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竜の女王  作者: M.D
2172年冬
341/688

30

「美姫ちゃん、無事で良かったわ。」


 寮に戻ると待っていた亜紀様が美姫を抱きしめた。


「お義母様、ご心配をおかけしました。」

「怪我はない?」


 亜紀様がペタペタ美姫の体を調べる。


「はい。麻由美大将閣下が反魔連の兵士をほとんど倒して下さったので、私は後ろをついていくだけのようなものでしたから。」

「麻由美が同行すると言っていたから美姫ちゃんの身に危険が及ぶことはないと思っていたけれど、実戦では何が起こるか分からないから、実際に無事な姿を見て安心したわ。」

「すみません。」

「悪いのは麻由美なんだから、美姫ちゃんが謝る必要はないわ。」


「でも、許可を頂けるとは思いませんでした。」

「美姫ちゃんが敵の掃討に参加するための許可を麻由美が求めてきたときには憤慨したものだけれど、麻由美が同行すると聞いて許可を出したの。他の部隊と一緒だったら許可しなかったわ。」

「それ程、麻由美大将閣下のことを信頼されているのですね。」

「麻由美は大将の位にありながら、今でも魔法軍で10本の指に入るほどの実力の持ち主だからね。麻由美の戦闘を見て、美姫ちゃんはどう思った?」


 亜紀様の眼光が鋭くなった気がした。


「それはもう凄まじいとしか言いようがありませんでした。」

「そうでしょうね。麻由美は敵を見つけ次第一撃必殺の最高効率で掃討していく戦い方をするから、美姫ちゃんがそう言うのも無理ないわ。」

「それに、麻由美大将閣下はそれを何十人という反魔連の兵士に対して両手で行われていたので、私が同行する必要などないのでは?と思うくらいでした。」

「でも、麻由美が美姫ちゃんの同行許可を求めてくるくらいだから、援護を期待していたんでしょうね。」

「そうみたいです。先に進むことを優先して麻由美大将閣下が無視した兵士を倒したり、牽制のための援護射撃をしたりしていましたので、少しは役に立てたと思っています。」


「亜紀様、そろそろお時間です。」

「そう。美姫ちゃん、会ったばかりだけれど私はもう行かないといけないから、また今度、今日のことを教えて頂戴。」

「はい。」

「じゃあね、美姫ちゃん。」


 左衛門さんに促されて亜紀様は足早に去っていった。


(亜紀は麻由美のことを疑っているようじゃったのう。)

(そうみたいですね。もしかして、敵の掃討に参加する許可を下さったのは、私が付いて行くことによって麻由美さんの秘密について何か分かるかもしれないと考えられたのかもしれませんね。)

(そうかもしれんが、初めての戦闘で疲れたじゃろうから、まずは一息入れるのじゃ。)

(はい。)


 丁度夕食時だったので、美姫と僕は戦闘服を脱いで汗を流し、夕食をとった。


(敵の掃討って、どんな感じだった?今回は麻由美さんにエレナ様の存在を悟られないように実況生中継がなかったから、気になっていたんだ。)

(私も、樹が狙撃をした時の様子を知りたいと思っていたの。)

(初めてにしては冷静に出来たと思うよ。)


 まずは僕から狙撃時の話をした。


(へぇ、限定思考って極度の緊張状態に陥るのを避けるのにも使えるんだ。それって、大学受験の時にも使えるんじゃない?)

(同意。でも、思考伝達があるんだし、美姫から分からないところを教えてもらえると思っていたら緊張なんてしないかも。)

(もう、樹君、ズルはダメよ。)


(それで、美姫の方はどうだったの?)

(お義母様に言ったように、麻由美さんは凄かったよ。エレナ様の補助を期待できないから、麻由美さんの攻勢に慣れるまでは置き去りにされないように付いて行くので精一杯だったんだから。)

(麻由美も美姫のことを考えて進行速度を落とす、などということは考えておらんようじゃたしのう。)

(それは、予想以上に反魔連の兵士が多くて、短時間で敵を掃討するという目的を達成するためには私への気遣いより前進を優先させたからではないでしょうか?)

(ワレには美姫を試しているように見えたがのう。)


(つまり、エレナ様が手助けをしなければならない状況を作り出すためですな。)

(グレンの言うとおりじゃ。)

(それじゃ、麻由美さんが美姫を同行させたのは、エレナ様の存在を暴くためだったのですか。)

(麻由美さんは私のことを融合者だと疑っていたし、そう考えるのが自然じゃないかな。)

(あの状況をそのために利用するとは、麻由美も侮れませんな。)

(そうじゃのう。戦闘中も、自分が融合者であることを隠すためか、全力を出しておらんかったしのう。)

(美姫が『麻由美大将閣下が無視した兵士を倒した』と言っていたのは、そのせいだったのか。それで美姫が怪我をしたらどうするつもりだったんだろう?)

(そうなればエレナ様に頼らざるを得なくなるかもしれないし、それも織り込み済みじゃない?)

(麻由美のことですから、そうなのでしょうな。)


(しかし、麻由美が持っておる悪魔の能力を見れんかったのは残念じゃったのう。)

(そうですね。あれだけの戦闘を悪魔の力を使わずに乗り切るのですから、麻由美さん自身の実力も折り紙つきですよ。)

(その実力は悪魔の呪いによって底上げされたものなのでしょうな。)

(どういうことですか?)

(麻由美は悪魔の呪いによって、魔力量が低下するのを防いでいるのじゃろう。)

(それで、麻由美さんは未だに中級魔法使いと同程度の魔力量を保っていられるんですね。)

(そういうことですな。)


(でも、そうだとすると、魔力量は30歳前後から減少するのですから、麻由美さんが悪魔と融合したのはかなり前、ということになりますね。)

(丁度、美姫や樹が生まれた頃じゃのう。)

(偶然、ですよね?)

(どうでしょうかな。いずれにせよ、今後はさらに警戒度を高める必要がありそうですな。)

(そうじゃのう。美姫も樹も気を付けておくのじゃ。)

(はい。)

(了解。)

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