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竜の女王  作者: M.D
2172年春
370/688

23

 ロジャー教授と約束した5/1当日、ホテルの玄関では百合子さんが待っていた。


「お待たせしました。」

「まだ時間になっていないから大丈夫よ。さぁ、行きましょう。」

「はい。」


(今日で遂にエレナ様が天界に帰るために必要な物が揃うよ。)

(同感。”魔力貯蔵具”と”魔力増幅具”の2つがあればエレナ様の願いはかなうはず。)


 百合子さんに連れられてヒューストン大学の資料庫まで行くと、ロジャー教授はまだいないようだった。


「また私たちを待たせるつもりかしら?」

「ロジャー教授は会う予定が取れないほど多忙な方らしいとのことなので、多少遅れられるのは仕方ないのではないですか?」

「それって半分嘘よ。」

「どういうことですか?」

「クソエロじじぃが多忙なのは間違いないけれど、会う予定が取れないほど忙しいわけじゃないの。ただ、対外的にそう見せていると余計な仕事は入って来ないし、自分と会う価値を上げられるし、いいこと尽くめだからなのよ。」

「ロジャー教授も策士ですね。」

「えぇ。そうやって自らの希少性を演出することも重要なんだと、私も学んだわ。」


 そんな話をしていると、職員と思われる人物が近づいてきて、


「ロジャー教授が中でお待ちですので、ご案内します。」


 と言って、資料庫の中に入れてくれた。


「中にいるのなら、そうだと連絡しなさい、って話よね。」

「でも、ロジャー教授は情報端末を持ち歩いていないのですから、連絡のしようもないのでは?」

「そうなのよ。それで困らせられるのはいつも私たち。」


 百合子さんの悪態を聞きながら資料庫の中に入ると、ロジャー教授がロダンの”考える人”のような姿勢でじっとしていた。


「いらしていたのなら連絡くらい下さっても良かったのではないですか?」

「・・・。」

「クソエロじじぃ!」

「はっ!百合子君か。メンゴメンゴ。また思考の沼にはまり込んでしまっていたんよ。」

「全く、、、」

「美姫さんも樹君も来ているんね。それじゃ、行くんよ。」


 何事もなかったようにロジャー教授は資料庫の奥へ歩き始めた。


(ロジャー教授は相変わらず唯我独尊な感じね。)

(同感。実績を残しているから許されているみたいだけど、振り回される方は大変だ。)

(そうね。ロジャー教授が他人の目を気にして研究を失敗するより社会への貢献度は高くなるから総合的には良いんだろうけど、周りの人にはいい迷惑よね。)


 コツコツと人気のない資料庫の中を歩く。


「ヒューストン大学の資料庫って広いんですね。」

「東京と比べて魔法を研究する研究者の数が多いから、成果物も多くなるわ。だから、それを収める資料庫も広くないといけないのよ。それに、ヒューストンに魔法研究の中心が移って以降、各国からも資料が集まってくるしね。」

「凄いですね。」

「あのじじぃが世界中から集めてきた資料も、水準4以上の資料室に多数収められているわ。」

「それで、ロジャー教授や研究室に所属している学生も歴史資料や研究物を見ることができるんですね。」


「ホッホッホッ。そのとおりなんだが、水準4以上の資料室に入れるのは小生が認めた者だけなんよ。」

「私も水準4以上の資料室に入るのは初めてですし。」

「百合子君、小生以外の者が格納棚に触れたら電撃を食らうことになるから、興味を持っても資料室の中の格納棚には触れてはいかんよ。」

「そんな危ない仕掛けがあるなんて聞いていませんが?それに、よろけて格納棚に当たってしまったらどうするですか。」

「気絶するだけらしいから、その時は諦めるんよ。」

「最低。」


(百合子さんがロジャー教授のことを睨んでいるけど、逆にロジャー教授を喜ばせているだけのような感じがする。)

(私も。ロジャー教授はそのことを分かっていて百合子さんに嗾けてるのよ。)


「それから、3人とも身体検査装置での検査の受け方は知っているんよね?」

「はい。でも、水準4の資料室には入ったことがないので、水準3までの資料室に入るための身体検査装置しか使ったことがないです。」

「それなら、検査の受け方は同じだから大丈夫なんよ。水準4の資料室に入るための身体検査装置は水準3までの装置よりも頑丈で、起動するのに逐次許可証の発行が必要なくらいしか違いはないんよ。」

「さすがに安全面を重視して厳重なんですね。」

「そうなんよ。許可証も一定時間ごとに自動的に更新されて、しかも一度しか使えんから面倒なんよ。」


 水準3の領域に入る前に身体検査装置で検査を受け、さらに進むと水準4の資料室に入るための身体検査装置が見えた。


「大きい。」

「えぇ。まるで映画でよく見る銀行の巨大地下ちんこの扉みたいね。」


 ・・・。


「なんですって?」

「・・・。ごほんっ。いいそこ間違いよ。」

「わざとですよね?」

「いいじゃない、別に。一度言ってみたかったのよ。」

「先日に引き続き2度目ですが?」

「そんな事より、早く水準4の資料室に入りましょう。」

「そうですね。ロジャー教授、お願いします。」


「分かったんよ。」


 ロジャー教授が起動した身体検査装置で検査を受けた後、僕たちは水準4の資料室に足を踏み入れたのだった。

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