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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
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25

「恐らくこの車を狙った攻撃だろう。」

「本当ですか?」

「あぁ。対向してくるトラックにぶつかるようなタイミングで遠操機が車の右後輪をパンクさせようとしたんじゃないかな。」

「タイヤに当たらなくて助かりましたね。」

「いや、当たった。」


 えっ!?


「表示によると右後輪のタイヤに異常があるようだから、先程も何かがタイヤに命中したんだろうね。この車のタイヤはパンクしないから、後2、3回同じところを狙われない限り、大丈夫だ。」

「パンクしないタイヤですか?」

「そう。第一次悪魔大戦で地球上の施設や工場が破壊されて技術の継承ができなかったことと、人口が急減して技術の発展が一部の技術に限られてきたから、タイヤについても第一次悪魔大戦前からほとんど進化していなかったんだけれど、最近空気の代わりに樹脂の柱で支えるタイヤが開発されたんだ。この車はそのタイヤを装着しているんだよ。」

「この車に乗る前に外から見たはずなのに、新型のタイヤだったなんて全然気が付きませんでした。」

「私も気が付きませんでした。」

「旧型のタイヤに偽装しているから見分けがつかなくても当然。旧型のタイヤだと思わせておいたほうが、何かと都合がいいからね。」

「そこまで考えられているなんて、念が入っているんですね。」

「美姫さんを守るためだから、このくらいは当然。」


「でも、今回はトラックにぶつからなかったからよかったですけど、 次がないとも限らないし、スピンして壁に激突して車が大破とか。。。」

「樹君、怖いことを言わないでよ。」

「この車は壁に激突する程度では壊れないから大丈夫。それに、衝撃吸収も考えられているから、たとえぶつかったとしても、怪我することはないはずだ。」

「そんな装備まであるんですか。」

「すごい車に乗せてもらっているんですね。」

「美姫さんの安全のためだ。」


 ピカッ


「また光った。」

「ちょうどカーブだったから、今回は壁に激突させようとしたみたいだ。樹君の予想が当たったな。」

「まぐれですよ。」

「今回はまぐれだったかもしれないけれど、先のことを予想しながら行動することは重要だと思うよ。」

「はい。」


「敵さんも、そろそろこの車のタイヤがパンクしないことに気が付きそうな頃だな。」

「そうですね。さすがに2回も空振りだと、気が付くかもしれません。」

「次はどうでてくるんでしょうか?」

「恐らく、遠操機が体当たりでもしてくるんだろう。爆薬でも積んでいて、追跡しているのがばれていることも分かっているだろうから、証拠隠滅もかねてこの車を爆破させようと考えてもおかしくない。」

「誘拐をあきらめて最終手段にでる、ということですか?」

「そういうこと。もう少しで龍野邸につくんだが。」


 ドーン! 


 突然爆発音が響いた。


「ようやく、撃墜してくれたか。」

「今の音って追跡していた遠操機が撃墜された音なんですか?」

「魔法の遠距離射撃によって遠操機を撃墜した、という連絡が今あったから、間違いない。」


 純一先生は耳の中の情報端末を指さしながら答えた。


「遠操機を見つけたときに龍野家に緊急信号を送っておいたから、治安維持軍が龍野家の要請によって訓練の一環として出動したんだと思う。」

「治安維持軍、ですか?」

「魔獣が出た時に備えて待機している部隊を、訓練と称して動かしたんだろう。実際、突然の出来事に対応することは重要だから、たまにこうやって出動するのを治安維持軍としても拒んでいるわけでもないし、龍野家から謝礼も貰えて一石二鳥だしね。」

「政府公認ということですか?」

「東京の安全を脅かす敵対組織に対して、という制約はつくけれど。治安維持軍も平時にはただお金を浪費するだけの組織だから、政府としても組織を維持していくための費用を少しでも賄いたいわけだし。」

「持ちつ持たれつ、ですね。」

「そういう事だ。さて、もうそろそろ到着するから、魔法連合国の話の続きは今度の補講の時にでもしよう。」

「はい。」


 高い壁の手前にある検問所で車を降りた。


「ここで、身体検査を受けると中に入れる。基本的に手荷物はここで保管されるが、水や食べ物は没収される。」

「だから、亜紀様の手紙にお土産は不要と書いてあったんですね。」

「そういう事。全ての土産に対して毒の検査をするより捨てたほうが手間が省けてよいからね。身体検査はあの装置で行う。」

「厳重ですね。」

「爆弾や暗器を身に着けて入ってくる輩もいるからね。念のため、全員ここで身体検査を受けることになっているんだ。」



「では樹様、どうぞ。」


 装置に入って身体検査を済ませて壁の中に入ると、そこには東京シールド内とは思えない広々とした庭が広がっていた。


「地上に家があるんですね。」

「それに庭が広い。」

「都市国家東京の地上部は人工光合成を行って食料や油を生産するために太陽光を集めないといけないから工場が必要になるけれど、それにも関わらず地上に広い屋敷を構えられるということは、それだけ龍野家が大きい力を持っていることを示すことにつながるんだ。」

「力を示す必要があるんでしょうか?」

「魔法使いの世界にもいろいろしがらみがあるからね。見下されないようにするためにも必要なことなんだよ。それがいいか悪いかは別として。」

「面倒なことですね。」


 屋敷の玄関では執事の流川左衛門さんが待っていた。


「検問所からの連絡を受けてお待ちしておりました。さぁ、こちらへ。」

「ここからは左衛門様について行ってくれ。」

「先生は来ないんですか?」

「私には許可が出ていないから、ここから先にはいけないんだよ。君達が出てくるまで、ここで待っているから。」

「そうなんですか。」

「美姫様が気になさる必要ありません。ここで待つことも純一の領分ですから。」

「そういうことだ。亜紀様がお待ちだから、早く行った方がいい。」

「はい。」


 僕たちは左衛門さんについて屋敷の中に入った。

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