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「もう止めにしませんか?」
「ふんっ、それはできない相談ね。あなたたちの足止めすらできないのなら、あたしが先生の側にいる価値すらない、ってことになってしまうじゃない。」
「その考えは間違ってます!」
「あなたたち魔法使いは、あたしたちの祖先を使い捨てにしただけで、あたしたちを救ってはくれなかったけど、あなたは違うというの?」
「それは、、、」
「僕があなたを救って見せます。」
「あら、どうやって?」
「こうして、です。」
急加速して亜門に接近し、打撃を繰り出す。
「結局あたしを倒す、ってことかい!」
難なく避けられるが、
(ザグレド!)
(分かってる。)
ザグレドが飛び出して精神エネルギーを奪い、女性兵士を気を失わせた。
(ほう。樹も考えたのう。)
(提案したのはオレですけど。)
(ザグレドも偶には役に立つのう。褒めてつかわすのじゃ。)
(ありがたき幸せ!エレナ様からお褒めの言葉を頂けるとは、至極の喜びです。 先の第9次聖魔大戦においてもエレナ様は劣勢に陥ったオレたちを鼓舞しながら――――)
感極まったようにザグレドはエレナ様を褒め称える。
(ザグレドは放っておくとして、樹はどのように奴を救うつもりじゃ?もしや、精神エネルギーを奪うだけで救ったとか言うのではないじゃろう?)
(ここからは美姫にお願いするしかないのですが、薬で身体強化した人を治療する施設を龍野家の援助で作ってもらえないかと。そして、その施設で貧民窟の人を雇ってもらえないかな、と考えました。)
(全然『僕が』ではないのじゃ。)
(僕が美姫にお願いして、と言うのではダメですか?)
(ダメじゃ。)
(ええぇぇー。)
(エレナ様はああ言っているけど、私は樹に賛成だから亜紀様に話をしてみるね。)
(これは魔法使い全体の問題ですので、龍野家だけでなく六条家や桐生家にも参加してもらって施設を運営するべきですな。)
(そうですね。そうしてもらえるよう話してみます。それと、西園寺六波羅を捕まえて治療薬を作ってもらいましょう。)
(いい案ですな。ワシが生きていたころには貧民窟はなかったとはいえ、日雇い労働者の将来を考えることができなかった責任はありますので、協力は惜しみませんな。)
(グレンさん、ありがとうございます。)
(そのためには、まずはあの壁をなんとかせんといかんのう。)
(エレナ様。それについては、私に案があります。)
(美姫、どうするのじゃ?)
(徹甲魔導弾を使います。魔導盾で形成した弾頭の回転力を上げることでドリルのように壁を抉っていけるはずです。弾頭の形成は樹に行ってもらって、それを私が撃ち抜けば、強力な徹甲魔導弾を撃つことができると思います。)
(ほう、良く考えたのう。じゃが、樹に弾頭の回転力を上げるような形状を魔導盾の内側に形成するという複雑なことができるかのう?)
(否定。そんな命令規則を魔法の腕輪にいれていないので無理です。)
(樹君、そこはワシがザグレドの力をかりて補助をするので大丈夫ですな。)
(了解。お願いします。)
(それと、美姫さん。ザグレドが奪った精神エネルギーがありますので、それを使って思いっきり魔導弾を撃つと良いですな。)
(グレンさん、ありがとうございます。)
(美姫さん、感謝するのはオレにでは?)
(ザグレドさんも、ありがとう。)
(へへへ。どういたしまして。)
美姫に精神エネルギーを渡した後、準備を始める。
(樹、いくよ。)
(了解。)
グレンさんの補助を受けて回転力を上げられるように弾頭を形成する。
(撃ちます!)
美姫が魔導盾で形成した弾頭に向かって魔導弾を撃つと、
バシュッー!
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
徹甲魔導弾が壁を削っていく。
(おぉ!一回では削り切れなかったけど、成功だ。)
(さしずめドリル型徹甲魔導弾、というところですな。)
(これからいろいろ派生が増えていきそうな名前ですね。)
(グレンさんは弾頭の外側の形状も変えていましたよね?)
(美姫さん、よく分かりましたな。より壁を削り易くするために溝を掘っておいたのですな。)
(さすがグレンじゃのう。)
(お褒め頂き、ありがとうございますな。)
(さぁ、この勢いだとすぐに穴が開くと思うから、どんどん行きましょう。)
(了解。)
再度、2人で協力してドリル型徹甲魔導弾を撃つ。
バシュッー!
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ボコッ!
徹甲魔導弾が壁を削りきり、向こう側まで巨大な穴が開く。
(2回で削り切っちゃったね。。。)
(いいことだと思うけど、美姫が残念そうに見えるのは何故?)
(ドリル型徹甲魔導弾を撃つのはちょっと楽しかったから、もう少し撃ってみたかった。)
(成程。自分の考えた魔法が上手くいったんだから、美姫の気持ちも分からなくはない。)
(でしょ。)




