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竜の女王  作者: M.D
2172年夏
403/688

10

 夕食後しばし歓談をしていたが、クルシフとモナルクは眠くなったと言って環境道具の中に入っていった。


「樹は眠くないの?」

「肯定。いつもだったらまだネットしている時間だし。美姫は眠いんじゃない?いつも早めに寝るでしょ。」

「またそれを言う。私も今日は目が覚めてまだ眠くないの。こんなところに来てしまったから、気分が高ぶっているのかもね。」

「その感覚は分かる。それじゃ、もう少し話でもする?」

「そうね。そうしましょう。」


(俺様も2人が眠くなるまで話に付き合ってやるぞ。)


 それまで、僕たちの話を興味深そうに聞いていたヴァロ様が意思伝達で会話に入ってきた。


(ヴァロ様は普通に話せるのに意思伝達で会話しようということは、クルシフとモナルクに知られたくない話題でもあるのでしょうか?)

(いや、俺様からは無いが、美姫と樹にはあるのではないかと思ってな。俺様に聞きたいことがあれば質問するといい。何でもとはいかんが答えてやるぞ。)


 ヴァロ様は含みのあるようにニヤリとしながら言った。


(美姫はヴァロ様に聞きたいことってある?)

(そうね、、、そう言えば、クルシフとモナルクに言葉が通じているし、袋に書いてある文字も読めているのは不思議じゃない?)

(確かに。惑星ヴァロの公用語は日本語な訳ないのに。)

(それはギレナとザグレドに現地語の翻訳をさせているからだ。そのための知識は俺様が授けてやったのだから感謝するといいのだ。クッハッハッー。)


(ギレナ、そうだったの?)

(はい。美姫と樹に違和感なく惑星ヴァロでの冒険を始められるよう、ワレらの自己紹介をした後にヴァロ様からコッソリ現地語の知識を頂いたのジャ。)

(全然知らなかったよ。教えてくれても良かったんじゃない?)

(ヴァロ様は2人がそのことにいつ気が付くのか楽しみにしておられたから、ワレらから教えることは出来なかったのジャ。)


(そうだぞ。俺様はいつかいつかと待っていたのに全然気が付くそぶりがなかったから、このままずっと気が付かないのかと思っていたところだったのだ。)

(それで、『聞きたいことがあれば質問するといい』と言って私たちに気付きを促したのですね。)

(そういうことだ。2人は鈍感すぎるのではないか?)

(そんなことはありません。突然、惑星ヴァロに連れてこられてクルシフとモナルクを助けに行ってから今まで怒涛の展開でしたから、そのことに気が付く余裕なんてなくなる、というものです。)

(このくらいで余裕をなくすなど、人間とはいと小さきものだな。)

(それはヴァロ様と比べれば人間なんてちっぽけな存在でしょうけど、、、)


 そんな会話をしていると、背中に葉っぱのような羽を持った妖精が近づいてきた。


(あれはヴァロ様の幼竜の着ぐるみを持ってきた妖精だったっけ?)

(違うんじゃない?こっちに来るということは、私たちに何か用でもあるのかな?)

(あ奴はチーではない。それに俺様は妖精に頼み後などしていないし、用があったとしても近づいてくる必要はないはずだ。)

(では何事でしょうか?)

(分からぬが、良からぬことだろう。)


 妖精は真っ直ぐ僕たちの方に向かってくる。


(おい!妖精の分際で俺様たちの会話の邪魔をするとは無礼だぞ!)

(・・・。)


 威圧感を込めたヴァロ様の言葉にも妖精は無言で動じることはない。


(そこで止まれ!止まらぬのなら容赦はせぬぞ!)

(・・・。)


 ヴァロ様が警告を発したところで妖精が瞬間的に速度を上げ、


 バコッ!


「ぶへらっ!」


 ヴァロ様にグーパンを叩き込んだ。


(何をする!?)

(『何をする!?』ではないのじゃ。美姫と樹を惑星ヴァロに連れてくるなど、ヴァロの方こそ何を考えておるのじゃ!)


 えっ!?


 妖精からエレナ様の声が聞こえる。


(まさか、エレナか!?)

(そうじゃ。魂の器として妖精に体を貸してもらっておるのじゃ。)

(何故ここにいる?)

(それは、ヴァロの秘書官であるキルカからの要請を受けて探しに来たからに決まっておるじゃろう。)

(ちっ、俺様がいなくなったことがキルカにもう露見したのか。今回はやけに早いな。)

(それは今回はヴァロの単独犯だからじゃ。ヴァロは偽装工作が下手じゃからのう。)

(悪知恵はエレナの方が働くからな。)


(それで、どうせヴァロのことじゃから美姫と樹に興味を持ってちょっかいを出しに行ったのじゃろうと思ったのじゃが、まさか惑星ヴァロに連れてきているとはのう。)

(ちっ、精神エネルギーの痕跡を残さないように転移したのだが、2人を惑星ヴァロに連れてきたことまですぐに割り出されるとはな。)

(だからヴァロは偽装工作が下手だと言ったじゃろう。ワレにかかればそのくらいすぐに分かったのじゃ。)


 蛇の道は蛇、ということか。


(それにしても、グーパンで殴ることはないだろう?)

(逆にグーパンで殴られるくらいで済んで感謝してほしいくらいじゃ。ワレがシィルに監視されて泣きながら仕事をしている時にキルカがやってきて『ヴァロ様がいなくなられてしまったのですが、今回はエレナ様と遊ばれているようではなさそうですね』などと言うから、シィルが過去のことも思い出して、漸く終わりそうだったのに仕事を追加されたのじゃ。)

(それは自業自得、、、)


 ヴァロ様の言には僕も禿同だ。

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