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竜の女王  作者: M.D
2172年冬
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29

 作戦開始から8分後、戦闘音が止んだ。


「敵の掃討が完了したようだ。雄平中将閣下から帰還命令がでたから、僕たちも戻ろう。」

「はい。意外と早かったですね。」

「そう?小官はもっと早く終わるかと思っていたけど。」

「そうなのですか?」

「時間がかかったのは、美姫さんが一緒だから派手に暴れて巻き込まないよう麻由美大将閣下が全力を出さなかったからだろう。」

「それでも、元々2つの部隊が行うはずだった敵の掃討を2人で短時間で行ったのですから、十分凄いです。もう麻由美大将閣下だけでいいんじゃないですか?」

「ハハハ。そうだね。でも、上官がいつまでも出張っていては、下が育たないんだよ。」


 作戦本部に戻ると、


「樹君、良くやってくれた。」


 と、雄平中将が労をねぎらってくれた。


「ありがとうございます。」

「樹君が正規の軍人だったら1階級昇進させているところなんだが、残念だ。」


 雄平中将も作戦が成功して上機嫌だ。


「作戦は無事完了ね。」


 しばらくすると、疲れた様子の麻由美さんと美姫が作戦本部に戻ってきた。


「お疲れ様です。」

「やっぱり久しぶりに実戦に出るとしんどいわね。」

「であれば、もうお年なのですから、今後はこのように閣下自ら戦闘を行うようなことをなさらないで下さい。」

「何ですって?もう一度言ってくれないかしら?」

「申し訳ありません。つい本音が出てしまいました。」

「今の発言は私を心配してくれた結果、と受け止めておくわ。でも、雄平の言うとおりね。優秀な魔法使いも出てきたことだし、私が出張る必要は無くなくなるかもしれないわ。」


 麻由美さんは美姫と僕を見ながら言った。


「美姫もお疲れ様。」

「樹も。樹が配電盤の狙撃を成功させてくれたおかげで、反魔連の兵士たちも戸惑って反抗も激しくなかったから助かったよ。」


「そうよね。1発でも上手くいったら儲けものだと思っていたけれど、2発とも命中させるなんて望外の成果だわ。」

「樹君には『正規の軍人だったら1階級昇進させている』と言ったところでした。」

「昇進はそもそも無理だけれど、成果を出した樹君には何かご褒美をあげたいわね。」

「そうですね。何がいいでしょうか、、、」

「・・・仮想狙撃訓練施設の使用権なんてどうかしら?」

「良いと思います。」

「決まりね。これからは申請してくれたら仮想狙撃訓練施設を使用できるようにしておくわ。だから、存分に狙撃の力を向上させて頂戴。」

「それと、狙撃手の訓練に樹君を参加させる、というのは如何でしょうか?」

「いいわね。芙蓉も喜ぶと思うから、言っておくわ。」

「ありがとうございます。」


 麻由美さんと雄平中将の会話から、狙撃手の訓練を受けさせてもらえることになった。


「私も良いでしょうか?」

「美姫さんも?狙撃手が増えるのは大歓迎だけれど、私の後詰の役割を立派に果たしてくれたし、美姫さんは近接戦闘の方が向いていると思うけど?」

「そうかもしれませんが、狙撃の訓練も受けておきたいのです。」

「美姫さんは最終的に指揮官になるのだし、様々な兵種を理解しておくと部隊運用の幅が広がって良いかもしれないわね、、、いいでしょう、美姫さんにも樹君と同じ手配をしておくわ。」

「ありがとうございます。」


 そんな話をしていると、


「人質の救出完了しました。」

「了解。お疲れ様。」


 2人の佐官が作戦本部に入ってきて、


「さて、美姫さんと樹君には寮に戻る許可を出します。」

「もういいんですか?」

「初めての実戦で疲れたでしょう。それに、ここからは事後処理になるから予備戦力はもう必要ないわ。残りたいのだったら居てもいいけれど、面白くもないわよ。」


 麻由美さんはここで美姫と僕に作戦からの離脱をさせてくれるようだった。


「樹、どうする?」

「緊張して疲れたから、正直帰りたい。」

「そうね。私も早く帰って汗を洗い流したいし。」


「それじゃ、美姫さんと樹君はこれから帰寮してもらう、でいいわね?」

「はい。そうさせて頂きます。」

「2人とも軍人としての訓練を受けていない中で良くやってくれたわ。美姫さんも樹君もお疲れ様。」

「「失礼致します。」」


「士紋、2人を送ってあげて。」

「承知しました。」


 士紋大尉と作戦本部を出ると、和香がソワソワして待っていた。


「美姫様、樹様、ご無事でなりよりです。お二人が作戦に参加されると聞かされた時には驚きましたが、よく亜紀様が許可を出されましたね。」

「そこはよく分からないけど、麻由美大将閣下の必死の説得が実ったようだったよ。」

「そうでしたか。しかし、美姫様も樹様もまだ高校生なのですから、今後はこのようなことがないよう、左衛門様を通じて亜紀様にお願いをしておきます。」

「和香には心配をかけちゃったね。」

「本当ですよ。もし美姫様に傷をつけた者がいたら、どんな方法をもってしても見つけ出し、その何千倍もの痛みを味あわせてやるつもりでいました。」


(もし美姫が怪我をしていたら、和香なら実際にやりそうな気がする。)

(そうね。和香は変なところで行動力を発揮するから。)


「では、美姫様、樹様、戻りましょう。」

「うん。」


 こうして、僕たちは寮に戻ったのだった。

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