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竜の女王  作者: M.D
2172年夏
395/688

02

「ここは?」


 ドラゴンが包んでいた手を放して僕たちを地面に降ろすと、目の前には一面の草原が広がっていた。


(惑星ヴァロだ。)


 視線を上げると、腕を組んで自慢げに空に浮かんでいるドラゴンがいる。


「うわぁっ!?」


 改めて見るとドラゴンは凶悪な姿をしているが、それよりも威圧感が圧倒的だった。


(これは、もう終わりかもしれない。。。)

(そうね。いろんなことがあって少々のことでは動じないと思っていたけれど、今回ばかりはどうしようもないよ。)

(日光で悪魔の幽霊を見に行った時にはエレナ様がいたけれど、今はいないし。)

(それに、このドラゴンは明らかに格が違う気がするよ。顕在した時のエレナ様と同等かそれ以上だもの。)


 2人して諦めの境地だったが、


(コソコソ何を話している?危害を加えるつもりはないから、俺様に怯える必要はないぞ。)


 ドラゴンが話しかけてきた。


(・・・本当ですか?)

(無論だ。嘘をつかねばならぬ理由もないしな。)

(それでは、私たちをどうするつもりですか?)

(ん?エレナから何も聞いていないのか?)

(エレナ様から?)

(『ワレが本来の力を取り戻したら、2人を惑星ヴァロに連れて行ってやろうかのう』と、美姫と樹に言った、エレナから聞いたぞ。だから、俺様がエレナの代わりに連れてきてやったのだ。感謝するがよい。クッハッハッー。)


 ??


(言われてみると、エレナ様がそんな事を仰っていたのを思い出したよ。)

(同意。それに僕たちのことを知っているということは、このドラゴンはエレナ様ともかなり親しい間柄なのかもしれない。)

(だとすると、危険はないのかな?)

(肯定。それから、このドラゴンの正体が何となく分かってきた。)

(私も。)


 ドラゴンが僕たちに危害を加えてこないことが判明して、落ち着いて考えることが出来るようになってきた。


(申し訳ありませんがお名前を教えて頂けないでしょうか?)

(2人に俺様のことも話したとエレナは言っていたぞ。だから、俺様の名前も知っているはずだ。当ててみよ。)

(・・・ヴァロ様であっていますでしょうか?)

(そうだ。八竜王が一王、第三王ヴァロとは俺様のことだ。クッハッハッー。)


 やはり、目の前で豪快に笑うドラゴンはエレナ様と並び立つ八竜王のようだ。


(確かに、あの方の精神エネルギーの波動はヴァロ様と同一だ!)

(ワレも確認したのジャ。あの方は紛れもなく第三王ヴァロ様なのジャ。)


 ザグレドとギレナもドラゴンが嘘を言っていないことを明言した。


(お前はザグレド、だな?)

(はい。)

(そうか。アホで可哀想な部下がいる、とエレナが言っていたが、お前がザグレドか?)

(はい!エレナ様がオレのことをそのように仰って下さっていたとは、ザグレド、感激感涙!それに加えて、ヴァロ様にお会いできるなど、恐悦至極!思えば、これまでも第6王領の――――)


 ザグレドの病気は何処にいても誰を前にしてもブレずに発病するようだ。


(褒められてもいないのに感動するか、こ奴は大丈夫なのか?)

(何時ものことなので、気にされない方が宜しいかと。)

(そうか。)


 ヴァロ様もザグレドの様子に呆れ気味だ。


(それから、美姫の中にいるのがエレナの擬魂だな?)

(はい。ギレナと申しますのジャ。)

(うむ。エレナと通信はできるのか?)

(いえ、ワレは単独行動用に作られているため、エレナ様との通信機能は持たられておりませんのジャ。)

(そうか。それは僥倖。)


 ん?


(ギレナにエレナ様との通信ができるか聞いているところを鑑みると、ヴァロ様は僕たちをここに連れてくることをエレナ様に話をしていなとか?)

(そうだと思うよ。そうでなかったら、エレナ様が事前に私たちにそのことを教えてくれているはずだし。)


(そのとおりだ。2人を俺様がここに連れてくるなどエレナに話をしたら絶対に反対されるからな。)

(それって、まずくないでしょうか?)

(まずいな。エレナに知れたら、確実に俺様はエレナに怒られるだろう。だから、この事は内密だぞ。)


(それって、内密にしていたことをエレナ様に知れたら私たちも怒られるんじゃ、、、)

(”私たち”と言うか、怒られるのは僕だけだと思うけど。)

(でも、私たちもエレナ様と通信する手段がないから伝えることができないし、大丈夫よね?)

(多分。そうだと思いたい。)


(・・・分かりました。それはそうと、ヴァロ様が私たちをここに連れてきたのは何故なのでしょうか?)

(それを今から説明してやろうと思っていたところだが、この姿でいるは些か目立ちすぎるな。チー、いるか?)

(ハイですのー。)


 ヴァロ様が呼びかけると、背中に葉っぱのような羽を持った妖精が、僕の顔と同じくらいの大きさの幼竜の着ぐるみを抱えて近づいてくる。


(ヴァロ様、持って来ましたのー。)

(ご苦労。)


 そう言うなり、凶悪な邪龍の姿だったヴァロ様は幼竜の着ぐるみに吸い込まれるように消えた。


(着ぐるみの中に入った?)

(これが地上における俺様の魂の器なのだ。良くできているであろう。クッハッハッー。)


 その時、『問題は奴がアホなのことじゃ。創造神様に憧れてドラゴンの着ぐるみを着ておったり、秘書官に仕事を丸投げしてワレと遊んだりしておるからのう。』という、エレナ様の言葉を僕は思い出していた。

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