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竜の女王  作者: M.D
幕間9
311/688

02

「閑散としているかと思いきや、それなりに人がいますね。」

「休日出勤してる人たちがこんなに多いとは思わなかった。」

「休日に働くなんてご苦労様なことですね。」

「珠莉も普段はそうだろう?華恋にこき使われて。」

「言われてみればそうですね。でも、華恋様には言わないで下さいね。」


 そんな話をしながら散策を続けていると、昼前になっていた。


「珠莉、昼ご飯はどうする?適当に店を探す?」

「この近くに”空飛ぶ鶏の嘴”というラーメン屋さんがあるので、そこにしませんか?」

「何?その変な名前の店は。」

「鶏尽くしのラーメンを提供するって有名なんですよ。」

「・・・さては、南側に行こうと言ったのは、そのラーメン屋に行きたかったからだな?」

「バレてしまいましたか。華恋様と一緒にいるとラーメン屋さんになんかいけませんし、食べにくる機会を伺っていたんです。」

「じゃぁ、そこにするか。」

「はい。」


 ”空飛ぶ鶏の嘴”というラーメン屋の前まで来ると、3人外に並んでいるのが見えた。


「外まで並んでるなんて、珠莉の言うとおり人気がある店みたいだ。」

「でしょ。回転が速くてそんなに待つこともないと思いますので、並びましょう。」

「了解。」


 並んでいると、次々に客がやってきて後ろに並ぶ人が増えてくる。


「来た時旬が良かったみたいだ。」

「ちょっと遅かったら結構待たないといけなかったかもしれませんね。」


 その後はほとんど待つことなく店に入ることができ、注文をするとすぐにラーメンが出てきた。


「白湯スープ、鶏チャーシュー、煮卵。確かに鶏尽くしだ。」


 ズズッ


「旨い。」

「ですね。この鶏皮餃子も美味しいらしいですよ。はい、どうぞ。」


 珠莉は箸で餃子をつまみ、僕の方に向けてきた。


 パクッ


「旨い。」

「ふふふ。樹様とこうやってラーメンを食べれるなんて、幸せです。」

「そ、そう?」


 そんなことをしている僕たちを見る周囲の目が心なしか厳しい気がした。



「美味しかったですね。」

「同意。このくらいの季節だとラーメンを食べた後に外に出ても汗をかかないからいい。」

「もう少し寒かったら、外で待つ気にはなれませんしね。」


 店を出ると、再び僕の腕に珠莉が腕を絡めてくる。


「この後、どうしますか?」

「同じ道を戻るのも味気ないから、東の方に移動して東京駅から帰る?」

「いいですね。東京駅に行くのなら百貨店に寄っていいですか?折角なので服を見てみたいです。」

「女性は買う訳でもないのに服を見て回るのが好きだね。」

「小さい頃に着せ替え人形で遊んだのと同じ感覚なのかもしれません。」


 それから東京駅までブラブラ歩いて百貨店に入り、


「樹様、これ、可愛いですか?」

「似合っていると思うよ。」


 珠莉に付き合って服を見ていると、


「あっ!」


 そこで美姫と佐伯さんにばったり出会ってしまった。出会ってしまったのだ。


「い、いつき様、鬼です。黒鍔村で見たのと同じ鬼がいます。」

「珠莉、まだ生成りだから大丈夫だ。真成ではないから、今の僕達なら勝ち目はあるはずだ。」

「だーれーが、鬼ですって?それに、樹、何が大丈夫なのかな?」


 僕たちを見る美姫の顔に般若の面が張り付いているように感じた。


「美姫、偶然。佐伯さんと買い物中?」

「うん。樹は珠莉とデート中?」

「・・・。」

「そうです。樹様と私は今デート中です。」


(必死で言い訳を考えていたのに、珠莉が先に答えてしまった!)


「そう。楽しそうでいいね。」

「はい。美姫様に会うまでは凄く楽しかったです。」

「ふーん。そうだったんだ。」


「女同士の争いは怖い。」

「禿同。というか、佐伯さんも女性だよね?」

「客観的事実。」


 佐伯さんは、我関せず、といった感じで、冷静に美姫と珠莉の言い争いには加わらないようだ。


「樹が今朝コソコソしていたのは、珠莉とのデート前で私に見つからないようにするためだったのね。」

「そのとおりですが、樹様の行動を美姫様が縛る権利はないと思います。」

「えぇ、そうね。でも、樹は私のお願いは聞いてくれるよね?」

「・・・肯定。」

「じゃぁ、これからは4人で行動しましょう。」

「折角、樹様と2人きりでデートする日だったのに、、、でも、今日は樹様と十分絆を深められたので、これまではいい日だったと思うことにします。」

「どんなことをして絆を深めたのか樹には後で教えてもらうことにするね。」


 その後は美姫の提案通り4人で服を見て回ったりお茶したりしたのだが、


(樹は珠莉とどんなデートをしたのかな?)


 という美姫の疑問を解消するために、次の日曜日に今日と全く同じ道順を辿らされたのだった。

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