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竜の女王  作者: M.D
2172年春
353/688

06

 それから程なくして、


「搭乗準備ができましたので、搭乗口までお越し下さい。」


 僕たちを呼びに特別待合室まで来たのは花梨少佐だった。


「どうして花梨少佐が私たちを呼びに来たのかな?」

「それは、花梨が今便に随行する飛行魔法使いだからよ。」


 美姫の僕への問いに対して麻由美さんが答えた。


「でも、それはおかしくないでしょうか?飛行魔法使いには航空戦闘隊に所属する魔法使いが充てられるはずなのですが、花梨少佐は強襲戦闘隊の所属なのですよね?」

「今はね。こう見えて、花梨は優秀な飛行魔法使いなのよ。」

「『こう見えて』とはひどい仰りようですが、小官が今便に随行する飛行魔法使いを務めることになった経緯については、歩きながら小官から美姫様にお話しますので、まずは皆様、搭乗口にお向かい下さい。」

「分かったわ。」


 花梨少佐に促され、全員で特別待合室を出て搭乗口に向かう。


「美姫様、小官は元々航空戦闘隊に所属していたのですが、副部隊長として強襲戦闘隊に引き抜かれたのです。」


 搭乗口に向かう道すがら、花梨少佐が状況について説明をしてくれた。


「それで、花梨少佐も魔導翼を使って飛行ができるんですね。」

「はい。今便には美姫様も搭乗されるとのことで、小官が随行の飛行魔法使いとして麻由美大将閣下から直々の指名を受けた、という訳なのです。」

「航空戦闘隊の飛行魔法使いを押しのけての指名ならば、麻由美大将閣下が言われていたように花梨少佐は優秀な魔法使いなんですね。」

「いえ、そんなことはありません。」


「いや、花梨少佐が言われているのは、麻由美大将閣下や芙蓉少将閣下と比べてのことだから、真に受けてはいけないよ。実際に花梨少佐は航空戦闘隊にいるときには主戦力として第一線で活躍してたんだし。」


 士紋大尉が後ろから花梨少佐の実力を教えてくれた。


「それはそうだけれど、久しく随行の飛行魔法使いをしていないから、昔と同じようにはいかないと思うわ。」

「でも、訓練はされていたのですよね?それに、麻由美大将閣下からの指名なのですから、実戦から遠ざかっていても現役の飛行魔法使いよりも優れている、と判断されたのではないでしょうか?」

「それを言うのなら、士紋大尉も同じでしょう。今回選ばれたのは、士紋大尉が魔導翼を使って飛行できることが大きいんじゃないかしら?」


 ん?


「どうしたんだい?」

「『”楯系”の魔導翼はまだ開発されていない』と補講で聞いたのですが、士紋大尉はどうして魔導翼を使えるのですか?」

「小官は魔法系統として”銃剣系”に近い”楯系”だから、たまたま”銃剣系”の魔導翼に適性があって使うことができてしまったんだよ。」


 士紋大尉はちょっと嫌そうな感じで言った。


「車の中で理由を聞いた時に僕たちのお守以外の理由もあるような言い方だったのですが、そういう理由で士紋大尉も随行員に選ばれたんですね。」

「要人が搭乗する航空機には防衛力をあげるために”銃剣系”の魔導翼を使うことができる”楯系”魔法使いが随行することが多いのですが、士紋大尉は東京に4人しかいない魔導翼を使える貴重な”楯系”魔法使いなのです。」


「おだてても何も出ませんよ。」

「先程の仕返しだからいいのよ。でも、士紋大尉は参謀本部でくすぶってないで、早く佐官になって航空戦闘隊の部隊長として活躍したほうがいいと思うわ。」

「小官はのんびり過ごしたいので、参謀本部勤務で満足しています。」

「そうかしら?士紋大尉は兵士よりも将官の方が向いていると思うけれど?」

「買い被りすぎです。」



 話をしているうちに搭乗口に着き、旅券を装置にかざして搭乗確認をした後、飛行機に乗り込んだ。


「おぉ、飛行機の中はこんな風になっているのか。想像していたより狭い。」

「手荷物を入れておく収納棚で天井が低くなっているから少し窮屈な感じがするよね。でも、座席は窓側2列、中央2列で余裕があるし、座り心地は良さそう。」

「それに、完全には平坦にはならないけど、結構座席が倒れるから気持ちよく寝られるよ。」

「それはいいですね。」


 美姫や士紋大尉とそんなことを話しながら、旅券の画面に映し出された座席を探す。


「僕らは一番後ろの席なのか。」

「魔法使いが一番後ろの席に座るのは常識です。高校生にもなってそんなことも知らないのね。」

「反省。。。」


 僕の発言に久美子大佐が刺々しく苦言を呈したが、


「久美子、樹君は高校生になる直前に魔法使いになったんだし、魔法使いの常識を知っていなくても仕方ないわ。」

「それでも、彼はもう3年生です。そのくらいの常識は知っておいてもらわなければ、我々が困ります。」

「今日のことは樹君に魔法使いの知識を教えていた純一に言っておくけれど、純一も全部教えられるわけでもないから、樹君が知らないことがあったら随時教えてあげて頂戴。」

「承知しました。」


 麻由美さんが久美子大佐を窘めてくれて助かった。


「魔法使いが航空機の一番後ろの席に座る理由は、航空機の後尾が開くようになっていて、随行する魔法使いが何らかの事情で魔獣に対応できなくなった時に、他の魔法使いがすぐに出撃できるようにするためなの。」


 美姫が理由を教えてくれる。


「成程。僕らはこれから海の上を飛ぶから、出くわす可能性がある魔獣は空鮫か。」

「そうよ。太平洋は広いからあまり遭遇はしないらしいけれど、逆に見つけにくいから駆除しきれないらしいの。」

「それで航空機には魔法使いがまだ随行する必要がある、と。それより、いくら魔獣だからといったって、そもそも鮫が魔導力を使って空を飛ぶなんておかしい気がする。」

「ふふふ。それもそうね。」

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