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竜の女王  作者: M.D
2169年秋
4/688

04

 検査が終わって病室に戻ってきた後、


「検査の結果はどうだった?」


 と、隣の美少女が尋ねてきた。


「崖から落ちた時の擦り傷以外は今のところ問題ないみたい。2日間も眠ってた原因は分からないそうだけど詳細な結果が出てから判断する、って。」

「そう。問題なくて良かったね。」


(ワレが神経系をズタボロにしたために回復に時間がかかったことが2日間も眠ってた原因、などとは思わんじゃろうかならな。)

(そうですね。)


 なんだか、頭の中で声が聞こえる。周りを見渡すが、誰もいない。


「声が聞こえた気がしたんだけど、気のせいかな。」


(気のせいではないのじゃ。)


「うわっ!」

「どうしたの?」

「何でもない。」


 頭の中で声が聞こえなんて、崖から落ちた時に頭を打っておかしくなってしまったんだろうか。


「そういえば、森林君にはエレナ様の声が聞こえるようになっているのを話し忘れてた。」

「エレナ様?」

「そう。自己紹介が遅くなったけれど、私は龍野美姫。そして私の魂と結合しているのがエレナ様。森林君とエレナ様は”魂の絆”でつながっているからエレナ様の声が聞こえるの。」

「魂と結合?魂の絆?」


 意味が分からない言葉に混乱する。


(美姫。普通の人間に唐突にそんなことを言っても混乱するだけじゃろう。)

(そうですね。すみません。)

(詳しくは追々話すとして、今はワレのことを簡単に説明しよう。)


 また、頭の中で声が聞こえる。それに、話についていけない。


(ワレは人間の言葉でいうと、、、そうじゃな、神に当たる存在じゃ。)


「神!?」


 思わず大きな声をだしてしまった。


「声に出さなくても、心の中で言えばエレナ様に聞こえるよ。森林君とエレナ様は”魂の絆”でつながっているから、思うだけで会話できるの。」

「そうなの?」

「心の中で何か言ってみて?」


 なんだかもう分けがわかならいため、素直に従ってしまう。


(神ってどういう意味ですか?)

(文字通りの意味じゃ。ワレは人間を作った存在の一部なのじゃ。)


 通じた。


(人間を作った?)

(地球上の生物の進化を操作して人間を作ったのはワレら竜族なのじゃ。それで、小規模な”魔族の飢餓”が始まる兆候を見つけたから、様子を見るために地球に降りようとしたのじゃが、一瞬の隙をつかれて裏切りにあい、ワレの”魂の器”が傷ついてしまったのじゃ。)

(魔族の飢餓?魂の器?)

(魔族の飢餓については後で話すとして、まずは魂の器について説明しようかのう。人間の魂が肉体を器としているように、ワレらも精神世界である天界から物質世界である地球に降りてくるときには器の中に入っている必要があるのじゃ。それが魂の器じゃ。)


(魂は実在する、と言っています?)

(魂とは概念上にのみ存在し得るものであって、実際には精神エネルギーの集合体、というところかのう。)

(精神エネルギーですか。また分からない言葉が出てきた。)

(最初は知らないことが多いのは止むを得まい。今は精神エネルギーは人間が思考をする際に産み出されるエネルギーじゃと思っておって構わんのじゃ。)

(はぁ。)


(それで、時空の狭間を通るときに魂の器についた傷から精神エネルギーが漏れ出してしまって、地球に降りたときには精神エネルギーが少なくなっていてのう。別の器を探しているときに、精神エネルギーが多い人間を見つけて魂の器として中に入っていたのじゃが、その人間が美姫の母親だったのじゃ。

 そのうちに美姫が母親に宿ったのじゃが、美姫はワレと魂の結合ができる魂の持ち主じゃったから、美姫と魂の結合をして天界へ帰るための精神エネルギーを得る方法を探しておるところなのじゃ。)

(すみません。言っている意味がほとんど分かりません。)

(すぐに分からんでもよいのじゃ。それで、美姫の魂と結合をしたのはよいが、美姫は生まれつき心臓が弱くてのう。最近はもう弱りきって止まる寸前たったのじゃ。ワレも何とかしてやりたかったのじゃが、美姫だけでは演算領域が少なくて治せんかったのじゃ。)


(それが僕となにか関係があるんでしょうか?)

(これから関係してくるから、焦るでないのじゃ。美姫だけで演算領域が足りないのであれば、他の人間の演算領域と合わせて使うしかないのじゃが、そのためには美姫以外の人間とワレが魂の絆を結ばねばならんのじゃ。

 ずっとワレと魂の絆を結ぶことのできる人間を探しておったのじゃが、見つけられなくてあきらめかけていたのじゃ。しかし、偶然、樹を見つけてのう。相性を調べたところ魂の絆を結ぶのに十分で、しかも崖から落ちたことで都合の良いことに意識を失っておったから、すぐに魂の絆を結んで美姫の治療をしたのじゃ。)

(森林君には感謝しています。ありがとう。)

(その際に、樹の神経系に無理やり精神エネルギーを流したものじゃから神経系がズタボロになってしまって、それを修復するために2日間の眠りが必要だった、という訳じゃ。)



「どう?少しは私たちのことを分かってくれた?」

「うーん、、、一応筋は通っている気がするけど、丸め込まれたという気もする。それに、エレナ様っていう存在が怪しい。」


(なんじゃと!ワレのことを疑っておるのかのう?ならば、信じさせてやるのじゃ。)


「痛っ!」


 体中に電流が走ったような痛みが広がる。


(どうじゃ?樹の神経系に軽く精神エネルギーを流してみたのじゃが、こんなことがワレ以外にできると思うかのう?)

(ベッドに何か仕掛けがあるのかも?)


 ベッドから降りて、ベッドを調べてみるが、何も見つからない。


(まだ疑っているようじゃから、信じると言うまで精神エネルギーを流し続けてやろうかのう。)


 ベッドに触れていないにも関わらず、再度電流が走ったような痛みが広がる。


「痛い、痛い!分かりました、信じます、信じます!」


(なんじゃ、もう降参かのう。もう少し我慢すると思ったのじゃが、情けないのう。)

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