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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
41/688

26

「「失礼します。」」

「美姫ちゃん、樹君、いらっしゃい。さあ、座って。」


 応接室に入ると、亜紀様が待っていた。


「2人とも大丈夫だった?初めてのことだったから驚いたでしょう。何事もなくてよかったわ。」


(『初めてのこと』って龍野家当主ともなるとあんなことが何度もあるのか。)

(龍野家は魔法使い御三家の一つだから、常に狙われていることが普通かもしれないのね。)


「私たちのために治安維持軍を動かして下さった、と聞きました。ありがとうございます。」

「いいのよ。純一から連絡が入ってから裏を取るのに時間がかかって要請が遅れたけど、間に合ってよかったわ。」

「追跡されていると聞いた時には不安になりましたが、純一先生が大丈夫だと言ってくれましたので、気が楽になりました。爆発音が聞こえた時にはドキッとしましたけれど。」

「そう。純一を迎えにやって良かったわ。こんなことは稀にしかないけれど、今回は何か嫌な感じがしていたのよ。私の車を出して正解ね。」

「あの車は亜紀様の車だったのですか。パンクしないタイヤをはいていると聞いて驚きました。」

「他にも特殊装備はあるんだけれど、乗客の安全第一の車だから、安心して乗って大丈夫よ。」

「そんな車を出して頂き、ありがとうございます。」

「いいのよ。美姫ちゃんの安全が最優先なんだから。」



「失礼致します。」


 左衛門さんが紅茶とお菓子を運んできた。


「いい茶葉が手に入ったので、飲んでもらおうと思って用意させたの。いい香りでしょう。」

「いい香りですね。それに美味しい。」

「そうでしょ。左衛門が入れる紅茶を私は気に入っているの。」


 普段飲んでいる紅茶とは違って爽やかな香りがする。


「このお菓子も食べてみて。」

「ほんのり甘くて美味しいです。この紅茶にぴったりですね。」

「美姫ちゃんが来るから、って、珍しく左衛門が作ったのよ。」

「手作りだったんですか?」

「そうなの。この紅茶に合うように材料からこだわって作ったみたいよ。」


 素材から厳選されているだけあって、さすがに美味しい。


「美姫ちゃん、高校生活はどう?純一から報告は受けているけれど、魔法実技も優秀だそうね。」

「いえ、まだまだです。」

「そんなに謙遜しなくてもいいわ。麻紀と圭一の娘だもの、優秀で当然よ。高校生活は楽しい?」

「はい。いろんな人と出会えて楽しいです。この前は大変な目にあいましたけど。」

「麗華さんの件ね。2人とも無事でよかったわ。六条家にはきつく言っておいたけれど、次は何かされる前に相談してね。もし、今度美姫ちゃんに何かしたら実力行使も考えなくっちゃ。」


(ワレは次”も”実力行使するがのう。しかも容赦なく。)


 エレナ様が物騒なことをつぶやいた。


「ありがとうございます。亜紀様からの抗議があったので、麗華さんは1ヶ月の停学処分になったんですね。」

「あの麗華さんが停学処分になるなんて、と周りが驚いていました。」

「やんちゃなお嬢さんだとは思っていたけれど、龍野家に火の粉が飛んでこないうちは六条家内の問題だから関わっていなかったのよ。今回は六条家に厳正な処分を要求したから、彼女にとってもいい薬になったんじゃないかしら。」

「そうだといいんですが。」


「それでね、今回の騒動は麗華さんが六条家本家筋で美姫ちゃんが龍野家分家筋、しかも美姫ちゃんは高校を卒業したら分家筋ではなくなるから麗華さんが美姫ちゃんに強く出た、というのが原因だと私は思うのよ。」

「美姫さんが分家筋ではなくなる、ってどういうことでしょうか?」

「あら、樹君は知らなかった?純一から教えてもらっていないの?」

「はい、まだそこまでは。」


「樹君、分家筋というは、本家筋じゃなくなってから3世代までしか名乗れないのよ。4世代目からは庇護期間が終わると名落ちして、滝川姓になるの。」

「成程。知らなかった。」

「私の家は母の代で龍野ではなく滝川になるはずだったんだけど、父が大戦で活躍したから特例で1代だけ龍野を名乗ることを許されていたのよ。だから、私は高校を卒業して庇護期間が終わると滝川美姫になるの。」


「そうなのよね。今は私が圭一の代わりに美姫ちゃんを庇護している、という形になっているけれど、美姫ちゃんが滝川に名落ちしてしまったら、私が美姫ちゃんにしてあげられることも少なくなるわ。だから、、、」


 亜紀様は一呼吸置いた。


「美姫ちゃんに私の娘にならない?」


 えっ!?


「私が亜紀様の娘に、ですか!?」


 いきなりの提案に美姫さんも驚いて声が上ずっている。


「正確には美姫ちゃんを私の養女として引き取る、という事ね。」

「はい。でも、どうして?」

「圭一がいなくなってしまってしまったから、美姫ちゃん1人になってしまったでしょ。その上、滝川に名落ちしてしまったら龍野家の人間じゃなくなるじゃない。そうなると、私も美姫ちゃんを今と同じようには守ってあげられなくなるわ。」

「私なら1人でも何とかやっていけると思います。」

「ううん。今後、美姫ちゃんに敵意を向けてくるのは麗華さんだけとは限らないわ。それに、美姫ちゃん1人では対処できないこともでてくるでしょう。その時、私が美姫ちゃんに何もしてあげられない、なんて耐えられないわ。

 だから、美姫ちゃんを守ってあげるには私の娘になってもらうのが一番いいと思ったのよ。このことを私から美姫ちゃんに直接伝えたくて、今日来てもらったの。」


 美姫さんも戸惑っているようだった。


「戸惑うのも無理はないわね。突然のことで驚いたでしょう。それにね、今、私には子供がいないから、美姫ちゃんが娘になってくれたら私もすごくうれしいの。」

「それはありがたいお話なのですが。。。」

「今すぐにという話でもないから、じっくり考えて答えを聞かせて頂戴。」

「はい。。。」


(なにやら美姫を脅しておるような感じじゃったな。)

(エレナ様もそう感じましたか。僕も同じです。)

(私は平穏に暮らしていきたいのに。)

(美姫さんは英雄の娘だから、嫉妬やらなんやらで敵意を向けられることはあるかもしれないけれど、亜紀様に守ってもらわなければならないほどのことはないはず、、、いや、そうか。)

(樹君、何か分かったの?)

(亜紀様に直接聞いてみるよ。)

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