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(エレナ様!お久しぶりです!)
ザグレドが出てきて、感動した声で叫ぶ。
(ほんの少し離れておっただけじゃろう。それを久しぶりとはザグレドは大袈裟な奴じゃのう。)
(竜族の感覚では3ヶ月は短いでしょうが、地球時間では結構な長さなのです。)
ザグレドが出てきたことでエレナ様はヴァロ様との話を切り上げ、僕たちに話しかけてきた。
(美姫、樹、グレン。息災じゃったかのう?)
(はい。エレナ様もお元気そうで何よりです。)
(無事に天界に戻ってシィルさんにしごかれているのは良かったです。)
(相変わらず樹は一言多いのう。)
(エレナ様が来て下さって助かりましたな。)
(肯定。エレナ様が来てくれたから、思ったよりも早く地球に戻れそうだ。)
(そうね。クルシフとモナルクには悪いけれど、迷宮探索には行けそうにないね。)
(もう遅いから2人には明日の朝に別れを告げよう。)
(そうしましょう。)
(迷宮探索じゃと?)
エレナ様が”迷宮探索”という単語に反応したので、
(そうなんです。ヴァロ様は僕たちに迷宮探索をさせたいがために、惑星ヴァロに連れて来てエルフに引き合わせたそうなんです。)
チラッと幼竜の着ぐるみを来たヴァロ様の方を見て言った。
(ヴァロが美姫と樹を惑星ヴァロに連れて来た理由はそれじゃったのか。)
(そうだ。エレナも2人を惑星ヴァロに連れて来るつもりだったのだろう?だから、いい機会だと思って、俺様が連れて来てやったのだ。クッハッハッー。)
(惑星ヴァロには”ワレ”が2人を連れて来てやるつもりだったのじゃ。それに、無理矢理連れて来られて2人も迷惑をしておるのが分からぬのかのう?)
(ん?そうなのか?)
(・・・。)
(・・・。)
美姫と僕は無言で答えた。
(ほれみるのじゃ。美姫と樹は一度ワレが地球に戻して、改めて惑星ヴァロに連れて来てやるのじゃ。)
(俺様とエレナの仲じゃないか。そんなこと言わずに、いつものようにエレナも一緒に冒険しないか?)
(何が『俺様とエレナの仲じゃないか』じゃ。ヴァロのせいでワレはいつもシィルにお小言を言われるのじゃぞ。)
(それでは本当にいいのか?エルフの王女が迷宮探索を行うのは百年に一度しかないのだぞ。この機会を逃せば美姫や樹と迷宮探索という冒険をすることはできないのだぞ?)
(・・・。)
ヴァロ様の言葉を聞いてエレナ様は考え込んでしまう。
(エレナ様、ヴァロ様の甘言に惑わされてはいけません。)
(はっ!そうじゃった、、、)
そんなエレナ様に美姫が忠言するが、
(エレナも、いつぞやか『エルフの王女による迷宮探索とは興味深いのう。一度同行したいものじゃ。』と言っていたではないか。)
(そんなことを言った覚えがあるのじゃ、、、)
と、ヴァロ様もエレナ様の心を揺さぶる。
(エレナ様、このまま迷宮探索に同行するとシィルさんから、ヴァロ様と遊んでいた、と怒られるんじゃないですか?)
(そうじゃ。ワレはヴァロを連れ戻しに来たのじゃった。しかし、、、)
エレナ様の魂の器になっている妖精の目が、美姫と幼竜の着ぐるみを着たヴァロ様を交互に見つめる。
(エレナ、やって後悔するよりやらずに後悔する方がずっと辛いぞ。それに、俺たちは八竜王だ。シィルやキルカなどに俺たちの行動を縛ることは出来ない。)
そんなエレナ様の様子を見て、ヴァロ様がニヤリとしながら言うと、
(そうじゃ。ワレの行動はワレが決めるのじゃ。)
(ならば、選択肢は一つ、エルフの王女による迷宮探索に同行するということで良いのだな?)
(無論じゃ。)
遂にエレナ様はヴァロ様の甘言に陥落した。
(はぁ、、、エレナ様が来たから地球に帰れると思ったのにね、、、)
(同感。まさかミイラ取りがミイラになるとは、、、)
(美姫さん、樹君。エレナ様の性格からしてこうなることは必然だったと考えて、諦めるしかないのですな。)
(そうですが、グレンさんもエレナ様を諭してくれても良かったのではないですか?)
(エレナ様1人であればワシらの忠言も届くでしょうが、今回はヴァロ様がおりました故、ワシではヴァロ様の思惑を阻止することはできないと考えたのですな。)
(そうだ。無駄なことを言ってエレナ様の不興を買うのは得策ではない。しかし、エレナ様はオレたち下々の言葉にも耳を傾けて下さっていたことも、また確かだ。オレが第6王領にいた頃も――――)
またしてもザグレドがエレナ様を褒め称え始めるが、ザグレドはエレナ様のことがどれだけ好きなのだ?
(エレナよ、迷宮探索に同行するとして、そのまま妖精を魂の器として使うのか?地球では美姫と魂の結合をしていたのだろう?)
(そうじゃのう、、、美姫の中には今はワレが作った擬魂があるからのう、、、それを押しのけるのものどうかと思うのじゃ。)
(ワレのことはエレナ様が気になさることはないのジャ。)
(そう言ってくれるのは有難いのじゃが、今までは美姫の中からしか世界を見られなかったから、外から美姫たちを眺めるのも一興じゃしのう、、、)
(ならば、俺様と同じようにドラゴンの着ぐるみを着るか?これは中々いいぞ。)
(嫌じゃ。ドラゴンの着ぐるみを着るくらいなら、この妖精の姿でおる方が百万倍良いのじゃ。)
(そこまで言わなくても、、、)
(ワレはこのまま美姫と樹に付いて行くのじゃ。)
こうしてエレナ様が迷宮探索に同行することになったのだった。




