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竜の女王  作者: M.D
2171年秋
302/688

27

「美姫様、ご無事で何よりです!」


 一直線に和香が駆けてきて、美姫に抱きつく。


「ちょっと、和香、離れて。」

「そうだぞ。美姫様に抱きつくなどうらやま、、、けしからん。」


 龍野家の情報収集部隊の部隊長と思われる人が和香を美姫から引き離した。


(部隊長よ。お前もか。)


「それにしても和香は来るのが早かったね。連絡してからまだそんなに経ってないはずだけど。」

「それは私の美姫様への愛がなせる技です。」

「世迷言はいいとして、本当の理由は?」

「良くないのですが、『ジョージ王子が日暮里にいる』と美姫様から連絡を受けたことから、反魔連の研究施設である可能性が高いと判断し、独自の情報網から得た研究施設の概要に照らしあわせて、怪しいと思われたこの付近に待機していたためです。」

「そうだったの。そのことはロンドンと東京の魔法使いによる合同捜索隊には伝えてあるの?」

「はい。ただし、我々がここに踏み込む直前になりますが。」


(合同捜索隊に情報を伝えるという義理は果たしつつ、龍野家が先に突入して美味しいところをもっていこうという考えか。)

(そうみたいね。)


「それにしても、ジョージ王子も無事だったことは良いのですが、その護衛もここにいるのはどういう訳でしょうか?状況を見る限りでは、護衛がジョージ王子を裏切ったと思われてもおかしくないですが。」

「そのことについては後で話すよ。」

「分かりました。それでは、この後我々がどのようにすればよいかご命令下さい。亜紀様から『美姫様の判断に従うように』と言われております。」

「そうね、、、」


(樹、どうしたらいいと思う?)

(和香が言うように、この状況で合同捜索隊が来たら確実にジョージ王子の護衛が誘拐犯と分かってしまうし、何とかうまく切り抜けられればいいんだけど。)

(そうよね。誘拐もジョージ王子のことを思ってのことだから、私も護衛の人たちが罪に問われないような方法があればいいと思う。)

(六波羅と反魔連の工作員がここにいなければ、何とか言い訳も出来そうな気がするんだけど、、、)

(それよ!和香たちに六波羅と反魔連の工作員を捕らえて先に連れ出してもらえば、ここにはジョージ王子と護衛の人たちしか残らないから、誘拐犯が逃げ出した後に護衛の人たちが助けにきたことにできるんじゃない?)

(いい案だと思う。)

(でしょ。じゃぁ、この線で進めましょう。)


「和香たちは六波羅と反魔連の工作員を捕まえることはできる?」

「もちろん可能ですが、六波羅と言うのはあの医者の姿をしている者のことでしょうか?」

「そうよ。」

「我々にお任せ下さい。ジョージ王子と護衛についてはどうなされますか?」

「私に考えがあるから、合同捜索隊に任せることにする。」

「承知しました。」


 情報収集部隊の隊員が反魔連の工作員を取り押さえ、六波羅も捕らえようと近づいた時、


「そうはさせません。」


 六波羅の傍らに立っていた看護婦が六波羅を守るように前に出た。


(あの人は、ただの看護婦ではなく六波羅の護衛を兼ねていたのか。)

(ずっと側においていた、ってことは信用している証だろうし、もしかすると亜門さんよりも強いのかもね。)

(だとすると厄介だ。)


「この人数に対して1人で勝ち目があるとお思いか?」

「やってみなければ分かりませんよ。」


 情報収集部隊の隊員と看護婦が睨み合いをしていると、


「不二子、いいんだ。」

「御兄様、しかし、、、」

「お嬢さんは我々を”保護”しようとしてくれているのだ。そうだろう?」


 看護婦を制して六波羅が美姫に話しかけた。


「はい。”お二人”についてはそれなりの処遇をお約束します。」

「そう言うことであれば、大人しく捕まろう。」


 美姫の回答を聞いた六波羅はニヤリとして情報収集部隊の隊員の指示に従うことを承知した。


(『お二人』とは美姫も上手いこと言う。)

(六波羅の言い方に含みがあったから、自分たちだけを優遇するよう言っているのだと思ったのよ。)

(だとすると、六波羅は反魔連の純粋な構成員じゃないのかもしれない。)

(そうね。反魔連から龍野家に乗り換えたい、という意思が感じられるし。)


「美姫様、この者たちをどのように連れ出しましょうか?出入り口から出てしまうと、合同捜索隊と鉢合わせすることになるやもしれません。」

「あの扉は地下施設につながっているから、私たちが来た道を逆にたどれば合同捜索隊に見つからずに外に出れるはずよ。」

「では、私は美姫様のもとに残り、他の者たちはそのようにさせます。」

「和香も一緒に行くのよ。」

「美姫様をお守りするのが私の職務なのですが、私も行かなければならない理由は何でしょうか?」

「だって和香がここにいたら、龍野家の情報収集部隊が先にここに来たのが露見するじゃない。」

「・・・美姫様の言われるとおりです。残念ですが、私も情報収集部隊と一緒に行くことにします。」


 心底嫌そうな顔をしながら和香は頷いた。


「よし!美姫様の指示通り、我々はあの扉から撤退する!」

「「了解!」」


 情報収集部隊の部隊長が隊員に号令をかけ、


「地下道に罠があるので気をつけて下さい。それから、地下施設に倒れている反魔連の兵士もいるから、一緒に連れ帰って下さい。」

「承知しました。」


 和香とともに六波羅たちと反魔連の工作員を連れて地下に降りて行った。

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