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「そう言うことなの。まずは、この前来られなかったことと、そのあと連絡をよこさなかったことについて、土下座して謝罪してくれるかしら。」
「どうして私が土下座しないといけないのですか?」
「私の話をちゃんと聞いていたの?私の言うことに従わなかったからじゃない。美姫はそんなことも分からないお馬鹿さんなの?」
「・・・。」
「早く謝らないか!」
好美さんが私を土下座させようした。
「好美、強要は良くないわ。」
「申し訳ありません。」
「どうしても謝りたくないの?」
「私が謝る理由がありません。」
「それじゃぁ、謝りたくなるようにしてあげるわ。これ何か分かるかしら。」
麗華さんが服の袖をまくって手首をみせる。
「魔法の腕輪!?厳しく管理されているはずなのに何故先輩が持っているんですか?」
「私は六条麗華よ。こんなのどうにでもなるわ。これを使って彼に魔法を放ったらどうなるかしらね。」
笑みを浮かべながら、手を樹君に向ける。
「樹君にひどいことをしないで。」
「それはあなた次第よ。さあ、土下座して謝りなさい。」
(麗華とやらは、強要はよくないと言っておらんかったかのう?)
(物理的な強要はよくないけれど、言葉による間接的な強要はいい、とでも考えているのではないでしょうか?)
(美姫、意外と冷静じゃのう。しかし、やつも物騒なことを考えおるのう。美姫、やつが魔法を放とうとしたら樹を助けるのじゃ。)
(はい、エレナ様。でも、私の力では樹君を助けることはできないので、エレナ様が私の体を使って下さい。)
(うむ、では使わせてもらおうかのう。それに樹の演算領域も使えるから、樹を助けるのは容易いことじゃ。)
(いつでもエレナ様が私の体を使えるようにしておきますので、樹君のことをよろしくお願いします。)
「そう、嫌なの。それじゃ、彼に頼んでもらいましょうか。征爾、彼を起こしなさい。」
「はい、お嬢様。」
樹君を拉致し拘束していた生徒が樹君の頬を打つ。
◆ ◇ ◆ ◇
「う、うっ。」
「おはよう。ここがどこだか分かる?」
周囲を見渡すと空を模した地下都市の天井とフェンスが見える。
「学校の屋上?」
「そう、屋上よ。私が誰だか分かるかしら?」
「六条麗華先輩です。」
「そうよ。」
少し時間がたつと認識力が戻ってきて、麗華さんが僕の前に立っていて、自分が拉致されたのだと分かった。
「美姫さんは!?」
「彼女ならあそこにいるわよ。」
麗華さんが指さすほうを見ると、美姫さんは無事なようだった。
(美姫さんは大丈夫?何もされていない?)
(うん、私は大丈夫よ。それより樹君は体痛くない?スタンガンを使われたから。)
体を少し動かしてみるが問題なさそうだ。
(体に痛みとかはなさそう。今はどういう状況?)
(私が麗華さんのところに挨拶に行かなかったから、麗華さんのお友達が樹君を拉致して、私に謝らせようとしているみたい。)
(意味が分からない。)
(それで、私が謝るのを拒否していたら、樹君に魔導砲を打ち込むと脅して、私に謝るよう言わせようとしているのよ。)
(無茶苦茶。でも状況は良くないな。)
(そうじゃ。麗華とやらなら本気で樹に魔法を放ちかねんからのう。)
(エレナ様、僕に何かできることはありませんか?)
(ないのじゃ。それに、変に動かれると困るから、とりあえずはじっとしているのじゃ。)
(了解です。でも、じっとしていることしかできないなんて、ふがいないです。)
(仕方なかろう。樹は普通の人間なんじゃから、この状況に対処できんで当然じゃ。)
(僕にもっと力があれば、この事態を打破できるのに。)
(これから努力していけばよかろう。それよりも今じゃな。)
(はい。)
「何をじっと見つめあっているの、気持ち悪い。まぁ、そんなことはどうでもいいわ。あなたにお願いがあるの。」
「何でしょうか?」
「あなたからも美姫に土下座して謝るように言ってもらいたいの。」
「何故ですか?」
「美姫は私のところに挨拶に来なかったでしょう。それについて謝罪してほしいのよ。でも、彼女、頑固だから私に謝ろうとしないの。だからあなたからも謝るように言ってもらいたいの。」
「拒否します。意味が分かりません。」
「どうしても?」
麗華さんが手を僕の方に向けているのが分かった。
「それは魔法の腕輪!?どうして持っているんですか?」
「あなたも美姫と同じことを言うのね。どうしてかって?それは私が六条麗華だからよ。そんなことよりも、ほら、美姫に土下座して謝るように言って頂戴。」
「拒否します。」
「そう。残念。」
麗華さんが美姫さんに声をかける。
「あー可哀そうに。あなたのせいで、彼は大けがをしてしまうのよ。美姫はどうしたらいいか分かるわよね?」
「分かりません。」
「本当に物分かりの悪い子ね。」
「樹君を傷つけるのはやめて下さい。」
「謝罪はしたくないけれど、魔法は止めろって、都合よすぎない?仕方ないわ。彼に罪の償いをしてもらいましょう。」




