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竜の女王  作者: M.D
2172年夏
402/688

09

 話が終わるころには日が陰り始めていた。


「歴史の授業はこれで切り上げて、野営の準備をしようか。」

「そうね。水場も近くにあるようだし、ここなら警報機を設置すればある程度安全も確保できそうだから、そうしましょう。美姫と樹もいいかしら?」

「はい。でも、野営して寝ている間に軍用機械犬に襲われたりしませんか?」

「警報機は魔獣や機械帝国の機械兵が現れたら警報を発すると同時に、態勢を整えられるように一時的な魔力壁を発動させてくれるから大丈夫だ。」

「そのために設置時に警報機に結構な量の魔力を貯めておかないといけないから、美姫と樹も充魔するのを手伝ってね。」

「分かりました。」


(魔力を貯めるから、充電ならぬ充魔なのね。)

(魔力貯蔵具みたいなものが警報機にはあるのかも。)

(そうだと思う。それから、クルシフが『機械の動力源がエルフや人間の魔力から変換された電気』って言っていたし、魔力から電気に変換する装置もあるんじゃないかな?)

(それなら、その装置をコッソリ地球に持って帰ったら大発明をしたことになって、特許料でガッポリ儲かったりして。)

(樹、ズルはダメよ。)


「それから、野営道具一式は2人用だから、美姫と樹は自力で野営をしてくれ。君達2人は何も持たずに修行していたのだから、野宿くらい普通だろう?」

「申し訳ないけれど、私も野営道具なしで野宿するのは勘弁してもらいたいかな。」


 クルシフとモナルクは野営道具の使用を譲る気はないようだ。


(2人は王族だから、野宿なんてしたくないんだろうね。)

(同感。僕は野宿してもいいと思うけど、美姫はどう?)

(あの時に非常用品も拾っておいたから、1日くらいだったら野宿でも大丈夫よ。)


「僕たちはそれで構いません。」

「そうか。済まないな。」


 そう言って、モナルクは野営道具の展開を始め、


「美姫は私と水を汲みに行きましょう。」

「はい。」



 美姫とクルシフが水場に水を汲みに行ったので、手持ち無沙汰になった僕はモナルクに野営道具について尋ねた。


「野営道具はどのような物なのですか?」

「これか?いくつかの道具を小さくまとめた物だ。例えばこの環境道具は周囲を魔力の膜で覆うことで、温度や湿度など環境を整えてくれる道具だ。虫なんかも中に入って来ないから、これ無しで眠るとか俺たちには有り得ない。君達は環境道具なしでよく平気だな?」

「慣れですかね。」

「そうか。環境道具は2人用だから美姫と樹を入れてやるわけにはいかないが、衛生道具はまだ何度か使えるから、使ってもいいぞ。」

「ありがとうございます。衛生道具はどのような物なのですか?」

「膨らませてから中に入ると、噴射される魔力の霧によって体や服についた汚れを落として、ついでに小さな傷なんかだったら治療してくれる道具だ。」

「便利ですね。」

「人間至上主義を掲げる国ではこういった魔力を使う道具は禁止されているから、樹が珍しがるのも分からなくないな。」



 しばらくして美姫とクルシフが戻ってきた後、衛生道具で体や服についた汚れを落としてから食事をすることになった。


「どれにしようかな?」

「昨日は魚だったから、今日は牛にでもするか?」


 クルシフとモナルクは複数の袋に入った板状の携帯食料を机の上に取り出して、どれにするか悩んでいた。


「これを食べるんですか?」

「そうよ。あなた達はこれを見るのは初めて?人間至上主義を掲げる国にもあるはずだけれど?」

「はい。初めてです。」

「そう。そもそも国の外に出ないから、非常食として備蓄されているだけなのかもしれないわね。なら、実演してあげるわ。このままではなくて、こうするの。」


 クルシフが封を切って皿に入れた板状の携帯食料に水場から汲んできて浄水した水をかけると、ムクムクと膨らみ、パンとビーフシチューになった。


「おぉ!」

「水をかけると元の姿に戻るだけでなく、元に戻す際の自己発熱で食べるのにちょうどいい温度になるのよ。」

「凄いですね。外で食べる食事には見えないです。」

「そうだろう。今まで魔獣を狩って食べていたのだろうが、それと比べてもらっては困る。さぁ、美姫と樹も好きなものを選ぶといい。」

「うーん、、、」


 迷った挙句、僕は無難にカツカレー、美姫はサーモンソテーを選んだ。


「「頂きます。」」


 一口食べたカレーは東京で食べた味とほとんど同じだった。


「普通に美味しい。」

「樹が選んだのカツカレーか。長らく庶民の味として親しまれてきたが、最近はナン・エルファラリス王国の王族や貴族の間でも食べる者が増えてきたようだ。俺もナン・エルファラリス王国に来てから何度か食べたこともあるが、なかなかいけたぞ。」

「モナルクったらカツカレーを食べに行く時に私を誘わなかったのよ。酷いと思わない?」

「それはどうなのでしょうか?」

「同意。カツカレーを食べに行く時に女性は誘わないような気が、、、」


「ほらみろ、クルシフ。2人が言っているとおりだ。俺が君を故意に誘わなかった訳ではないことが証明されたぞ。」

「分かったわ。私は携帯食料でしか食べたことがないから、迷宮探索が無事に終わったら料理長に作ってもらうことにするわ。」

「カツカレーって、そこまでして食べたいものかな?」

「まぁ、脂と炭水化物の組み合わせだから、病みつきになる味ではあると思う。」


 その後も何故かカツカレーの話題で盛り上がったのだった。

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