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竜の女王  作者: M.D
2172年春
363/688

16

「おぉ、これがヒューストンの風景か。」

「ヒューストン空港に着いて言語が英語になった時に『ここは日本じゃないんだ』って思ったけれど、空港を出ると更に異文化を感じられて『外国に来た』って実感したよ。」

「同意。情報端末の画面で見るのと実際の風景を見るのとでは、空気感というか何か、感じられるものが全然違う。」

「そうね。窓から見える風景全部が異国情緒にあふれているものね。」


「ふふふ。あなた達、御上りさんみたいよ。」


 僕の後ろに座った百合子さんは微笑ましいものを見るような表情で僕たちを見ていた。


「そう言う百合子さんだって、初めてヒューストンに来た時には同じ気持ちになったんじゃいんですか?」

「えぇ、そうね。全てが新鮮に感じられたわ。でも、あなた達のように子供みたいにしゃいだりはしなかったわよ。」

「・・・私、そんなにはしゃいでいました?」

「私にはそう見えたわ。」

「ぐぬぬぬ。」


(百合子さんに子ども扱いされるとか屈辱。。。)

(僕たちは外国に来るのは初めてなんだから、異国の風景に感動してしまうのは仕方ないって。それに、百合子さんも自分は気づいていないだけで周りから見たら僕たちと同じように見えたかもしれないし。)

(そうよね。私たちだけじゃなく、誰しもこうなるよね。)



 ホテルに着いてチェックインしてから部屋に荷物を置きに行った。


「部屋は3人部屋なんですね。」

「今回は麻由美大将閣下を除けば男女3人づつだから、それぞれ1部屋づつ手配したんだよ。」


 透准尉が教えてくれる。


「さて、食堂に行こう。腹が減って仕方がない。」

「はい。主と遭遇したおかげで到着が遅れたので、もう昼食の時間はとっくに過ぎてしまっていますから。」

「了解。」


 ホテルの食堂に着くと別室に案内された。


「麻由美大将閣下、この後1600(ヒトロクマルマル)から魔法理事国魔法軍会議でございます。」

「どうせまたミランダのババァの”思い”を聞くだけの会議なんでしょ。音声会議だったら内職もできるけれど、面と向かっての会議だとそれもできないし、正直、行く気が起きないわ。」

「そう仰らずに。あの方も稀にいいことを言われますし。」

「新もたいがい酷いこと言っているわよ。」

「おっと、失言でした。しかし、魔法理事国魔法軍会議では”楯系”の魔石の分配に関する議論も行われます故、何卒ご出席の程よろしくお願致します。」

「分かってるわよ。」


 麻由美さんと新少将は、今日の午後から行われる魔法理事国魔法軍会議の打ち合わせをしているようだ。


「この後すぐ会議があるなんて、麻由美大将閣下もヒューストンについて早々大変そうですね。」

「時間は有限だからヒューストンに滞在中の麻由美大将閣下のスケジュールはビッチリなはずよ。でも、私たちは出席する必要ないし、樹はこの後どうするつもり?」

「夕食にステーキを食べに行く以外は特に何も決めてませんね。百合子さんは電話した時に『適当に見繕っておく』と言っていましたが、お勧めはありますか?」

「それについてなんだけど、ロジャー教授から『美姫さんと樹君と話をしたいから研究室に来てもらうように』との電文がさっき届いたの。」


「ロジャー・デイビス教授自ら会う時間を作るなんて、美姫さんと樹君は何者なの!?」


 百合子さんと僕の話を聞いて、駐在武官の1人が驚いたように言った。


「私たちは至って普通の高校生ですが、ロジャー教授と会うのはそんなに大変なんですか?」

「そうよ。ロジャー教授は多忙を極めているから、会って話をしたいと思っても予定を取り付けることが難しくて有名なのよ。そんな事も知らないの?」


 美姫の回答に対して駐在武官が呆れたように言い、


「主を倒してしまえるような2人が普通の高校生であるわけないわよね。」

「同感です。美姫さんの辞書に書いてある普通の定義を見せてもらいたいものです。」

「それから、ロジャー教授は2人が主を倒したことをいち早く聞きつけて、2人に興味を持ったのでしょうね。」

「きっとそうです。」


 花梨少佐と士紋大尉が小声で突っ込みを入れていた。


「聞こえてますけれど?」

「美姫様は亜紀様の養女になられたのですから、もう普通の少女ではいられないことを認識された方が良い、と考え、あえて聞こえるように言わせて頂きました。」


「樹君もそうだぞ。美姫さんと百合子准尉の両人と結婚できるくらいの優秀な魔法使いには普通ではなれないよ。」

「士紋大尉の言葉には棘があるような気がするのですが。」

「いや、小官は直実一筋なので他に女性はいらない。というか、2人も嫁がいるなんて面倒くさそうだから勘弁してい貰いたい。」


「士紋らしい言い分ね。」

「恐縮です。」

「何にせよ、ロジャー教授が会って下さるのは素晴らしいことなんだから、百合子准尉、美姫さんと樹君の案内よろしく頼んだわよ。」

「承知しました。」

「美姫さんと樹君もいいかしら?」

「「はい。」」


 麻由美さんの指示によって、ロジャー教授の研究室に行くことが決定した。


「唐突に今日の予定が決まってしまった。。。」

「いつもこんな感じよ。ロジャー教授の都合に学生含め関係者が振り回されるなんてよくあることだわ。」

「百合子さんも、ですか?百合子さんなら、ロジャー教授のことを上手くあしらってそうだと思ったんですが。」

「残念ながら、ロジャー教授の方が一枚上手なのよ。長生きしてる分だけ年季が入っているのね。」

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