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竜の女王  作者: M.D
幕間10
345/688

01

「樹様、夜分に申し訳ありません。」

「どうした?何かあった?」


 以前と同じように、もう寝ようかと思っていた時に珠莉から電話がかかってきた。


「いえ、またお休みを頂けたので、今週の日曜日にご予定があるかどうか伺いたくて電話しました。」

「ということは、またデートがしたいとか?」

「はい。ここのところ私の出番が少なすぎて樹様のお役に立てていないことが心苦しくて。」


(珠莉とデートするとまた美姫に無茶を言われそうな気もするけど、珠莉のことも構ってあげられてないし、仕方ないか。)


「・・・了解。日曜日は空けておくよ。」

「やった!これで、樹様との絆を深められます。」


「それで、今度も珠莉は行きたいところとかあるのか?」

「はい。先日、同級生が『彼氏と遊園地に行って楽しかった』と言っていたので、私も行ってみたいな、と。」

「この近くの遊園地だと”夢の国”?」

「そうです。樹様はお嫌ですか?」

「否定。」

「良かった。では、日曜日は楽しみにしてますね。おやすみなさい。」

「おやすみ。」



 そして迎えた日曜日。出かける準備をしていると珠莉から電話がかかってきた。


「樹様、今どこにいらっしゃいますか?」

「まだ寮の部屋で着替えをしているところだけど、僕が待ち合わせ時間を勘違いしていて、もう過ぎてしまってたりする?」

「いえ、そうではありません。」

「じゃぁ、どうした?」


「私、待ち合わせ時間よりちょっと早めに東京駅に来たんですけれど、そこで美姫様が男性と並んで歩いているのを偶然見てしまったんです。」

「美姫が?」

「はい。美姫様はその男性と楽しそうに話をされており、ただならぬ関係に見えました。美姫様の今日のご予定を樹様はご存知ですか?」

「否定。出掛けるとも何とも言ってなかった。」

「そうですか、、、怪しいですね。」


「その男性はどんな感じだった?」

「体つきはガッチリしていますが、好青年と言われるような見た目の男性です。」

「ん?さも今見ているように話しているけど、もしかして美姫たちの後をつけているのか?」

「はい。・・・あっ!2人が宝石店に入っていきました!」


 珠莉が意外なものを見たような声色で言った。


「美姫が男と宝石店に何の用事なんだろう?気になる。。。」

「そうですね。樹様、今日の予定を変更して美姫様を見張りますか?」

「珠莉はそれでいいのか?”夢の国”に行くのを楽しみしていたんだろう?」

「”夢の国”にはいつでも行けますが、美姫様と男性の関係を見極めるのは今日しかできませんから、私は大丈夫です。」

「それなら、そうしよう。」

「分かりました。東京駅に着いたら連絡下さい。」

「了解。」


 それから急いで支度をして東京駅に向かった。



「珠莉、美姫たちはまだ宝石店にいる?」


 東京駅に着いて珠莉に電話する。


「はい。店に入ってから楽しそうに宝石を選んでいたんですが、今はとあるブローチを買うかどうか迷っているようです。」

「了解。珠莉の位置情報を辿ってにそっちに行く。」

「お待ちしています。」


 珠莉のもとへ急ぐと、何故か鈴蘭もそこにいて、パンを食べながら珠莉と話をしているようだった。


「美姫さんとあの男性の関係はどういったものなのでしょう?」

「それが分からないから、こうやって見張っているのよ。」

「しかし、2人は親し気ですね。」

「そうね。樹様という方がいながら他の男性にも手を出しているなんて、いくら美姫様でも許せません。」


「これが俗にいう2股ってやつですかね?私は話でしか聞いたことがなかったので、身近な人物が2股をしている現場に出くわして、少しワクワクしています。」

「不謹慎よ。」

「それは珠莉さんも同じです。それに、珠莉さんは樹さんのことがお好きなのですよね?」

「えぇ、そうよ。それがどうかしたの?」

「だったら、美姫さんが樹さんではなくあの男性を選んだとしたら、その方が珠莉さんとしては良いのではないですか?」

「それはそうなのだけれど、樹様の悲しむところは見たくないの。」


「珠莉さんは健気ですね。」

「そんなことないわ。」

「華恋さんに長いこと仕えすぎて、珠莉さんは引くことに慣れすぎているのかもしれませんね。樹さんに対しては、もう少し押していった方がいいと思います。」

「そう言われてもね、、、」


 後ろから珠莉と鈴蘭の話を聞いているが、一向に2人は僕に気が付かない。


「見ているだけでは美姫さんとあの男性の関係が分かりませんね。」

「でも、手出しをしたら私たちのことが露見してしまうし、樹様が来られるまではこうやって見張っていることしかできないわ。」

「そこは私に任せて下さい。ちょっと私の力で美姫さんをよろけさせて――――」


「そんなことはしない方がいいぞ。」

「「!?」」


 2人はビクッとして後ろを振り向き、


「何だ、、、樹様でしたか。。。」

「脅かさないで下さい。」


 声を掛けたのが僕だと気が付いてホッとしたようだった。

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