17
麗華さんの手に魔導力が集まるのと同時に、
(美姫、体を借りるのじゃ。)
(はい。お願いします。)
美姫さんが動いた。
ドンッ!
ゴーー!
征爾さんが麗華さんを突き飛ばし、魔導砲は地下都市の天井に向かって放たれた。
「何をするの!」
「こうしなければお嬢様が危のうございました。」
「どういうこと?」
「あれをご覧下さい。」
麗華さんが僕の近くに美姫さんが立っているのを見て驚いている。
「嘘!どうして美姫がそこにいるの!?」
「一瞬であの距離を移動し、さらにお嬢様の右腕を狙っていました。」
「そんなことできるはずはないわ。1年生だからまだ身体強化も教わっていないのに。」
「しかし、これは現実です。身体強化をせずにあの動きをするとは、どのような体術を使ったのか分かりませんが。」
「どういうことなのか説明しなさい!」
美姫さんを麗華さんが睨みつけたが、
「樹を傷つけることを許すわけにはいかんのじゃ。」
「ひぃ!」
美姫さんに睨み返された麗華さんが怯えた表情を見せた。
「お嬢様は私の後ろに下がっていて下さい。」
「分かったわ。」
征爾さんが麗華さんをかばう様に美姫さんとの間に入る。
「何なのよ、全く。」
「お嬢様を傷つけるようなことは私がさせません。」
「そうよ。私には征爾がいるのだったわ。」
麗華さんは少し落ち着きを取り戻したようだった。
「その男がどうかしたのじゃ?」
「征爾は去年の武術大会で高校2年生だったにも関わらず、一般の部で準々決勝まで進んだのよ。あなたにかなうかしら。」
「・・・。」
「あら、何も言えないの。強がりもここまでかしら。」
「次は、その男に頼るわけかのう。」
「うるさい!征爾、やっておしまい。」
「はい。お嬢様。」
征爾さんが美姫さんと対峙するように立ち、言葉を投げかける。
「美姫さん、私からもお願いします。お嬢様に謝罪して頂けませんか?」
「できぬ相談じゃ。」
「何故です?美姫さんにも矜持があるとは思いますが、それを捨てて謝罪をすれば痛い思いをしなくても済みます。」
「それはおぬしの主人にも言えることではないかのう?ワレらに関わらなければよかろう。」
「話は平行線ですね。女性に手をかけたくはありませんが、お嬢様のご命令です。」
「よかろう。」
「では、行きます。」
一瞬にして間合いを詰めた後、征爾さんの突き。
体をひねって美姫さんはそれをかわす。
征爾さんは突きの体勢から連続して蹴りへ。
美姫さんは後ろに下がってかわす。
体を回してもう一度蹴り。
しゃがんでかわす。
「征爾、手を抜いているんじゃないでしょうね?」
「すみません、お嬢様。美姫さんに脅威を感じてもらって、謝罪をしたいと思ってもらえると良かったのですが。」
「それでも、征爾の攻撃が当たらないなんて。」
「そうですね。美姫さんはかなり体術の心得があるようです。」
「美姫、あなた何者?」
「・・・。」
「無視するとはいい度胸ね。征爾、今度は全力で行くのよ。」
「はい、お嬢様。」
「美姫、これが最後よ。私に謝りなさい。そうしたら許してあげるわ。」
「しつこい奴じゃのう。つべこべ言わず、かかってきたらどうじゃ。」
「私の厚意を無視するなんて、どうなっても知らないわよ。」
「・・・。」
「美姫の気持ちはよーく分かったわ。征爾、やっておしまいなさい。」
「はい、お嬢様。」
征爾さんの体がぶれ、美姫さんに蹴りを放ったようだったが、
「うっ!」
蹴りが届く前に、美姫さんが繰り出した手刀により征爾さんの意識が飛ぶ。
「征爾どうしたの?何故あなたが倒れているの?」
「美姫の体に傷をつけるわけにはいかんからのう。一撃で仕留めさえてもらったのじゃ。」
「そんなわけないわ!征爾が一撃で倒されるわけないじゃない!さっきといい、今といい、一体どういうことなのよ!」
「どういう事じゃろうのう。」
「美姫、もしかして身体強化ができるのね?」
「何のことじゃ?」
「しらばっくれても私には分かるわ。だって、そうじゃなかったら今までのことに説明がつかないもの。そうよ。きっとそうだわ。」
「おぬしは何を言っておるのじゃ?」
「でも、そうだとすると、今の私では美姫には勝てない。どうすれば。。。」