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(主と相対するともっと威圧感を感じると思ったけれど、そうでもないね。)
(同感。去年の実習で出会ったバイロ―の方が脅威的だったし、その時の経験があるからかもしれない。)
(ワンちゃんは悪魔入りの魔獣だから、比較にもならないよね。でも、今回は空の上で逃げ場がないところが不安じゃない?)
(肯定。逃げるという選択肢がないのは地味につらい。)
主に狙いをつけながら美姫とそんな話をしたのが悪かったのか、
(グレン、2人があのように感じるおるようじゃから、ここは一つ劇画的な派手さをもってあ奴を倒すことにしないかのう?)
(2人は適度な緊張感をもっているようですから、ワシもエレナ様の案に賛成ですな。)
エレナ様とグレンさんが聞き捨てならないことを言った。
(ちょっと待って下さい。派手さはいらないので、安全に着実に倒しましょう。)
(そうです。余計な演出はいらないです。)
(嫌じゃ。ワレはもう決めたのじゃ。)
(ワシはエレナ様に従うまでですな。)
(面倒なことになった、、、)
そう思っていると、主が口を開け、
キラッ
その奥に微かな光が見えた。
(精神エネルギーを凝縮しているようじゃのう。)
(魔導砲がきますな。)
「花梨少佐、主が魔導砲を放ちます!」
「承知しました。機長、右急旋回!」
「了解!」
花梨少佐が操縦室に通信を入れると同時に飛行機が旋回をはじめ、体が横に振られる。
グゴーーーー!
主が巨大な魔導砲を放つと、
「士紋大尉!」
「了解!」
バシッーーーー!
士紋大尉が主と飛行機の間に移動して発動した魔導盾に魔導砲が当たって辺りが魔導力の光に包まれ真っ白に染まり、
ガタガタガタガタ
その余波を受けて機体が揺れる。
(主の魔導砲は凄い威力だ。)
(1年生の時に樹君が受けた複数の魔導砲を足し合わせた何百倍も主の魔導砲の方が威力は高いでしょうな。)
(そんな魔導砲を防いでいる士紋大尉は大丈夫でしょうか?)
(精神エネルギーを感知できておるから、生きてはおるじゃろう。)
魔導力の衝突によって発生した光が無くなると、エレナ様の言うとおり士紋大尉は健在だった。
「士紋大尉、やったわね。」
「ふぅ、何とか防ぎきれました。。。」
「流石は元桐生だけあるわ。」
「士紋大尉は桐生家出身だったんですか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「肯定。」
「小官のことは後で話すとして、今は主への対応だ。まだ、徹甲魔導弾で主が纏う魔導力を撃ち抜くことはできないのかい?」
「肯定。もう少し引き付ける必要があります。」
「そうか。今のでかなり魔力を使ったから、主に魔導砲をもう一度放たれたら飛行機を守りれないかもしれない。」
「士紋大尉がそう言うということは、主の魔導砲は相当な威力だったのね。」
「はい。東京にいる”大砲系”魔法使いの誰も主ほどの魔導砲は放てませんよ。」
「つまり、士紋大尉は東京にいる”大砲系”魔法使いの誰にも負けない、屁の河童だ、と言いたいのね。」
「そんなことは言っていません。」
「冗談よ。」
(こんな場面で冗談を言うなんて、花梨少佐は余裕があるんですね。)
(いえ、こういう場面だからこそでしょう。心の余裕をなくせば判断を間違う確率が高くなりますからな。)
(成程。)
(これからどうしますか?)
(出来るだけ、あ奴を引き付けようかのう。)
(そうしなくても主を倒せるのではないですか?)
(『劇画的な派手さをもってあ奴を倒す』と言ったじゃろう。ギリギリまで引き付けて間一髪というところで倒す方が危機を乗り切った感が出る、というものじゃ。)
(・・・エレナ様のなさりたいことは分かりましたが、士紋大尉は『主に魔導砲をもう一度放たれたら飛行機を守りれないかもしれない』と言っていますが、大丈夫でしょうか?)
(今の攻撃で、あ奴は精神エネルギーを減らしておるから、次の攻撃まで時間がかかるじゃろう。しばらくは大丈夫じゃ。)
(良かった。)
時間的な余裕ができたことで、美姫は一つの可能性についてエレナ様に聞いた。
(主に取り込まれている魔法使いを助けることはできないでしょうか?)
(ふむ、、、あ奴と一体化してしまっておるようじゃから、無理じゃろうのう。)
(そうですか。。。)
(ワレらにはどうすることもできないことじゃから、美姫が気に病む必要はないのじゃ。)
(はい。)




