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竜の女王  作者: M.D
2172年春
354/688

07

 ポンッ


 シートベルト着用の警告灯がつき、


『皆様、本日も地球連邦航空公社ヒューストン行き16便をご利用下さいましてありがとうございます。当機の機長は山田、主席客室乗務員は佐藤です。間もなく出発致します。シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締め下さい。

 経由地であるホノルル空港までの飛行時間は7時間10分を予定しております。それでは快適な空の旅をお楽しみ下さい。』


 機内にアナウンスが流れる。


「そろそろ出発ね。」

「緊張してきた。」

「私も。大丈夫だと思うけれど、飛行機は離陸と着陸の時が一番危ないらしいよ。」


 横を見ると美姫も少し緊張した表情をしていた。


「魔の11分間だっけ?」

「そう。航空事故は離陸時の3分間と着陸時の8分間に集中してるんだって。でも、離陸するときには時速300kmまで全力で加速するから、操縦士としては離陸するときの方が気をつかうみたいね。」

「離陸するときの方が燃料もたくさん積んでるから危険も増えるだろうし。」


 飛行機が動き出し、滑走路まで移動する。


『皆様、当機は間もなく離陸致します。シートベルトを今一度ご確認下さい。』


「これで、少しの間、日本ともおさらばか。」

「日本を出たことがないから、不思議な感じがするよね。」

「同感。ヒューストンはどんなところなんだろう?」


 シートベルトを確認して待機していると、


 ゴー!!


 エンジンが唸りをあげる音が聞こえて飛行機が動き出し、体に加速度がかかった後、フワッと浮き上がる感じがした。


(離陸の瞬間って変な感じだったね。)

(同感。お尻の辺りがゾワッっとなったような感じだった。)

(ふふふ。それを言うなら、内臓が浮こうとするのを感じるんだからお腹じゃない?)


 窓の方を見ると、地上の景色が小さく見え、しばらくすると視界を空の海の青が支配するようになる。


 ポンッ


 シートベルト着用の警告灯が消えた後、


『皆様、本日も地球連邦航空公社をご利用頂きありがとうございます。機長の山田です。当機は定刻どおり東京空港を離陸し、現在水平飛行に入っております。飛行高度は10km、対地速度は時速800kmの速度をもちまして順調に運航中です。

 また、ホノルルまでの航路上の天候ですが、おおむね良好という予報が出ております。短い空の旅ではございますが、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。』


 機長のアナウンスがあった。


「何事もなく離陸できてよかったよね。」

「同意。もうだいぶ高度を上げて、巡航速度での水平飛行になったみたいだ。」

「そうね。でも、水平飛行と言いつつ実際には水平じゃないって知ってた?」

「否定。」

「水平飛行時は、機首を2度くらい上げた状態で飛行機を持ち上げる揚力と重力が釣り合う状態になるように設計されているらしいよ。」


「美姫様は博識ですね。」


 僕たちの会話を聞いていたのか、花梨少佐が声を掛けてきた。


「いえ、初めて飛行機に乗るので事前にいろいろ調べていただけです。」

「そう言えば、美姫は飛行機がどうして空を飛べるのか調べてたから、その時に今の知識を仕入れたのか。」

「そのようなことをお調べになっていたとは、もしかして美姫様は飛行機が落ちないか心配されていたりしました?」

「そんなことありません。」

「図星。」

「違うってば。」

「ふふふ。完全無欠の美姫様にも可愛いところがあるのですね。」

「花梨少佐、酷いです。」

「おっと、小官は魔獣に対する準備を始めることにします。」


 花梨少佐は微笑みながら逃げるように機尾に向かった。


「本当に違うからね。」

「承知。ホノルルまでこれから7時間は飛行機の中にいないといけないし、何をして時間を潰す?」

「映画とか見るのが定番じゃない?」

「やっぱりそのくらいしかやることないか。映画を見て、飽きたら仮眠でもしよう。」

「私もそうしようかな。」


「ホノルルに着いたら何時くらいなんだっけ?」

「離陸したのがだいたい12時だから、時差を考えるとホノルル時間で深夜0時ね。」

「深夜の到着だと、真っ暗で全然ホノルルの景色とかは見れないのか。」

「今回の目的地はヒューストンなんだから仕方ないよ。」

「海を見ながらロコモコを食べるのを楽しみにしていたのに。。。」

「ロコモコ?」


 美姫はロコモコのことを知らなかったらしく、情報端末で検索を始めた。


「ご飯の上にハンバーグと目玉焼きを載せてグレービーソースをかけたハワイ料理ね。写真を見ただけで美味しいって分かるよ。でも、ロコモコは私も食べてみたいと思うけれど、ホノルルでは何も食べない方がいいよ。」

「何故?」

「時差ぼけってあるでしょ。最後の食事から12時間~16時間後に食事をとると、そこで体内時計が初期化されるから、それをうまく使えば時差ぼけの影響を軽減できるんだって。」

「成程。それも飛行機がどうして空を飛べるのか調べてた時に知ったりした?」

「そうよ。樹も私のこと揶揄うわけ?」

「否定。」


 僕も逃げるように自分の席に戻り、適当な映画を見繕って視聴することにした。

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