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竜の女王  作者: M.D
2172年冬
315/688

04

<16:23>


 反魔連の兵士に連れられて純一先生や他の魔法使いの先生が講堂に入ってきた。


(純一先生の頬に殴られた跡がある。)

(私たちのために抵抗してくれたんじゃないかな?)


「おい!どこに行こうとしている?」

「生徒たちを不安がらせないよう、近くに座ろうとしているだけだ。お前たちも、生徒が騒ぐよりましだろう?」

「・・・いいだろう。魔法を封じられて何もできやしないんだしな。」


 そんな反魔連の兵士とやり取りをして、純一先生は僕たちの近くに座る。


「先生、、、」

「心配するな。国防軍がすぐに助けに来てくれる。」


 不安な生徒の呼びかけに純一先生は明るい声で答えた。


「それはどうかな?」

「何?」

「すぐに分かるさ。」


 不敵な笑みを浮かべて、純一先生を連れてきた反魔連の兵士は別の場所に移動した。


(樹はどういうことだと思う?)

(さっきの兵士の言葉?)

(そう。反魔連は国防軍にも何か仕掛けているのかな?)


(おそらくそうでしょうな。)

(グレンさんは何かご存じなのですか?)

(今回はどうなのか分かりませんが、事を起こそうとした時に国防軍の戦力を分散させようと多数の場所で同時に破壊活動を行うのは常套手段ですからな。)

(それに、ここにいる反魔連の兵士は人魔薬を使っているから、魔法軍でないと対処はできないわ。だから、反魔連は魔法軍を釣りだすような破壊活動を各地で行っているのでしょうね。)


(国防軍が当てにならないとすると、僕たちだけで何とかしないといけないのか。)

(そのようね。ピアリスさんは魔封錠を壊すことができますか?)

(えぇ、可能よ。こんなちゃちな魔封錠で私を拘束しようなんて、反魔連は私が融合者だと知らなかったのね。)

(もっと強力な魔封錠もあるのですか?)

(そうよ。融合者や中級以上の魔法使いなら、こんなちゃちな魔封錠なんて一瞬で壊すことができるから、拘束しようと思ったら相応の強さの魔封錠を使わないといけないわ。生徒の安全を考えて私が素直に従ったから、反魔連の兵士も勘違いしてしまったのかもしれないわね。)



「さて、東大附属高校の魔法使いは全員そろったようですね。」


 そう言って、小太りな兵士が僕たちの前に出てきた。


「私は反魔法使い連盟の里崎です。ここの責任者をしています。皆さんが何故ここに集められたのか説明しましょう。

 皆さんは我々反魔法使い連盟が何を目指しているかご存知ですよね?そうです。魔法使いの排除です。魔法使いは『悪魔から都市を守ることができるのは自分たちだけだ』と言って権力を欲しいままにし、一般人が収めた税金を自分たちのために湯水のように使う。こんなことは許されません。

 そこで我々は皆さんを交渉材料として政府に都市国家東京から魔法使いの追放を要求しようと考えた次第です。」

「魔法使いを追放したら悪魔と誰が戦うんだ?」

「いい質問です。悪魔と戦うのはもちろん我々です。適性さえあれば、魔法使いでなくても悪魔を倒す手段を手に入れられる時代になったのです。」

「だからといって――――」


 パンッ!


 小太りな兵士が撃った弾丸が発言しようとした先生の頬をかすめ、講堂の壁を穿つ。


「兵士が『弾丸には対魔法使い用の加工がされている』とお教えしたと思いますが、この弾丸は悪魔にも有効なことが実証されています。それ故、魔法使いがいなくても、我々だけで都市を守ることができるのです。」

「それは不可能だ。なぜなら――――」


 パンッ!


「用済みになったことに対する弁明をしたい気持ちは分かりますが、御託を聞く気はありません。話は以上です。」


 小太りな兵士は強引に話を終わらせて、元の場所に戻っていった。


(自分が不利になるような発言をしようとすると力で抑え込むとは、手練れておりますな。)

(あの小太りな兵士は、反魔連の兵士だけでは都市を守れない、と分かっていて言っていると?)

(そうでしょうな。あの者はそのことが分かっているからこそ、末端の兵士に真実を知られたくないのでしょうな。)

(だってそうでしょう。今時の都市防衛装置は”楯系”魔法使いしか起動できないのよ。いくら一般人が魔法を使えるようになったとしても、都市防衛装置を起動できなければ悪魔から都市を守ることなんてできないわ。)

(”楯系”魔法が使えるようになる人魔薬があったとしたらどうでしょうか?)

(それはないんじゃないかしら?)


(ワシもピアリスと同意見ですな。もし、反魔連が”楯系”等の系統魔法を使えるようになる人魔薬を開発していれば、”対魔法使い用の加工がされた弾丸”を込めた銃を使わずに魔導弾を撃っているでしょうからな。)

(成程。そうですね。)

(奴らが魔法を使えるようになったと言っても、せいぜい身体強化と弾丸に魔導力を纏わせることだけのようですな。)


(そのようね。さっき小太りが撃った弾丸は魔導力で覆われていたから、魔法使いが使う狙撃銃型補助具を改良した銃で特殊加工された弾丸を撃っているのだと思うわ。)

(ピアリスさんはあの二発だけでそこまで分かるなんて、凄いです。私には、弾丸が魔導力で覆われていた事すら分かりませんでした。)

(経験と知識の差ね。美姫さんも経験を積めばできるようになるわ。)


(しかし、都市国家東京から魔法使いを追放して権力を手にしたい、という欲求を満たすために学生を人質にとるとは許せませんな。)

(そうね。反魔連は権力を手に入れて好き勝手したいだけなんだから。)

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