つ。
バシュッーー!!
ズガンッ!!
巨大な徹甲魔導弾は岩石巨人の体に大きな風穴を開けた後、迷宮の壁も削り取る。
「やったか!?」
ズシンッ!
岩石巨人はよろけた後で地面に倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。




