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昼食用のサンドイッチと飲み物を買って生徒会室に戻ると、
「御姉様、遅いですの。どこに寄り道されていましたの?」
華恋が不満そうな顔をしていた。
「ゴメン。職員室から戻る途中で聡君を見つけて、売店に寄ってたから遅れてしまったの。だから、これはそのお詫び。」
美姫は売店で買ったお菓子を華恋に渡す。
「ありがとうございますの。・・・で、そいつは誰ですの?」
「知ってて言ってるだろ?それに、美姫さんが俺の名前を言っていただろう?」
「勿論あなたが魔法科3年に在籍する渡辺家の聡だってことは知っていますの。もしかして、休校なのに登校してしまったのですの?」
「うるせぇ。」
「ぷっ。1週間休校なのは昨日生徒全員に連絡されていましたのに、情報端末を確認しなかったのですの?」
「あぁ、確認しなかった俺が悪いのは認めるが、先輩を呼び捨てにするのはどうなんだ?」
「桐生家本家筋の私に名前で呼んでもらえるだけでもありがたいと思いますの。」
「何だと!?」
「まぁまぁ、2人とも。聡も腹が空いているんだろう?とりあえず、座って食べよう。」
「分かった。」
聡をなだめすかして、席に座らせる。
「さて、どれから食べようかな?」
「丸印の卵サンドイッチ。。。」
「佐伯さんも好きなのか?」
「うん。」
「ちょっと食べる?」
「うん。」
「どれにする?」
「厚焼卵。」
「おっ、通だね。3種類の中では1番不人気だけど、俺も厚焼卵が1番好きなんだ。」
「洋風だしが絶品。」
「分かっているねぇ。食いねぇ、食いねぇ。」
聡が佐伯さんに厚焼卵のサンドイッチを渡す。
「聡、私にも分けてよこしますの。」
「桐生家本家筋のお嬢様ともあろう者が、俺の買ってきたサンドイッチを横取りしようとするのか?」
「そんなことありませんの。ヒロポンにも分けていたのですから、私に分けてくれても良いはずですの。」
「やってもいいが、お願いの仕方があるんじゃないのか?」
「・・・。」
「そうか。そこの1年生は丸印の卵サンドを食うか?」
聡が無言の華恋を無視して道夫君に聞く。
「はい。ゆで卵のサンドイッチを頂けますか?」
「君はゆで卵派か。」
「ゆで卵自体に味が付いていて美味しいんです。パンに挟まず、ゆで卵単体で売ってほしいくらいです。」
「なら、ゆで卵を存分に食べるがいい。そして、残ったパンを華恋に渡せばいい。」
「ムッキー。どうしてミッチーが中の具で、私がパンだけですの!?私はサンドイッチが食べたいのですの!」
聡の煽りに憤る華恋だったが、
「華恋ちゃん、樹と私が買ったサンドイッチもあるから、食べる?」
「食べますの!流石は御姉様!一生ついて行きますの!」
感動のあまり美姫に抱きついた。
「美姫さんは甘いなぁ。」
「聡君も華恋ちゃんが根は良い子だって分かっているでしょ。それに、同じことを言われたら聡君も嫌じゃない?」
「まぁ、そうだな。」
「珠莉もサンドイッチ食べる?」
「ありがとうございます。頂きます。樹様はどうされますか?」
「見てるだけというのも何だから僕も食べようかな。美姫はどうする?」
「私も食べることにするよ。」
結局、皆で休憩がてらに軽食としてサンドイッチを食べることになった。
「休校なのに生徒会の仕事って何をしているんだ?」
買ってきたサンドイッチを食べ終わった聡が僕に聞いてきた。
「具体的にはこれから決めるんだけど、今回の件で心に傷を負ってしまった生徒、特に1年生のお世話をしたり、生徒から意見を聞いて先生達と協議したりすることになるんじゃないかな。」
「へぇ、樹は生徒会役員でもないのに大変だな、、、と言おうと思ったけど止めにする。」
「聡、どうしたんだ?」
「樹は両手に花で羨ましすぎるから、少しくらい大変な目にあった方がいい。」
「聡は僕の両脇に美姫と珠莉が座っているのが気に食わないのか?」
「だってそうだろう?どうして樹だけなんだ。。。俺にも春が来たっていいだろう?あぁ、どこかに俺のことを好きになってくれる人がいないかなぁ。」
「渡辺君、気が散る。」
「ヒロポンもいいこと言いますの。聡はうるさいですの。」
「僕も渡辺先輩は騒々しいと思います。」
「生徒会に俺の味方はいないのか。。。」
佐伯さん、華恋、道夫君の3人から邪険にされて聡は凹んでいる。
「聡さんにもそのうちいい人ができますよ。」
「予約済みの珠莉に言われてもなぁ。」
「よろしければ、同級生を紹介しましょうか?」
「いや、今の”銃剣系”の2年生は気の強い女子ばっかりで、付き合っても気が休まらないと思うから遠慮しとく。」
「そうですか。では、聡さんはどのような方がお好みなのですか?」
「そうだな、、、俺にだけに優しいお淑やかなメリハリのある体形の美人、かな。」
聡の答えを聞いて、そんな人いない、という顔を皆がした。
「夢を見すぎ。」
「そうですの。そんな事を言っているから彼女ができないですの。」
「渡辺先輩、もう少し現実を見ましょう。」
「言いたい放題言うなぁ。」
またしても3人から全否定されて、聡は凹んだ。
「聡、ドンマイ。」
「樹にだけは言われたくない!」




