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竜の女王  作者: M.D
2172年春
364/688

17

 昼食後、美姫と僕は百合子さんの案内で、ヒューストン大学の研究室に赴いた。


 コンコンコン


「あれ?」


 ガチャガチャ


「鍵がかかっているわ。あのクソエロじじぃ、2人を呼び出しておいて不在とはふざけているのかしら?クソエロじじぃは情報端末を持ち歩いていないから連絡の取りようもないし。」

「ロジャー教授の居場所について心当たりはないんですか?」

「ないわね。でも、研究室の誰かに行き先を伝えているかもしれないから、行ってみましょう。」


 教授室の隣にある研究室に入ると、1人しか研究員はいなかった。


「マークだけしかいないようね。マーク、クソエロじじぃがどこに行ったか知らない?」

「ん?百合子?今日は軍の仕事なんじゃなかったっけ?」

「クソエロじじぃに呼び出されたのよ。」

「そうだったのか。ロジャー教授なら10分程前に教授室を出ていく音が聞こえたけど、どこに行ったかまでは分からないな。」

「そう。」


「ところで、その2人は誰だい?」

「未来の旦那様と、その第一婦人よ。」

「わぉ!彼が百合子の婚約者か。・・・百合子が『私には婚約者がいるから』と言って男どもからの告白を断っているから、さぞかしカッコイイ男なんだろうと思ったけど、いたって普通だな。」


 マークと呼ばれた研究員にジロジロ見られた。


「百合子さん!ヒューストンでもそんなことを言っているんですか!?」


 美姫が非難の声を上げた。


「美姫さんのことは今初めて言ったわ。でも、『私には婚約者がいるから』と言って告白を断っているのは事実よ。」

「樹と百合子さんは婚約なんてしていないはずですが?」

「樹が私の未来の旦那様になることは確定なのだから、婚約しているのと同義よ。」

「全然違います!」

「意見の相違ね。」


「ハハハ。それが漫才と言うやつか?」

「違うわよ。。。そうそう、紹介がまだだったわね。こいつはマーク・エドウィン。年齢は私の4つ下だけれど、去年飛び級でヒューストン大学に入った天才よ。」


 えっ!?


「マークさんは大学生だったんですか?それに私たちよりも年下だなんて、、、」

「同感。どう見ても、おっさん、、、」


 研究員だと思った人物は大学生だったようだ。


「ぷっ。マークの紹介をすると、皆、同じ反応をするから面白いわね。」

「僕が老け顔なのは認めるが、年齢を聞いて驚く様子を見て面白がるのは如何なものかと思うぞ。」

「そう思うのなら、少しは痩せなさい。そうすれば、見た目もましになるわよ。」

「そうしたいのは山々なんだが、なかなか難しくてね。」

「せめて、ポテトチップスを食べる量を減らしなさい。私が協力してあげるわ。」

「ポテチは僕の主食だから、それは無理!」


 棚に並べられたポテチを取ろうとする百合子さんからポテチを守ろうと、マークは棚の前に手を広げて立ちふさがった。


「こんな奴だけれど、マークは世界中の言葉を話せる天才なのよ。」

「それで、マークさんは日本語が上手かったんですね。」

「僕はロジャー教授と同じく趣味で魔法使いの歴史についても研究しているから、世界中の言葉を話せると現地調査に行って聞き取りなんかをする時に便利だと考えて、昔から準備してきたんだ。」

「と言うことは、ロジャー教授も日本語が上手だったりするんですか?」

「えぇ。そうよ。マーク程ではないけれど。」

「マークさんは今はどのくらいの国の言語を話せるんですか?」

「49ヵ国くらいかな。似たような言語もあるし、余程特殊な言語を話す人でない限り、ほぼ全世界の人と意思の疎通を図るだけなら可能だと自負している。」

「凄いですね。。。」


「でしょ。こんな見た目なのに。」

「酷い。傷つく―。」


 マークはわざとらしく凹んだ様子を見せた。


「マークは思考も超高速で天才的だから、一度目のヒューストン大学の入試の時に面接の段階で落とされてしまった理由も今なら理解できるわ。」

「百合子さんは以前『私よりも優秀な論文を書いた学生がいたんでしょうね』と言っていましたが、それがマークさんだったんですね。」


「えぇ。クソエロじじぃとまともに長時間話をできるのは研究室の中ではマークだけだから、優秀な論文を書いた、というより、面接でクソエロじじぃと馬が合ったんじゃないかしら?違う?」

「たぶんそうだろうな。僕も面接で初めてロジャー教授と話をしたけれど、魔法使いの歴史に関する話で盛り上がったせいで面接時間を大幅に超過してしまって、後でロジャー教授はエルトン准教授にえらい怒られたらしい。」

「そうだったの。その話は初めて聞いたわ。」

「僕の勝ちだな。」


 ??


「天才と話していると、今みたいにいきなり話が飛ぶから会話のやり取りを上手くできないことがあるわ。」

「マークさんの今の発言の脈略が分からなかったのは、そういうことですか。」

「今のはましな方よ。天才の頭の中では超高速に思考が行われるから、クソエロじじぃやマークが普通に会話しているつもりでも、私たちはその思考についていけなくて、結果として会話が成り立たなくなるの。」

「成程。」


「マーク、さっきあなたがどう考えたか思い出して2人に教えてあげて頂戴。」

「OK。『面接での話を百合子は知らない』⇒『ロジャー教授は百合子に話すまでもないと考えている』⇒『百合子はその程度の存在』⇒『ロジャー教授にとって僕の方が序列が上』⇒『僕の勝ち』ってところかな。」

「そうじゃないかと思っていたけれど、腹立つ思考するわね。」

「それ程でも。」

「褒めてないわよ。」

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