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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
35/688

20

 1日入院をした後、ギブスをして美姫さんと登校した。


(すぐに退院できてよかったね。)

(僕のことより美姫さんに怪我がなくてよかった。)

(私はエレナ様に体を貸していたから、怪我はなかったけど体中が筋肉痛になっているの。樹君はもう大丈夫なの?)

(検査結果によると腕の骨折以外は問題なくて、骨折も全治1週間。医者が言うには、『ありえないくらいきれいに折れていたから、すぐに治るだろう』だって。)

(ワレのおかけじゃ。)

(きれいに折ってくれたエレナ様に感謝だね。)

(そうじゃぞ、樹。ワレに感謝するのじゃ。)


(いや、感謝も何も、僕の腕を折った犯人はエレナ様だから。)

(そのことで、麗華さんが『樹君の骨折は私たちのせいじゃない。私たちが気を失ったあと誰かが折ったんだ。』と言っていたんだけど、屋上にいたのは5人だけだったから、『誰かって誰?』ということになって、これまでの言動から先生達には信用されてないみたい。今は謹慎中だって。)

(麗華さんもとんだとばっちりだな。いや、僕らに何かしようとしなければこんなことにならなかったから自業自得か?)

(自業自得じゃ。樹の骨折も含めてのう。)


(今回は魔法で屋上の入り口を壊したりして騒ぎが大きくなったから、先生達も庇いきれないみたい。近日中に処分されるそうよ。)

(他の2人は?)

(さぁ、どうなんだろう?麗華さんに加担したから何らかの処分は受けると思うけど、麗華さんほどは重い処分にならないはずよ。)

(普通に考えて、そうだろうな。あの2人は加害者でもあるけど、自らすすんでやったわけではないし。)

(何だったら、純一先生に聞いてみたら?『樹君にも経緯を聞きたい』って言ってたから、今日あたりに呼び出されるんじゃないかな。)


(先生に呼び出されるとか、麗華さんのせいで面倒なことばかりだ。今回のことで懲りて、できればもう僕たちに関わらないでほしい。)

(あやつなら逆恨みすると思うがのう。)

(樹君が骨折した罪を被せられたし、麗華さんがそう考えてもおかしくないですね。)

(麗華さんはエレナ様と同じくらい性格が悪いからどんな仕返しをされるか分からないな。)


(樹、今なんと言ったのじゃ?)

(何も言ってません。)

(樹君はエレナ様に対する言動に気を付けたほうがいいかもしれないよ。)

(今後は気を付けることにする。)

(そうじゃ、樹はワレに対する尊敬の念がたらんのじゃ。美姫を見習う様に。)


(それはそうと、僕が気を失ったあとどうなったか知ってる?入院中は検査とかでバタバタしていて聞けなかったんだ。)

(私もあの後すぐにエレナ様に体を返してもらって眠ってしまったからよく知らないんだけど、騒音を聞きて駆け付けた純一先生が見つけてくれて、すぐに救急車で病院に運ばれたんだって。)

(じゃあ、先生にはお礼を言っておかないといけないな。呼び出された時にでもお礼を言っておくことにするよ。)

(そうしたほうがいいよ。私も病院にいるときに先生にお礼を言ったら、『相談を受けていたのに守ってやれなくてすまない』って逆に謝られたの。)

(先生に相談した時に、『何も起きていないうちは動けないけど、何とか君たちを守る方法がないか考えておくよ』とも言ってくれていたから、僕たちが麗華さんの騒動に巻き込まれたことを気にしているのかもしれない。)

(そうね。)


(この件について美姫さんがどうしていたか聞かれたらどうする?美姫さんが麗華さんを追い詰めた、ということは麗華さんが証言するだろうし。)

(麗華さんにも矜持があるだろうから、私に追い詰められて失禁して気絶した、なんて言わないかもしれないよ。)

(そうなると、途中から記憶を失くしていた、というのが妥当か。)

(そうね。実際、私自身に向けて魔導砲を撃たれたのは初めてだったから、恐怖で記憶を失くした、と言えるし。)



 話をしている間に教室に着いたので、お互いに自分の席へ向かい、席に座ったと同時に聡が話しかけてきた。


「樹、麗華さんにやられたんだって。その腕、大丈夫か?」

「骨折で全治1週間だと。」

「そうか。入院したって聞いて、麗華さんのことだから無茶されたんじゃないかって、心配したんだぜ。でも、骨折だけで済んで良かったな。」

「良かったのかどうか分からないけど。」

「良かったんじゃないか。去年は麗華さんに追い込まれて精神を病んで退学した生徒がいる、って噂だから。」

「そんなことがあったのか。」


「それにしても、美姫さんじゃなくて樹が怪我させられた、というのも不思議なんだよな。麗華さんに目をつけられていたのは美姫さんの方なんだから。」

「僕は気を失っていたから、一昨日のことはよく知らないんだよ。」

「学校中が一昨日の話で持ち切りだから、詳しく知りたかったんだが、気絶してたんだったら仕方ないか。美姫さんに何か聞いていないか?」

「美姫さんも途中から記憶がなくて、よく分からないんだと。」

「そうか。残念。」


「樹の腕って、美姫さんをかばって骨折したのか?」

「そうだったらカッコイイんだけど、残念ながらそうじゃない。」

「麗華さんの魔法に巻き込まれた、ってとこか?」

「そういうこと。」

「六条家本家筋だけあって、麗華さんの魔導砲は結構な威力だから、直接当たらなくても吹き飛ばされるくらいはするだろうから、その時に転倒でもしたんだろう。」

「そんなとこかな。」


 曖昧に答えておく。


「しかし、樹も不運だったな。麗華さんがまさか魔法の腕輪を持ちだすとは。」

「その上、魔法まで放ったから、今回ばかりは重い処分になる、って聞いた。」

「そうらしい。それに、麗華さんに魔法の腕輪を貸し出した先生も謹慎処分中だし、退職することになりそう、って噂だ。」

「先生もかわいそうだけど、学生の麗華さんに逆らえなかったというのは大人としてどうかと思うけど。」

「麗華さんは本家筋の人間だから、俺が先生の立場でも逆らわなかったと思うぞ。どうせ退職しても六条家が面倒をみてくれるだろうし。」

「そういう考え方にはまだ慣れないな。」

「魔法使いの世界ってのはそんなもんだ。」


 その後授業が始まり、エレナ様に折られた腕が左腕だったこともあって、治るまで多少不便ではあるもののいつも通りの学校生活を送ることができた。

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