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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
32/688

17

 麗華さんの手に魔導力が集まるのと同時に、


(美姫、体を借りるのじゃ。)

(はい。お願いします。)


 美姫さんが動いた。


 ドンッ! 


 ゴーー!


 征爾さんが麗華さんを突き飛ばし、魔導砲は地下都市の天井に向かって放たれた。


「何をするの!」

「こうしなければお嬢様が危のうございました。」

「どういうこと?」

「あれをご覧下さい。」


 麗華さんが僕の近くに美姫さんが立っているのを見て驚いている。


「嘘!どうして美姫がそこにいるの!?」

「一瞬であの距離を移動し、さらにお嬢様の右腕を狙っていました。」

「そんなことできるはずはないわ。1年生だからまだ身体強化も教わっていないのに。」

「しかし、これは現実です。身体強化をせずにあの動きをするとは、どのような体術を使ったのか分かりませんが。」

「どういうことなのか説明しなさい!」


 美姫さんを麗華さんが睨みつけたが、


「樹を傷つけることを許すわけにはいかんのじゃ。」

「ひぃ!」


 美姫さんに睨み返された麗華さんが怯えた表情を見せた。


「お嬢様は私の後ろに下がっていて下さい。」

「分かったわ。」


 征爾さんが麗華さんをかばう様に美姫さんとの間に入る。


「何なのよ、全く。」

「お嬢様を傷つけるようなことは私がさせません。」

「そうよ。私には征爾がいるのだったわ。」


 麗華さんは少し落ち着きを取り戻したようだった。


「その男がどうかしたのじゃ?」

「征爾は去年の武術大会で高校2年生だったにも関わらず、一般の部で準々決勝まで進んだのよ。あなたにかなうかしら。」

「・・・。」

「あら、何も言えないの。強がりもここまでかしら。」

「次は、その男に頼るわけかのう。」

「うるさい!征爾、やっておしまい。」

「はい。お嬢様。」


 征爾さんが美姫さんと対峙するように立ち、言葉を投げかける。


「美姫さん、私からもお願いします。お嬢様に謝罪して頂けませんか?」

「できぬ相談じゃ。」

「何故です?美姫さんにも矜持があるとは思いますが、それを捨てて謝罪をすれば痛い思いをしなくても済みます。」

「それはおぬしの主人にも言えることではないかのう?ワレらに関わらなければよかろう。」

「話は平行線ですね。女性に手をかけたくはありませんが、お嬢様のご命令です。」

「よかろう。」

「では、行きます。」


 一瞬にして間合いを詰めた後、征爾さんの突き。

 体をひねって美姫さんはそれをかわす。


 征爾さんは突きの体勢から連続して蹴りへ。

 美姫さんは後ろに下がってかわす。


 体を回してもう一度蹴り。

 しゃがんでかわす。


「征爾、手を抜いているんじゃないでしょうね?」

「すみません、お嬢様。美姫さんに脅威を感じてもらって、謝罪をしたいと思ってもらえると良かったのですが。」

「それでも、征爾の攻撃が当たらないなんて。」

「そうですね。美姫さんはかなり体術の心得があるようです。」


「美姫、あなた何者?」

「・・・。」

「無視するとはいい度胸ね。征爾、今度は全力で行くのよ。」

「はい、お嬢様。」


「美姫、これが最後よ。私に謝りなさい。そうしたら許してあげるわ。」

「しつこい奴じゃのう。つべこべ言わず、かかってきたらどうじゃ。」

「私の厚意を無視するなんて、どうなっても知らないわよ。」

「・・・。」

「美姫の気持ちはよーく分かったわ。征爾、やっておしまいなさい。」

「はい、お嬢様。」


 征爾さんの体がぶれ、美姫さんに蹴りを放ったようだったが、


「うっ!」


 蹴りが届く前に、美姫さんが繰り出した手刀により征爾さんの意識が飛ぶ。


「征爾どうしたの?何故あなたが倒れているの?」

「美姫の体に傷をつけるわけにはいかんからのう。一撃で仕留めさえてもらったのじゃ。」

「そんなわけないわ!征爾が一撃で倒されるわけないじゃない!さっきといい、今といい、一体どういうことなのよ!」

「どういう事じゃろうのう。」


「美姫、もしかして身体強化ができるのね?」

「何のことじゃ?」

「しらばっくれても私には分かるわ。だって、そうじゃなかったら今までのことに説明がつかないもの。そうよ。きっとそうだわ。」

「おぬしは何を言っておるのじゃ?」

「でも、そうだとすると、今の私では美姫には勝てない。どうすれば。。。」

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