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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
33/688

18

 麗華さんが僕の方をちらっと見た。


「そうよ。こうすればいいんだわ。でも、そのためには。。。」

「何を独り言をいっておるのじゃ?」

「あなたに勝つ方法を考えていたのよ。」

「いい案は思いついたかのう?」

「身体強化した化け物に普通にやっても勝てるわけないじゃない。」

「なら、どうするのじゃ?」

「こうするのよ!」


 美姫さんとやり取りをしている間に、麗華さんは美姫さんと少し距離をとりつつ、魔導砲を放つ準備を整えていた。


「この位置なら、私の魔導砲を避けられたとしても、彼に当たるわよ。さて、美姫はどうするのかしら?」

「それがどうかしたのじゃ?」

「どうかした?って、美姫が避けたら彼に当たるのよ。何とも思わないの?」

「避けねばよいのじゃ。」


「美姫は、至近距離から魔導砲を受けたらどうなるか分かって言っているのかしら?」

「どうなるのじゃ?」

「あなたのそのきれいな顔がめちゃくちゃになるのよ。そして無様に死ぬの。」

「ほう。」

「美姫、私をバカにしているの?」

「そんなことはないのじゃが。」

「嘘よ!さっきからとぼけたような言動ばかりして。口調だって変わってるし。」

 

 麗華さんの手に魔導力が集まる。


「美姫、これが最後よ。今なら許してあげるわ。さあ、土下座しなさい!」

「先程も『これが最後よ』と言わんかったかのう?」

「うるさい!死になさい!」


 ゴーー!


 麗華さんは先程よりも強力な魔導砲を放ったが、


 バシッ!


 美姫さんが右手で払いのけると、軌道を変えられた魔導砲は屋上の入り口を粉々に破壊した。


「えっ!?何?どうなっているの?」

「もう終わりかのう?」

「今の魔導砲は”楯系”魔法使いでも、高校生なら防ぐのは難しい威力のはずよ!」

「この程度で、かのう?」


 麗華さんは心底驚いている、という表情だ。


「どうして?」

「何がじゃ?」

「どうして魔法の腕輪を持っていないあなたが私の魔法を払いのけることができるのか、って聞いているのよ!」

「理由などないのじゃ。できて当然のことじゃからのう。おぬしは何故腕が動させるのか?と聞かれて理由が言えるのかのう?」

「そんらのできるわけないらゃない!」


 麗華さんは混乱で呂律が回っていない。


「そう、偶然。あれは偶然だったのね。だから答えられない。そうでしょう。そうだと言いなさい!」

「偶然かどうかもう一度試してみてはどうじゃ?」

「強がるのも今のうちよ。」


 麗華さんが再度魔法を放つ準備に入ろうとするが、


「ひぃ!」


 美姫さんに睨まれ、恐怖でうまく魔法を発動できないでいるようだった。


「どうしてなの!」

「さて、次はおぬしの番じゃのう。これだけのことをしたんじゃ、覚悟はできておるんじゃろうのう。」


 美姫さんがゆっくりと麗華さんの方へ歩いていく。


「こっちに来ないで!」

「先程の威勢はどうしたのじゃ。」

「もう謝罪はいいわ。許してあげる。」

「許してもらう理由はないのう。」

「許してあげるからこっちに来ないで、って言っているでしょ!好美、何とかしなさい!」

「・・・。」

「好美!何をしているの!」


 屋上の入り口の方を見ると、好美さんが倒れこんでいた。


「どういうこと?」

「あやつなら無力化済みじゃ。」

「いつのまに。。。」

「移動する直前じゃ。助けに来れんよう、最初に無力化しておくのは基本じゃろう。」

「征爾といい好美といい、使えないわね!」

「自分についてきてくれる友達にいう台詞ではない、と思うがのう。」

「友達じゃないわ。部下よ。」

「その言いようは嘆かわしいことじゃのう。」

「うるさい!私たちは美姫には関係ないでしょ!」

「そうじゃのう。で、どのような痛めつけられ方がよいのじゃ?」

「こっちに来ないで!」

「・・・。」


「ひぃ!」


 麗華さんはへたり込んでしまった。


「さて、これで終わりじゃ。」


 美姫さんが手を麗華さんの方に向けると麗華さんは気を失い、その周りに水たまりが広がっていった。

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