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竜の女王  作者: M.D
2172年夏
407/688

14

 階段を昇りきった先にある扉をあけると、近未来感のある光景が目に飛び込んできた。


「おぉ、凄い!」

「人工的な構造物の周りを草木が覆っていて、自然と調和した美しい街ね。」

「でしょ。ナン・エルファラリス王国は科学技術と文化遺産の融合を国是としているから、自然に溢れた街であるにも関わらず現代的な暮らしができるわ。それを良しとしない国もあるけれど。」

「エルフの国の中で機械帝国と接する国境が最も長い国がナン・エルファラリス王国だからな。他の国に文句を言われる筋合いはない。」

「一番文句をつけてくるのは創始国ゴドルエルフィンなのだけれど?」

「俺はもうナン・エルファラリス王国のエルフだと思っているから、かの国の言動に反発もするさ。それに、王都エルフィアでの生活は快適で気に入っているしな。」

「ふふふ。そう。」


 話をしながら扉の近くにある宿泊施設が入っている建物の中に足を踏み入れると、


「モナルク・ダーレー・バイアリー・ゴドルエルフィン殿下、クルシフ・ナン・エルファラリス殿下。お待ちしておりました。首長より出迎えができないことを謝罪する伝言を預かっております。」


 女性エルフがお辞儀をして僕たちを迎えた。


「分かったわ。突然だけれど、1日だけ宿泊するから、よろしくね。」

「畏まりました。」

「それから、美姫と樹は魔力の波動が登録されていないから、手続きをして頂戴。」

「・・・見たところ人間のようですが?」


 女性エルフは僕たちの方を怪訝そうな顔で見たが、


「はっ!?」


 ドラゴンと妖精の姿をみて目を見張った。


「そういうことよ。2人は王竜と妖精に認めれられているわ。それに魔法も使えるから魔力も持っているし、魔力の波動の登録も出来るはずよ。」

「畏まりました。こちらにどうぞ。」


 女性エルフに付いて行くと、情報端末のようなものを持ち出してきた。


「人間が魔力の波動の登録を行う際にはエルフの紹介者が必須ですが、どちらがなされますか?」

「私がするわ。」

「畏まりました。では、こちらにお願い致します。」


 クルシフが情報端末に手をかざす。


「ありがとうございます。では、美姫様からどうぞ。」

「えーっと、どうすれば良いのでしょうか?」

「端末に手をかざして魔法を発動しようとすればいいわ。」

「分かりました。」


 美姫が情報端末に手をかざして魔力の波動の登録を行い、続いて僕も同様に登録を行った。


(魔法の腕輪を着けた時のように僅かに魔力を吸収されるのを感じたけれど、魔力の波動ってこうやって登録するのか。)

(エルフは魔法を使うときに魔法の腕輪を必要としていないようだけれど、こんな仕組みを作っていることを考えると、人間が魔法を使えるようにする魔法の腕輪のような道具もあるのかもね。)

(時間があったら探してみる?)

(そうね。でも、私たち、ここで使えるようなお金を持ってないから、あっても買えないよ。)

(・・・残念。)


「これで、美姫と樹も魔力の波動の登録されたけれど、2人が罪を侵したら紹介者の私も罰せられるから注意してね。そんなことはしないと思うけれど。」

「分かりました。」

「了解。」

「それじゃ、部屋に行きましょう。」


「ご案内します。」


 女性エルフが先導する形で建物の中を進み、とある扉の前で立ち止まる。


「こちらになります。御用がございましたら何なりとお申し付けくださいませ。」

「ありがとう。」


 扉をあけて部屋に入るなりクルシフはベッドに倒れ込んだ。


「あぁー、疲れたわー。」

「王女とあろうものが、そんな格好で寝転ぶなんて行儀が悪いぞ。」

「ここは私たちしかいないのだからいいのよ。それにモナルクだって品のない格好よ。」


 モナルクもソファーにだらしなく座っている。


「俺も疲れたからな。」


「そう言えば、この部屋の鍵とか受け取ってなかったね。」

「肯定。王族が泊まるような部屋だから、警備も万全で鍵をかける必要がないのかも。」

「違うわよ。というか、2人は人間至上主義を掲げる国を出たばかりだから、魔力の波動が鍵の役割をしているのを知らなかったのね。部屋の扉に感知器があって、それで魔力の波動を読み取っているから物理的な鍵は必要ないのよ。」

「クルシフの言うように建物や部屋の入り口、物の購入や情報の閲覧など、エルフの国では認証が必要な場面では魔力の波動が使用されるんだ。だから、魔力の波動の登録をしていないと、生活に相当苦労するだろう。」


(エルフの国では魔力の波動で個人を特定して、それを鍵として認証を行っているのね。)

(上手い仕組みだ。)

(そうか?この世に存在する全ての者の精神エネルギーの波動は異なっているのだから、俺様としては精神エネルギーの波動を使って判別を行うのは至極当然のことのように思えるが?)

(人間は精神エネルギーを無秩序に垂れ流すばかりで、今でも一部以外は使用できておらんから、そういう発想自体できないのじゃろう。しかし、人間も精神エネルギーを使えるようになってきたから、その内できるようになるかもしれんのう。)


「そう考えると、御二人に出会えた僕たちは幸運だったのですね。」

「そうでもないぞ。」

「そうなのですか?」

「人間が魔力の波動の登録を行おうとすると、まずはエルフの紹介者を見つける所から始めないといけないから大変なんだけれど、美姫と樹は王竜と妖精に認められているから、2人の紹介者になりたいエルフはすぐに見つかるわ。」

「だから、逆に2人に出会た俺たちの方が幸運なくらいだ。」

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